「見つけた」
若干息を弾ませて、
ハルシャがそういうと黒い髪の青年はくるりとこちらを振り向いて、少しの間
ハルシャのことをじっと見つめた。
「・・・・・今日会った・・・・」
「うん、その辺はいいや。私さっきのあなたの試合見てたの。それでちょっと話がしたくてね」
だから付き合ってよ、と
ハルシャは言うとさっさと彼の前を歩いて天空闘技場を出て行ってしまう。まだここへ来たばかりのイタチは勿論天空闘技場内に部屋をもっていなかったからもとよりこれから外の宿へ戻るつもりだったのだが、いきなり現れた女に困惑を隠せない様子である。足を止めてぽかんとその場に立ち竦んでいたが、不意に足が勝手に動いて
ハルシャについていかざる得ない状況にされてしまう。
「待て!」
「じゃ、来てくれる?」
小首を傾げて言うと、イタチはひどく不機嫌そうに「ふざけるな」と言った。当然の反応だ。なぜ見ず知らずの人間にいきなり話がしたいといわれついていかないといけないのか。
ハルシャはイタチの返答にそれならいいけど、と言いながら結局念糸で無理矢理操作して彼を自分の泊まっているホテルに連れてきてしまった。
「入っていいよ」ともう中に連れ込んでいるにも関わらず言う
ハルシャにイタチの機嫌はさらに降下する。何を考えているんだ、という表情をしては見るのだが、意思に反して体は全く動かなかった。
イタチの体は勝手に近くにあった椅子を引いて腰を下ろす。
ハルシャがちょうどイタチと向かい合わせの位置にある窓際に立つと、ガラスを透過して部屋に差し込む夕日がちょうどバックライトのように
ハルシャを照らし出した。彼女の顔に落ちる影の陰影がより一層はっきりとして、まるで表情がないかのように見える。
「さて、と。どっから話そうかな」
イタチって言ったっけ?ねぇ
・・・・・・
さっきの試合客席から見てた。動きがすごくよかった。あ、私は別に戦えないけど人体見るの得意なんだ。無駄がないよね。
・・・・・・オレに何の用だ
そうそう本題入るわ。私はあなたにして欲しいことがあって、そしてあなたはやるべきことがある。多分まだわからないでしょうけど、順を追って説明する。さっきの試合を見てたんだけど、イタチって目をよく傷めたりとか・・・・うーん時々視力がなくなったりとかしてない?・・・・・・あ、図星?だと思うよ。階段から落ちたときはあんまり気付かなかったけど、"凝"をしてみればあなたの目にオーラが集まってるのがはっきりわかる。
ギョウ?オーラ?
オーラとは誰もが持っている生命エネルギー、それを操る能力を「念」って言うの。今さ、全然動けないでしょ。これ私の念。
念・・・・・
大丈夫、もしイタチを殺したかったらもっと早く殺せてるから。あ、ごめん余計警戒した?でも念を使えるのと使えないのじゃ本当にそれぐらい差があるから。イタチは本当に一部念を使えてる、でもそれを仕えこなせてないのよね。逆に中途半端な念をつかっているせいで、体に負担がかかっちゃってるわけ。いつも戦うときって目に何か集中してるイメージない?そんで、目に集中した後ってすごく疲れて目の調子が悪くなると思うんだけど・・・・
・・・・貴様の言う通りだ
貴様?あ、私
ハルシャ。
ハルシャ=
エトナね。で話戻すけど、イタチのその状態はオーラが体中に巡るのに重要な精孔が半ば開いて半ば閉じてる状態なの。これをきちんと制御しなければいずれ視力がなくなるわよ、あなた。
・・・なぜそんなことが言い切れる
オーラとは生命エネルギー。体中に本来溢れているものだけど、そのオーラが目の精孔に集中すれば、目の精孔はいずれ使い物にならなくなる。生命エネルギーが途絶えた目はいずれ生気を失って光を失う。目だけに限った話じゃない。今のままじゃオーラを垂れ流しにし続けて死ぬ事だってある。
・・・・・なら貴様はオレにどうしろと言いたい
あ、そういえば最終的にはその話しないといけないのよね。えーっと私はあなたに念の使い方とか基本を教えてあげるから、代わりに_____
「あなたの近接戦闘の技術を教えてよ」
気付けば夕日は山の陰に隠れて、淡い残光を残すばかりになっていた。部屋は暗く、窓の外からのぞく街の明かりにかすかに照らされてお互いのことを認識できる程度である。
ハルシャはそれに気付いて部屋の明かりをつけるために一旦入り口まで戻ると、スイッチを押す。
パッ、と天井の明かりが灯って部屋はすぐに明るくなった。
「さっきので大体話は通じた?」
ハルシャは再び窓際に戻りながら、しかし今度は窓枠に腰かけるのではなく傍にあったソファにボスンと座る。
今だ体を動かせないイタチは唯一動く口だけで「それなりに」とぶっきらぼうな返事をした。
「じゃ、返事は?」
ハルシャが、くい、と空をなぞるように指を動かした途端イタチの体は急に彼自身のものとなって、思わず力が入っていたせいでイタチは椅子から転げ落ちる。どこに力を入れていたのだろうと思いながらぶつけた頭を摩って改めて立ち上がった。
「今の貴様の話を信用する根拠がない。オレがその話を受ける利点はなんだ」
イタチの言葉は淡々としていたが、イルミの無感情なそれとはどこか違っていた。理を求めるその言葉に
ハルシャはにっこり笑って言う。
「このまま帰ったら、次はイタチはヒソカに殺されるかも♥」
「ヒソ・・・・?・・・・・!」
イタチはその一瞬のうちに今日会ったであろうピエロ姿の男を思い出したに違いない。それほどまで恐ろしい経験だったのか、というのは愚問だ。
ハルシャとてあの男とそう何度も本気で戦いたいとは思わないのだから。
「どうする?もし私が念を教えてあなたが近接戦闘の技術を教えてくれるなら、もう目が痛まないようにもできるし、それに多分ヒソカにも十分応戦できるだけの実力は養える。一方、もし私の申し出を蹴るなら・・・・・天空闘技場ですら200階には行けない・・・・かな」
イタチは悔しそうに表情を歪めて、それからため息を一つ。
「・・・・わかった、貴様の話に応じよう」
2013/01/27
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