ほんの少しの衝撃と共に飛行船は完全に動きを止めてトリックタワーと呼ばれる高い高い塔の屋上(と言って差し支えないと思う)に乗客を下ろした。
まるでパズルのつくりのように前面に何か組み合わせたような模様があって歩いてみると場所によって音が違う。おや?とハルシャが首をかしげたとき、三次試験の試験官から試験内容の通達があった。


「それではこれより三次試験を開始します。三次試験合格要件は、皆様が立っているこのトリックタワーの天辺から72時間以内に生きて下まで降りてくること。以上です。それでは検討をお祈りします」


本人は試験官ではない、という試験官代理がそのまま飛行船に乗って行ってしまうと高い高い塔の上で残された受験生はざわめき立つ。何せその屋上はまさに何もないただっ広い空間で下りると言っても外壁を伝うしかほかに方法はない。だが、実際にそれをやろうとして人の頭がついた鳥のような何かに受験生の一人が食われてからは、誰も外壁を伝って下まで降りようなんてことは考えもしなかった。
(・・・・・あの人面鳥だったらマリオネットに出来るけど・・・多分下りろってこの建物の中にってことだろうし・・・・)
ハルシャはほんの少し目を背けた隙に受験生が消えていくのに気付いていたが、彼らが何処から消えているのかさっぱり検討が着かなかった。とりあえず柵のない端っこから落ちないようにして歩き回っていたのだが、特に何も見当たらない。
イルミにでも聞くか、と思ったが近くにキルアがいたので何か見つけたか話を聞こうとハルシャは一歩踏み出した、そのときだった。


「あ、キルァあああぁぁぁぁぁ!!!!」


悲鳴と共にハルシャは突然抜けた床に足を取られすっころびそして、傾いた床に呑みこまれ消えてしまった。名前を呼ばれ振り向いたらまさにその光景の一から十を見てしまったのだから否が応でもこの塔の仕組みを知る。


「ゴン、クラピカ、レオリオ」

「うん全部見た」

「なるほど・・・・」

「そういう仕組みってことか。ハルシャには悪いがようやくわかったぜ」















受身も碌に取れない、のは彼女が遠距離攻撃に長けており近距戦闘の訓練をほとんど受けていないからである。本気で戦闘となればそれなりに動くことも出来るがとにかくこういった不意打ちには弱い。はっきり言ってそれはハルシャにとっての相当な弱点だったが、彼女自身傀儡以外の術を教わったことがなかったので近接戦闘はどうやって訓練したらいいのかさっぱり検討がつかず今の今まで放置してきた課題だった。
ヒソカの件もあったがそろそろ真面目に取り組もうと思いながら、思い切り打ち付けた頭をさすり立ち上がるとそこは何もない空っぽの部屋だった。


「・・・・あり?」


部屋の隅に大きな石の塊があって、その上には対になった腕輪が置いてある。両方とも開いているからそれを嵌めろと言うことなのだろう。自分の腕に嵌めると右手のそれはあっさりと錠がかかり今度は押しても引いても取れなくなってしまったが、鎖で繋がったもう一つは逆に錠がかかるどころかきちんと腕に嵌ることはなかった。


「えっ、だってこういう時って普通腕に・・・・あ、もしかして足かも・・・そうすると動きにくいし、大体両手に嵌めてしかも鎖つきって囚人みたい」


ぶつぶつと考えるときに独り言を言うのはある種癖だ。サソリもそうだったのでそれが移ったのかもしれない。


『そうそう二つとも手に嵌めたら囚人みたいだから止めときなよ』

「ぎゃっ!!」

『・・・・・君、本当にハンターになりに来たの?』


突如スピーカーから流れてきた声にハルシャは悲鳴をあげる。明らかにお化けでも出たような反応をした受験生に声は呆れたが、だが試験官としての職務は忘れない。


『その手錠は二人で一つ。片方は君が嵌めてもう片方は別の人に嵌めてもらう。つまりお互いが足手まといになる仲間と一緒にこの塔の下まで降りてもらう。質問は?』

「誰もこの部屋にたどり着かなかったら?」

『失格。つまり相方が来ることもできないぐらいの足手まといってこと』


ブツン、とその言葉を最後にスピーカーは音を失ってそのあとハルシャがどんなに話しかけても答えは返ってこなかった。
ゴン、キルア、レオリオ、クラピカのグループは入り口を見つけてから相当な時間待たされたようだが、一方のハルシャは運が良かったの悪かったのかほとんど待つことなく自分の相方が下りてくることになった。


「・・・・・うーんやっぱり相方がたどり着かなくて失格のパターンが一番嬉しかったかも」

「そんなつれないこと言うなよ♠折角君が下りた部屋と同じ部屋に繋がる入り口を探してきたのに」


観察力といいストーカー性といいありとあらゆる意味で変態を貫くヒソカの登場にハルシャは頭が痛くなった。


「もうなんでもいいからこっち右手につけて」

「・・・・・・でもそれ普通考えて君が右手につけるならボクは左手につけたほうが動きやすくないかい」

「・・・・・・・」


ハルシャは自分の右手につけた腕輪とそこから鎖でぶら下がったそれを交互に見る。


「・・・・なるほど」

「君、天然?」


若干の間。その後しばらくして可愛いからなんでもいいや、と背筋に悪寒が走るような台詞を口にしたヒソカはハルシャの右手からぶら下がったもう片方の腕輪を左手に嵌める。


「これでボクと君は運命共同体ってわけだ♦」

「なんて嫌な響き」






2012/12/31