物語分岐点
「シャァァァンプー!!!!!!」
怒号、怒声、涙声。色んなものが混じったその声にゾロは一瞬振り返った。そういえば途中から
ミズキがどこかへ消えたがそれと関係があるのだろうか。
目の前の素人剣士を軽くあしらうと、ゾロは再び梯子を駆け上る。
麦わらの一味は基本的に船長の命令に従って動くような海賊団ではない。各自がそれぞれ必要と思う行動を勝手にとるわけで、このときのゾロと
ミズキは勿論、誰もいなくなった部屋でむくりと体を起こした波もまたそうだった。
サンジとウソップ、それからルフィが気持ちよさそうに眠る部屋を後にして、ナミはいつも通り金品応酬のため適当に部屋を開けて回る。だがさして金になりそうなものを見るところ、やはり賞金稼ぎによってあれだけの人数をまかなっているのだろう。
「まーったく、嫌になっちゃうわね」
電気もつけずに机の鍵穴を見つけロックを解除するまでわずか数秒。さすが元泥棒だけあって手際がいい。ナミは適当に引っ張り出した書類を未練もなく床に放って部屋を出る。
外は月が明るかった。遠くで恐らくはゾロが戦っていると思われる、激しい戦闘の音が聞こえてくる。いつもならそんなところには近づかないが、今日に限って言うと彼女はその中に金の臭いをかぎつけていた。
屋根伝いに密やかに、ナミはゾロの居ると思われる方向に走った。その最中、紫の髪をなびかせた女とすれ違ったが、あまりに一瞬であったためごく自然にナミの視界を通り過ぎていった。そして数秒後、何かに気付いたようにナミが後ろを振り返るがそこには誰も居ない。さっきまで遠くで聞こえていた
ミズキの怒鳴り声が少し近くなった気がした。
一方、その先頭の渦中にいたゾロは、突然の目の前で繰り広げられる会話に全く頭がついていかなかった。全員がバロックワークスの賞金稼ぎで、全て切ってしまいだ、と思っていたのだから仕方もあるまい。そのバロックワークスに王女がいて、しかもその護衛隊長と名乗る男に救援を求められる羽目になるとは思いもしないだろう。
「もっぺん斬るぞ」
呆れたように言うゾロに対し、イガラッパもまた引き下がらない。必死で体を持ち上げしっかりとゾロの足を掴んで、枯れた喉で叫び続ける。
「が、がならずや莫大な恩賞を!!どう゛かお願い申し上げる・・・・!!」
その必死さにはただならぬものを感じるが、ゾロとてそこまでのお人よしではなかった。溜息を吐く。だが捨てる神あれば拾う神がいる。イガラッパのその言葉に反応したのは勿論ナミで、彼女は自身満々に「任せなさい」と言ったのだった。
「ど・・・・こだッ・・・・!!!」
砂漠地方の家というのはおおよそどこも白く似た様な形をしていて、初見では見分けがつきにくい。身軽なシャンプーを見失った
ミズキは先ほどから何度も同じ場所を巡っている気がしてならなかった。ゾロほどの方向音痴ではないから、一応なにやら激しい音が聞こえる方に進んではいるのだが、通り道がないたびに方向を変えているからなかなかたどり着けない。
「ええい!」
ミズキは長柄を壁に立てかけるとそれを足場に一気に屋根まで飛び上がった。勿論、たてかけた長柄を飛び上がる瞬間に掴むのは忘れない。曲芸師がごとく見事な空中回転で屋根に飛び上がった
ミズキは、その直後、先ほどまで彼が居た場所をカルガモに乗った女が通過したのを見た。だがそれがシャンプーでないと判断した
ミズキはくるりと体の向きを変えたのである。もしかしたら、ここで
ミズキがアラバスタ王国王女ネフェルタリ・ビビを追っていたのなら、この先の冒険は少しだけ違う話になっていたかもしれない。
遠くに緑の頭とオレンジの頭を見つけて、
ミズキはとにもかくにも二人に合流しようと屋根を飛び移って移動した。シャンプーほど身軽とは言いがたいその体は、それなりに筋肉がついているから重い。だが、着地するための足の骨格もしっかりしているから、さほどの衝撃はなかった。
「ゾロ!!ナミ!!紫の髪の女見なかったか!?」
「
ミズキちょっと待ちなさい!今契約の最中!」
「は?契約ぅ?」
激しい剣幕で怒鳴られて思わず肩を落とした
ミズキは、ゾロを探したが彼はなにやらどこぞへ走って行ってしまったあとだった。
「もしも王女が・・・・・そうなったらあの王国は終りだ・・・・・!」
ミズキがナミとイガラッパに視線を戻せばなにやらやたら深刻な方向に話が進んでいるようだった。果たして自分が女に戻れなくなっている間に何があったのだろうと、
ミズキは首を傾げた。
2013/08/21
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