『おおっとぉ!!どういうことだぁ!?万年負け娘とまで称されたあの
ハルシャ=
エトナの快進撃!!一撃で倒すことはありませんが、確実にクリティカルヒットを稼いで前代未聞のスピードでTKO勝ちだぁぁぁ!!!』
解説に観客が熱狂する中、審判の一声で試合が終わる。ワァァァと大きな歓声がうるさかった。
『見事ッ!!わずか数日欠席の後改めて登録しなおした
ハルシャ選手、以前とはまるで別人のようです!!ゴン選手、キルア選手に負けず劣らずのスピードで100階に到達だぁぁぁ!!!』
ばふん、とベッドの上にうつ伏せで倒れこむと、柔らかなベッドはギシ、と少しだけ軋み
ハルシャの体を受け止めた。
「あー・・・・気分いー」
ふわふわの布団に頬ずりをして
ハルシャは仰向けに寝転び天井を見上げる。灯りがついていないせいで薄暗い部屋の中、
ハルシャの耳にはまだ騒がしい観客の声が残っている気がした。ラジオを点けるとどこかのクラシック音楽番組がやっていて、それに耳を傾けるうちにようやっと頭の中が静かになってくる。こんなに騒がしい中で戦う経験はざらにあるわけではない。地位も名誉も何も得られないような、唯一生きるか死ぬかという二択のみを迫られる中で戦ってきた
ハルシャからすれば天空闘技場は随分と不思議なところだ。
(さーて、とりあえずこの後どうしようかなー・・・・200階ぐらいまでは一度行ってみてもいっか・・・・・・)
ハルシャの旅など当てもない。行き当たりばったりでサソリを探すしかないのだから、多分一度離れたらもう二度と来ないだろう天空闘技場の思い出に200階まで昇っておくのはいい思い出かもしれない。そうと決めると
ハルシャは疲れた体を休めるためにさっさとシャワーに入って、次の日のために適当に用意した服をベッドの上に放り投げてそのまま布団にもぐりこんだ。
そしてそれから三日後。
食事のため部屋を出たゴンとキルアの二人が200階の廊下を歩いていると、いつもあまり動かないエレベーターがチン、と200階に到着したことを告げる。
「誰か来たんだ、珍しいね」
「来たっつっても念を覚えてなきゃ、洗礼受けて勝負もできねぇじゃん。普通のヤツはオレらみたいに念を教えてくれる人もいないんだからさ。行こうぜ、ゴン」
「あらあら、じゃその洗礼とやらをゴンとキルアがやってくれればいいんじゃない?」
「
ハルシャ!!」と分かりやすく嬉しそうな声を上げたゴンと、その声にばっと振り向いたキルアはいつの間にかすぐそばにいた
ハルシャに度肝を抜かした。
「さっきのエレベーターに乗ってたんじゃなかったの?」
「乗ってたわよ?でもこれくらいの距離気付かれないように移動するぐらい私だってできるわけだし」
立てた人差し指をチッチッチッと左右に動かした
ハルシャはいたずらっぽく笑ってキルアを見下ろした。かなり身長の低い
ハルシャだが、それでも齢の差ゆえにまだ辛うじてキルアよりも高いところに視線がある。見下ろすとキルアは至極不服そうな目でこちらを見上げたが、それがなんだか面白かった。
ぺんぺんとシルバと同じ銀色の頭を撫でる。そしてすっと目を細めて長い廊下のはるか向こうの曲がり角を見つめると、何かがごそごそとうごめいてすっと姿を消した。
「あっ!!あいつら!また新しく入って来たやつ狙ってたな!!」
「何それ」
「なんだ、
ハルシャそのこと知ってたんじゃねーのかよ」
キルアの言葉に眉を寄せた
ハルシャはキルアに聞き返す。ゴンとキルアの交互の解説は少々わかりにくかったが、つまるところ彼らは200階に上がってきたばかりの新人つぶし、ということで有名な連中らしい。念の洗礼というヤツも大半の新人は彼らに受けることになるのだろう。だが、彼らもさすがに200階に到達するだけあって、それなりに実力を測ることはできるようだ。
ハルシャの纏う雰囲気からヒソカと同じものを感じたのかもしれない、その後彼らは
ハルシャの前に決して姿を現そうとはしなかった。
「洗礼ねぇ・・・・まっ、洗礼なんてものは「
ハルシャなら返り討ちだろう♣」・・・・後ろに立たないでもらえる?」
意気揚々と言葉を続けた
ハルシャは、突如割り込んできたヒソカの存在に一瞬にして表情を暗くした。「そこまで露骨だとボクでも傷つくよ♥」というヒソカに対し、ゴンが純粋な瞳のまま「えっヒソカでも傷つくんだ!?」とどこか見当はずれの様な一言を発するものだから、陰鬱な雰囲気が一挙に消し飛んでしまった。いつも飄々としているヒソカが珍しく少しだけ目を見開いて、
ハルシャもまたゴンの台詞に噴出す。
「してやられたわね」
にやにやと楽しそうな
ハルシャは、ヒソカのほうに振り返って、バン、と一枚の紙切れを突き出した。体に叩きつけられたそれをヒソカは地面に落ちる前に拾い上げる。
「一戦やりましょう?」
ハルシャの口元が緩やかに弧を描く。同時にヒソカの目が細められて、二人の向き合う空間が一瞬にして戦場となったような印象を受ける。思わず後ずさったキルアとゴンは背中が壁にぶつかってそれ以上下がれないことに気付いた瞬間心臓を握られた思いだった。
(・・・ッまだ本気じゃねぇ・・・・!)
だから大丈夫だと、何とか言い聞かせているうちに、ヒソカは
ハルシャに対し何も言わずその用紙を持って姿を消し、
ハルシャもヒソカの気配が断たれると同時にふっと息を吐く。キルアとゴンの緊張が和らぎ、その瞬間に止まっていた時間が流れ出したようだった。
「やっぱあれねー・・・・ヒソカのこと嫌いでもないけど気色悪い」
「・・・・それだけで済ませる
ハルシャがわっかんねー・・・・・」
キルアは尊敬しているのか呆れているのかわからない口調でそう言った。
2013/02/22
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