「一つ教えてよ、ハルシャハルシャの系統は・・・・操作系?」


余裕のないハルシャに対して、ヒソカはひどく楽しそうに、先ほどまでの殺気を隠しもせずに唐突にそんなことを問うた。
ハルシャはその意図が掴めず、若干疑問符を浮かべながらはぐらかすように言葉を並べる。


「どちらかと言うと放出系じゃない?」

「だけどマイペースだよね♥」

「何それ」


ハルシャはクックックッと笑うヒソカに銃口を向けたまま、そしてヒソカは特に構える様子もなくトランプを弄びながら言葉を続ける。 まだほとんど何もしていないというのに、ハルシャの背中をつ、と嫌な汗が流れて紫色のパーカーに染みをつくった。


「ボクの考えた性格によるオーラの系統分析。マイペースで理屈屋さんは操作系」

「じゃあなたはどうなのよ」


ヒソカに問い返しながら、当たってるかも、とその系統分析をサソリに当てはめて思ったのはハルシャ一人が知るところである。それが自身にも当てはまることかはちょっとわからないが、マイペースと言うのはあながち間違っていないとは思う。
傀儡師というのがそういう性格になりやすいのかわからないが、サソリもハルシャも他人にペースを乱されるのが好きじゃなかった。待つのも待たされるのも嫌い、というのはハルシャの養父であるサソリの言葉だったが、長年サソリに付き従っていたせいか、ハルシャも時間に煩い。だって他人に予定を崩されるのは癪じゃない?というのが彼女の言い分である。


「ボク?ボクは変化系。気まぐれで・・・・うそつき♦」


ハルシャは、ヒソカとはつい先ほど知り合ったばかりだが大いに賛同できる言葉である。ハルシャのそんな思いが顔に出たのか、ヒソカはまた笑って「君、分かりやすいね」と言った。
ヒソカはしばし笑っていたが、ふいにちらりと視線をハルシャの手元から、ヒソカの背後にある森まで向けて、指先で何かをなぞり支えるようにゆっくりと何もない(ように見える)空間を撫でた。


「確かに君の念弾は放出系のようだけど」


ヒソカはトランプを片手に持ったまま言葉を続ける。


「・・・・・でもそれなら試験官に貼り付けているこの細いオーラの糸が気になるな♥具現化系でもないだろう、これはオーラそのもので性質の変化はなさそうだ♠」


嫌になるぐらいの観察力だ。ハルシャは口元だけ笑って「あんた、うざい」と口にした。この念糸をこんなにも早く見破られたのは始めてだ。どのみち銃などヒソカには意味をなさないだろう、とハルシャは銃をゆっくりと下ろした。威嚇に、とも思ったが下手に銃を持っている方がこちらが怪我をしそうだ。


「凝が上手いじゃない。私の念糸は一応父さんにも認められたんだけど?」

「ありがと♣確かに普通ならボクだって見えないだろうけど、あいにくと君と会えたことで興奮してて感覚が研ぎ澄まされてるんだ♥」

「化け物め」


ぎりっと歯を食いしばってハルシャは右手を挙げる。そして左手をパーカーのポケットに手を突っ込むと巻物を取り出し目の前に広げた。
ボン、と煙を上げて出てきたのは五体の人間大の人形。ガラスの目玉は空虚を睨んでいるが、その造詣はあまりに生々しく、とても人工の素材で作り出された人形とは思えなかった。


「それが君の武器か♠」

「父さんから教えてもらった傀儡遊び、よ」


傀儡師の共演【マリオネットダンス】


ハルシャがほんの少し指を動かすだけで人形は一斉にヒソカに飛び掛った。一瞬、彼女の身体が一体の傀儡に隠れたかと思うとすでに先ほどまでの場所に彼女はいない。気配のほんのひとかけらも感じさせないほどの絶、それは攻撃に対し無防備になると思われがちだが、一寸も反撃の隙を与えない傀儡の動きでは、まず傀儡師に攻撃をする余裕もない。絶の一方で指先だけには圧倒的な量のオーラが集中し、放出され傀儡の一体一体に繋がっている。念糸は隠により巧妙に隠され、先ほども言っていたがヒソカが今のように興奮してさえいなければ誰にも見つけることは不可能だろう。並の使い手からみれば突如現れた人形が自分の意思を持って攻撃しているようにさえ見える見事な演舞である。
(本人は完全に姿を隠し遠距離からの攻撃、実際に近づいてくることは少ないけれ、ど!)
ヒソカの赤い髪が数本舞う。舌なめずりをして、一切遠慮のない蹴りを傀儡の首元に叩き込んだが、堅により防御され傀儡へのダメージはほとんどないようだ。
(流も見事♥)
まるで手品のようにトランプを取り出すとそれら全てを狙い違わず傀儡の関節めがけて放つ。人間の関節以上の稼動領域を持たせるため複雑な部品が組み合わされた傀儡の関節は、いくら堅で防御をしても耐え切れるものではない。特にヒソカほどの念能力者の周による強化がなされているトランプではなおさらだ。
複数の関節全てを全て同時に同程度の力の堅により防御をするのはハルシャでも難しかったようで、一体の傀儡の腕が地面に落ちた。それを踏み砕き、ヒソカは周囲を見回す。
(・・・・おや♥本当は今の攻撃で傀儡師の位置が割り出せると思ったんだけど、視界を傀儡と共有しているのかな♠)
ハルシャの念能力傀儡師の共演【マリオネットダンス】はその名の通り、傀儡と視界を共有することで傀儡そのものを傀儡師に変える。傀儡師と傀儡を繋ぐ細い念糸は視神経の役割もし傀儡の見えるものをそのまま傀儡師に伝えるのだ。ゆえに、傀儡師はその居場所を割り出されることなく遠距離から攻撃をすることができる。その距離は傀儡師の能力にもよるが、ハルシャの場合1km程度であれば十分、サソリの傀儡を操れる範囲は距離にして数十kmにも及ぶ。


「本当に、君はボクを興奮させてくれる・・・!」


その後の攻防は一見五分五分だったが、時間が立つにつれ徐々にヒソカが傀儡を押し始めた。ハルシャの傀儡師の共演【マリオネットダンス】は本来サソリの念能力である黒子の操り人形【パペットマペット】の名前を変えただけである。(それは養父であり師でもあるサソリへの尊敬の念と言える)本来の使い手は操作系念能力者の中では五本の指に入るとも言われるサソリであり、ハルシャの念としてはまだ十分に彼女自身の物になっていないのかもしれない。それでもその念の使い方はヒソカを一瞬とはいえ圧倒するものであったし、彼に十分な感動(と興奮)を与えるものだ。
ヒソカの拳がラスト二体のうちの一体の胴を貫いたとき彼の頬を弾が掠る。一筋赤い線が引かれヒソカはそれを手で拭った。


「・・・念弾・・・・じゃないな♥」


弾の出所はわからない。だが次も同じように狙ってくることを考え、ヒソカはあえて残り一体の傀儡の破壊に集中した。そしてそのラストの傀儡を破壊したとき、狙い通り弾丸がヒソカの急所を狙ったのだ。


伸縮自在の愛【バンジーガム】


ゴムの性質を持つそれで弾丸を捉えれば、弾丸にもまた傀儡についているのと同じ念糸がくっついているのがわかる。それは一瞬で消えてなくなった(つまり接続を断たれた)が、ヒソカがハルシャの場所を確認するには十分な時間があった。


「みーつけた♣」


驚異的な筋肉による跳躍力で一瞬のうちに間を詰めると、ハルシャの隠れていた木を蹴り倒す。絶を解いたハルシャの様子はもう手に取るようにわかるが、まだ距離が遠い。


中身のない銃撃【エンプティバレット】


ハルシャの、今度は実弾ではなく念弾がヒソカを狙ったが、直線的な攻撃ならさほど怖くはない。彼女ほどの念能力者なら凝も使えるだろうと読んで、ヒソカはあえて伸縮自在の愛【バンジーガム】を飛ばさずに己の体で距離を詰める。


「チッ!!」

「逃がさないよ♥」






2012/12/30
2013/01/25 加筆修正