「教えてあげたいところだけど・・・・だめ」
キルアの言葉にしばらく悩みこんだ
ハルシャだったが、結局のところ今教えても付け焼刃の技にしかならず危険だ、という意識は変わらない。だめ、と言ったときのキルアのへこみ具合についつい甘やかしたくなったが、そこはぎゅっと気を引き締める。
「私が使ってるのはネンって能力だけど、これは中途半端な覚え方したら危ないの。だからハンター試験の最中は絶対教えられない」
ちょっとだけお姉さんぶった言い方をしてみたが柄でないな、と自分で思った。一人っこというよりもそもそも本当の親すらもわからないから、兄弟がいるという感覚がよくわからない。弟がいたらこんな感じなのかなぁと思いながら、
ハルシャはキルアの頭を撫でる。キルアが沈んだ表情を見せたのは一瞬のことで
ハルシャの言葉の裏の意味に気付くとぱっと顔を上げた。
「ハンター試験の最中は・・・ってことは試験終わったら教えてくれるんだ!」
「試験終わったらねー。もし覚えたければ私のところに来たら教えてあげる」
内緒話をするように人差し指を唇に当ててウインクするとキルアも同じように人差し指を唇に当てる。
「約束な!!」
簡単な約束を済ませてゴンを探しに行った
ハルシャとキルアはゲレタに毒矢によって動けなくされたゴンを見つける。
「ゴン!!」
即座に飛び出そうとしたキルアだったが、
ハルシャはその前に不穏な空気を感じて慌ててキルアを止めた。
〈待ってキルア!〉
〈なんでだよ!〉
ひそひそと小さな声でキルアを諌める
ハルシャに、キルアもつい声を潜めた。ここからゴンのところまでかなり距離があるのでゲレタにも気付かれることはないだろう。オレだったらゲレタの毒矢を浴びる前にあいつからプレートを取り返せると言うキルアの口を無理矢理塞ぐ。
〈静かに〉
ハルシャの剣幕にキルアは何かを感じたのかすっと気を静めてゴンの様子を伺った。キルアからすればゲレタに逃げられる前にゲレタを捕まえたいところなのだ、そわそわと落ち着かなげに体を動かす。
だがすでに島の何箇所かに張り巡らせた
ハルシャの念糸は、ゴンに近づいてくるもう一人の人物を感じていた。
キルアの動きがピタリと止まった。
血の臭いを感じたのだ。
〈
ハルシャ〉
〈ヒソカが来る〉
やがて二人が見守る中ヒソカはゲレタの首を持ってゴンに近づいた。キルアもそして
ハルシャも臨戦態勢に入り、ヒソカがゴンに少しでも手を出そうとしたら即座に攻撃するつもりだったが、ヒソカはあろうことか自身のプレートを彼に預けてそのまま姿を消した。
((・・・・・))
ヒソカが二人の視界から消えて、念糸への接触はないが、彼が完全に遠くに行ったという確証を得られない。円を広げればわかるだろうが、ヒソカほどの使い手であれば円により
ハルシャがいることを感付かれるだろう。それはごめんだ。できれば念糸だけで、と思いこの周囲の念糸の数を増やそうとしたとき。ふいに自分に接近する何かを感じ取って、
ハルシャは殺気を放ちながら銃をホルスターから抜いた。
「あっ!!!」
念弾はトランプにより弾かれ、もう一発を撃つ前に
ハルシャの首をヒソカの腕が捉える。そのまま地面に押し倒され、それを助けようとしたキルアの首筋には紙であるくせに異様に鋭利なトランプが押し当てられた。
つ、と一筋血が流れ落ちる。
「おや♣なんだ
ハルシャもいたんだ♥」
一人誰か見てるのは知ってたけど、と言いながらヒソカは酸欠になりかけた
ハルシャの首から手を外す。
「・・・ヒュッ・・・ごほっ、げほっ」
一気に肺に入り込んだ空気にむせながら
ハルシャは体を起こしたが、まだ激しく強い力でつかまれた首がずきずきと痛んでいる。ヒソカはすでにトランプを仕舞っていたが、重たい空気は十分に殺気を孕んでいる。キルアはその殺気と明確な力の差に完全に押し負けていたが、かといってこの場から逃げることもできなかった。
「てっきり99番だけかと思ってたけど♣君は本当に絶が上手くて嫌になるよ♥」
「ありがとう」
むしろ楽しんでいるようなヒソカの口調に、嫌味たっぷりの返事を返すとヒソカは楽しそうにクククッと笑う。逐一自分の行動が楽しまれているのは気に喰わないが、この場からの脱出が先決だ。接近戦となればヒソカ相手に戦うことすらできない。キルアを連れてどう逃げるかを必死で考えている間にも、余裕のヒソカはすっと
ハルシャに向かって手を伸ばし、そしてトランプを一枚彼女の目の前に差し出した。
「・・・・?」
「ボクの連絡先♥」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
「だって君、ボクの連絡先知らないだろう?だから」
あげる、と友達にプレゼントでも贈るような手軽さでヒソカは
ハルシャの左手を取ってその上に連絡先の刻まれたトランプを乗せる。
「・・・・てっきり戦わないといけないかと思ったんだけど」
「だってここで
ハルシャと戦ったってつまらないだろう♣99番のプレートを奪ってもいいけど、そうすると結局
ハルシャと戦うことになりそうだし」
一次試験の続きはまた今度♥、と肩を引かれ耳元で囁かれる。その瞬間全身が総毛だった気がしたが、ヒソカは本当にそのまま何もせずに去ってしまいある意味拍子抜けと言えば拍子抜けだった。
「・・・・キルア大丈夫?」
しばらく放心していたせいでキルアが怪我をしていたことを忘れていたが、さほど深くもないのか軽く傷を拭うとほとんど傷口は閉じている。「大、丈夫・・・・」と力なく言うキルアもヒソカと戦うことを覚悟していたのか、彼がいなくなった瞬間に随分と気が抜けた表情をした。
「ヒソカが気まぐれ起こしてよかったぁ・・・・さすがにあの距離だと一瞬で殺される自身があるわ・・・」
「気まぐれ・・・ってよりあいつ
ハルシャのことを相当気に入ってるみたいだったけど」
「すごく嫌な響きだわそれ」
ハルシャの大げさな身震いにキルアも緊張が解けたのかようやっと笑って、それから慌ててゴンのことを思い出し彼のもとへ駆け寄ったのだった。
2013/01/04
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