「でもあの細いオーラでよくこのサイズの人形を全て覆うことが出来るね。それほど流が上手いってことかな♦」

「・・・・・ああ・・・残念ながらそれはちょっと見当ハズレ」


ハルシャの指の動きに合わせて人形が片手を挙げる。人形の肌の質感はあまりに人のそれと酷似していて、ヒソカはそれがずっと気になっていた。所詮戦うだけの人形なら陶磁器のような白い肌でも構わないはずなのだ。


「これはね、元は生きた人なのよ」


ハルシャが人形の顎に手を当てて自分に引き寄せた。


「人傀儡・・・・これが父さんと私の作る人形の本当の名前。人が潜在的に持つオーラをその身に留めたまま人形に閉じ込めるの。そうすることで私たち傀儡師はその人形に留められたオーラに干渉するだけで人形を自在に動かせる。これだけの人形を自分のオーラで覆って動かすなんて、すぐに干からびちゃうわ」


ゴンやキルアと明るく話をしていたハルシャとはとても同一人物に見えないほど、その時のハルシャの目は狂気に満ち溢れていた。己で殺し己で人形に作り変えた傀儡に唇を近づけてそっとその頬に口付けをする。
その行動と話の内容の全てがヒソカを興奮させる。彼もまた瞳の奥に今にも全てを壊しそうな狂気を並々と湛えて、細い腕で傀儡と交わる女をじっと見つめた。


「父さんほどの使い手になると、相手のオーラに干渉し体を動かすだけじゃなくてその念能力まで使えるようになるの。便利でしょう?私は、さすがにそこまではできないわ。まだコントロールが下手なの」


再び煙が上がって傀儡が消える。大げさなこの演出は傀儡に気を取られているうちに傀儡師が身を隠すための物だという。


「ただ、小さなものだったらオーラで覆ってコントロールすることもあるわ。周の応用ね。例えば私の中身のない銃撃【エンプティバレット】は本来ただ念弾を放出するだけの能力だけど、これに実弾をいれてやると傀儡師の共演【マリオネットダンス】で操ってホーミングさせることが出来る。さっき使ったのはこれ」


元が放出系ではなく操作系の念能力者であるハルシャは、純粋な念弾だけでは敵を追跡する距離と反比例して念弾の威力が落ちてしまうのだ。
念糸そのものは放出系、そしてハルシャが念糸を繰り出し傀儡を操る距離はおよそ1kmと以前記述したが、念弾も1kmも敵を追いかけるとほとんどその威力がなくなってしまう。一方実弾であれば周で強化することにより威力を落とすことなくホーミングすることができた。特に純粋に敵を追い回すだけであれば1kmといわず際限ない追跡が可能だ。とはいえ其の場合敵が視界に入っていることが最低条件となるが。
なぜサソリやハルシャがイルミやシャルナークのように完全に距離を取れる針のような物体で相手を操作しないのかと言うと、念糸を使うほうがより精密な動きを再現できるからだ。特に生きた人間ではなくオーラを留めただけの死体を操るならば念糸の方がずっと扱いやすく細やかな筋肉の動き一つ一つまでが傀儡師の手の内となる。


「それじゃ最後に一つ♣ハルシャのその傀儡師の共演【マリオネットダンス】は生きた相手にも通用するのかい」

「・・・・・ヒソカ、ちょっと体の力を抜いてみて」

「?」


ハルシャが左手を挙げてヒソカを指差した。そしてくいっ、と指を左に曲げた途端ヒソカの頭も同じ方向を向く。


「♥」


今度はハルシャは右手を挙げた。すると同じようにヒソカの右手が上に上がる。


「結論から言えば可能。でも今、私の念糸が体のどこについているかなんとなくわかるでしょ?」

「ああ」

「操作系は対象に念を込める、その裏の意味は自分の念で対象の念を支配すること。だからたまに操作系の念能力者とぶつかっても操作されないような人がいるでしょ?あれは操作系の念能力の方が弱くて相手に干渉しきれないからよ。だから私の傀儡師の共演【マリオネットダンス】だって絶によって私のオーラである念糸と自分のオーラを切断すれば、マリオネットにはならない。つまり高等な念能力者にはあまり効果がないわ」


勿論、体の細部まで念糸をいきわたらせれば支配することも可能だけど、意識がある人間をコントロールするのは難しいのよね、とハルシャは続けた。
生きた人間を生きたまま操作することは非常に難しい。イルミの能力はかなり完成されているが、ハルシャが傀儡を操るときほどスムーズに操れるとは言いがたい。


「なるほど♣ハルシャの念能力は大方理解したよ。便利な能力だね」

「私のは父さんの模倣よ」


まだ完全に自分のものになりきっていない、というのが本人の談だが、ほとんど傀儡師として姿を現さず主に殺人鬼として名称の通っているサソリと比べどちらの能力が先なのかなど通常の人間にはわからない。ヒソカから見てもハルシャの傀儡師の共演【マリオネットダンス】は十分な出来だった。


「ボクの伸縮自在の愛【バンジーガム】はオーラにガムとゴムの性質の両方を持たせることが出来る。それは君も経験済みだと思うけど♥」


あれか、とハルシャは苦虫を噛み潰したような表情をした。凝のおかげで何かしらのオーラだということはわかったが、そのような変化系の念能力とは思っていもいなかった。


「基本的に戦闘に使うのはその伸縮自在の愛【バンジーガム】の性質とあとはトランプかな♣ハルシャの傀儡師の共演【マリオネットダンス】があればもう少しトランプの攻撃の幅が広がりそうだ」


にこりと笑ってハルシャに顔を近づけたヒソカだったが肩を押されて距離を取られる。接近されるのも肌に触れられるのも好きじゃないようで逐一反応が面白い、というのがヒソカの感想だがハルシャとしてはいい迷惑だ。
だが結局ヒソカはハルシャにもう一つの彼の念能力である薄っぺらな嘘【ドッキリテクスチャー】のことを説明しなかった。それが戦闘にあまり大きな影響を与えないというのも理由の一つだが、やはり今後のために隠しておきたいというのが本音だろう。一方のハルシャとて傀儡の操演における隠し武器、つまり傀儡の仕込みについてヒソカには黙っていたのでそこはお相子、というところだろう。
とにもかくにもこうしてある意味打ち解けた二人は次のトラップに向けて廊下を進んでいった。






2013/01/01

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