「おっと忘れていた。ヒソカの対戦を見る前にまずゴン君とキルア君は纏を行ってみてもらえますか?久々ですが、きっと大丈夫」
二人はウイングの言葉に頷いてすっと目を閉じた。部屋に気が充満するのがわかる。
ハルシャはハンター試験の時とは打って変わった様子の二人に、随分と成長したなぁと関心した。
(・・・イタチと同じ・・・・でもイタチより綺麗なのはやっぱ最初に精孔を開いた方法の違いかな・・・。)
ハルシャはゴンとキルアもまたイタチと同じように外法によって精孔を開いたことを知らなかったが、それでも
ハルシャの見方は間違ってはない。イタチは才能を持ちながらもなかなか纏が安定しなかったのは、一重にヒソカの悪意あるオーラのせいで精孔の開きにバラつきがあったからだ。それでも徐々に自分自身が発するオーラによってイタチの精孔も開きつつある。だがやはり最初に
ハルシャではなくウイングと会っていれば・・・・恐らく彼はすでに発までマスターできていただろう。とはいえそれもすでに時間の問題である。
「
ハルシャがさ」
考えにふけっていた
ハルシャは突然キルアに話しかけられてびくりと肩を揺らし顔を上げる。キルアは纏の状態のままの己の体を指差して「これだろ」と言った。
「ハンター試験で言ってた念、ってこれのことだったんだろ。天空闘技場に来てよーやくわかった。兄貴が来たせいですっかり
ハルシャに教えてもらうの忘れてたけどさ。またあのゲームやろうぜ」
「そういやそんな約束もしたね」
でも私教えるの下手だから、と
ハルシャは手をひらひらと振る。
「で、そろそろ見ようよ、ヒソカ戦。ゴンも見たいんでしょ?」
「うん!!」
ハルシャに言われ、ゴンの瞳に急かされるようにして、ウイングはビデオデッキの上に積んであったいくつかのビデオの中から、"ヒソカVSカストロ"と書かれた一本を取り出した。
「纏より先の念の基礎、そして念を使って戦うとはどういうことか、これを見ながら説明しよう」
じー・・・・
再生ボタンを押すと同時に回り始めたテープと、そして始まった映像にその場にいた全員が釘付けになる。
ハルシャも床に座って画面をじっと見つめているゴン、キルア、ズシの後ろから頬杖をついたままじっとヒソカの動きを見つめていた。
(上手い)
なるほどなるほど、カストロも確かに天空闘技場200階クラスの闘士としてよく戦ってはいるが、所詮ヒソカの敵ではない。そもそも天空闘技場はあくまで"闘技"なのだ。生死をかけた戦いの中に身をおかず、常に何かに守られているような状況の中で戦う者たちがヒソカに敵う術があるはずもない。
(でも・・・絶は下手、隠も人並み。ってことはそこが狙い目、か)
映像を食い入るように見つめながらも
ハルシャはいずれ訪れるだろう対ヒソカ戦に備えて、頭の中では次から次へと作戦が練られていった。そもそも中・近距離戦に持ち込まれないような環境さえ整っていればイルミだろうとヒソカだろうと無傷で勝つ自信はある。だが天空闘技場をはじめとする誰かの審査が必要な試合となるとどうしたって姿を隠して戦うことができなくなるのだ。それは遠距離戦を最も得意とする傀儡師からすれば圧倒的な不利益を被る。そもそもの設定からして、ハンデを背負っているようなものなのだから。とはいえ実戦でも確実に距離を取って戦うとなれば奇襲をするほかなくなってくる。常に奇襲ができるとも限らず、むしろヒソカと
ハルシャの場合奇襲をかけるのはヒソカの方だろう。そういった意味でヒソカと戦う方法を模索することは
ハルシャにとって非常に重要だった。
(伸縮自在の愛【バンジーガム】の使いどころが上手いし、錬も発も早い。下手したらイルミ以上・・・・)
頬に当てられた指はまるでリズムをとるようにとん、とん、とんと動く。この姿勢で考え事をする癖だ。
映像はいつの間にか止まっていたが、
ハルシャには頭の中でずっとヒソカとカストロが動き続けていた。二人のことを観客席から見る視線でも、カメラ目線で見る視線でもなく試合場の全てを俯瞰する一から、二人の動きが
ハルシャの頭の中で再生されるのだ。
「仕掛けは__・・・・」
ふと気付くとどうも思考が口から駄々漏れになっていたらしい。四人の視線が一斉にこちらを向いて、
ハルシャは照れ隠しをするようにぷっと横を向いて「そ、空が青いわね」と言った。別に青くなかった。
「なぁ
ハルシャ。
ハルシャもこの画面のヒソカの腕からオーラが出てんの見えんの?」
「え?だって結構最初から・・・・あ、うん、凝はこれから?」
キルアの疑問がまず何を言っているのかわからなかった
ハルシャは思わず首を傾げたが、そういえば纏を練習しているような段階なのだ。まだ凝が出来てなくてもおかしくないと思ってウイングに話をふると思った通り彼は首を縦に振る。
「ズシもまだ現段階ではもてる力の全てをオーラの集中、という一つのことに注いではじめてヒソカの隠すを見破れる程度ですが、これからさき修練を積めば
ハルシャさんのように自然体で凝を行い相手の行動を予測することができるようになるでしょう」
「特にヒソカの伸縮自在の愛【バンジーガム】に対して凝は有効よ。あいつのガムは貼り付けられると厄介だし」
ハルシャがウイングの説明を補足する。
「
ハルシャさんはヒソカと戦ったことがあるんですね。それでは・・・・
ハルシャさんから見てヒソカのこの試合はどうでしたか?」
「・・・・ヒソカって隠とか絶とか人並み・・・・ってのが感想」
「人並み・・・っておい・・・」
「オレたちなんも見えなかったけどね」
ハルシャの言葉に凝が使えなきゃしょうがないわよ、と軽くフォローを入れてからウイングにリモコンを受け取る。そしてキュるキュるとテープを巻き戻し、いくつかの地点で「ここ」とヒソカのオーラを示していく。
「今あげたところね。あそこで若干隠で隠し切れないオーラが漏れてすっごくわかりやすくなってる。私だったらまずこんな下手糞な誘導にひっかからないし、そういう点でカストロはアウト。凝もできないような戦い方をしてちゃ話にならない」
発は?と聞くとウイングはこちらも首を横に振る。
「そっか、じゃこの辺の話はまたいつかね。でも覚えときなさい。私が言う"人並み"は並の念の使い手じゃかなわないって意味だから。イルミレベルの念能力者と戦うに当たって今のヒソカの弱点が効いてくるのよ」
つまりゴンとキルアは今の、
ハルシャの言うヒソカの弱点など気にせずにとにかく修行に励め、ということなのだろう。イルミの実力を身をもって知っているキルアは神妙な顔つきで頷く。ゴンもまた、あの何も感情を映し出さない瞳を思い出したのが、ゾクリとかすかに体を震わせた。
「いずれ凝ができるようになったら私のところにおいでよ、そしたら・・・・本当の隠を見せてあげる」
ハルシャはペロリと舌を出し、おどけたような表情をすると椅子を蹴って立ち上がる。
「ヒソカのビデオありがと。それじゃゴンとキルアはまたいずれね」
2013/02/21
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