無茶を言うものだと思ったが、この念を解除しなければクロロはいつまでたっても念が使えないままだ。除念師をつれてくるにも、おそらく並大抵の除念師では話にならないだろう。
クロロの念はこの町にかかっている念ともまた異なるものであるという。クロロにかかっているのは墓を守るための、独立した念だ。その内容は絶対服従で、今は王の処分を待っている状態だ。今、示される王というのはこの仮初めの町の中に作りあげられた王であるから、クロロの除念を行うためにも、死者の念によって動かされているこの町を元の廃墟に戻さなければならない。
フィンクスとフェイタンは古ぼけた本を盗みにきたと思ったら、何が何やらわからないままに死ぬ運命だ、などとふざけたこと言われてだいぶ不機嫌ではある。だが、クロロはフィンクスとフェイタンに一切の口答えを許さなかった。
ジンに何事か怒鳴ろうと口を開いたフィンクスが、クロロのひどく暗い、団長であるときの彼の底知れない瞳を見てぴたりと口をつぐんだ。ジンもイシスもクロロのまとう空気が変わったのを感じ取って、何も言わなくなる。強大な捕食者の前で息を潜める獲物のように、黙りこくって、この場で唯一絶対の権力を持つクロロの言葉を待つ。下手にジンやイシスが幻影旅団の他のメンバーに協力を仰ぐよりは、クロロの一言の方がよっぽど効果があった。


「最終目的を死者の書とするならば、ここでそいつから目を離すのは得策ではない」


クロロはそう言ってシャルナークに腕を捕まれたままのイシスを見やる。シャルナークが一瞬手に力を入れて、イシスはわざとらしい悲鳴を上げた。


「それにこの二人ならイウ・ス=イルスの死者の書の在処を知っているからな。シャルとウボォーはそいつに従って死者の書を見つけ出せ。オレは除念をしない限りはここを出られない。フィンクスとフェイタンはもうしばらくは黙って状況に従え。この二人が途中で殺される可能性は?」


クロロに話をふられて、ジンは少し驚いた様子だったが、すぐに首を横に振った。


「ないな。下手なことをしない限り殺されないはずだ」

「わかったな」


クロロの口調は至って普通のものだったが、フィンクスとフェイタンは少々不満げな表情をしながらも反抗する様子は見えなかった。特にフェイタンはジンとイシスの存在が不愉快なようだが、クロロの言葉を疑うつもりはまるきりないようだった。


「・・・これで話がまとまったのかな?」


シャルナークはそういいながらも相変わらずイシスの手を離すことはしなかった。左腕を後ろにひねりあげられて、しかも身長差のせいでイシの肩はだいぶ辛そうだった。しかし誰もそのことに関してフォローを入れないためついにイシスが声を上げる。


「ちょっとシャルくん!!いい加減に手を離してくれないかな!!僕の肩がもげるよ!!」

「下手な動きしたら肩だけじゃすまないよ」

「・・・・君って可愛い顔してるくせにえげつな__痛い痛い痛い!!!ごめんなさい!!腕もげそう!!」


イシスは先ほどよりもトーンの高い悲鳴をあげる。一方のシャルナークはまるで笑顔で、表情だけみれば半ば拷問に近いことをしているなどと誰も思いもしないだろう。
ジンは一通り話も終わったし、ということでイシスに興味がなくなったのか、それともなかなか実体のわからない幻影旅団の団長がいるということに興味を引かれたのか、積極的にクロロに話かけている。その大半をクロロは無視しているものの、一部死者の書や古文書に関する話題には興味を引かれ一言二言と返事を返していた。
外ではまた衛兵が何か動き回っていた。おそらくいきなりいなくなったフィンクスとフェイタンを探し回っているのだろう。


「フィンクスとフェイタンももう行きなよ。こっちはオレとウボォーとこいつでなんとかするから」


シャルナークの言葉にフィンクスとフェイタンは相変わらず不満そうだったものの特に何も言わずに出ていった。


イシス後は任せたぜ」

「ねぇねぇジンさんだけここで処刑してもらうってのはどうかな?」


イシスの言葉は一切合財無視された。

2014/03/01

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