走る音だけが響く洞窟の中で誰一人としてハルシャとヒソカに近づこうとするものはいなかった。と、なると距離が近くなるのは必然で、ハルシャはその度にきっとヒソカを睨みつけ威嚇していた。


「そんなに睨むなよ♥」

「近づかないでよ」

「いいじゃない♣」

「近づくな」


すっと差し伸べられた手よりも早く再び拳銃がヒソカの額に突きつけられてヒソカの手は動きを止めた。


「よくコントロールされた念弾だ」


まるで品定めするような、ねっとりと絡みつく視線にハルシャは背筋が凍るような恐怖とも少し違う何かを感じた。悪寒、と言うのが正しいか。純粋にこの男を受け入れることが気持ち悪い。


「走りながらでも照準はブレない。殺気で脅したところでやっぱりその照準ブレないね。これはさすがにボクでも手を出したら殺されちゃうかな?」


目を細めて笑うヒソカからハルシャはあえてスピードを上げることで距離を取った。ヒソカの笑い声が耳に残っている。本当は一番後ろを走ってヒソカに背中を向けたくないが、それよりもハルシャはゴンやクラピカ、レオリオと一緒にいることを選んだのだ。


ハルシャ、大丈夫か?」

「うん。あー気色悪い、何あの男!」

「ありゃあ下手に近づかない方が身の為だな」

「言われなくても近づかないっての!」


ハルシャが怒鳴るとレオリオが体力を消耗するぜ、と嗜める。それもそうね、と言うもののやはりヒソカに対する第一印象の悪さと、出鼻を挫かれた始まりに気分は急降下だ。


「ところで・・・・・ハルシャ、私はあなたとどこかであったことがある気がするのだが・・・・」

「あ、それ私も思ってた」


クラピカの唐突ともとれる言葉にハルシャは頷いた。クラピカがハルシャの面影に思い出を感じたように、ハルシャもまたクラピカの面影に懐かしいものを感じていたのだ。


「どっかで会ったって記憶は全然ないんだけどな」

「私もだ。だがなんとなく懐かしい気がしてしょうがない」

「前世って奴だったりして」


レオリオがぼそっと呟いた。
レオリオの体力はだいぶ限界に近づいてきているのだろう、あまり二人の会話には加わらなかったが時々おもしろい視点で話に割り込んでくる。


「前世か・・・あまり現実的な発想ではないが、ないと言える根拠もないな」


クラピカはレオリオの言葉を笑うわけでもバカにするわけでもなくただ冷静に考察する。


「だーかーらーお前はなんで逐一物事に根拠を求めるんだよ!!何となく会ったことがある、それって前世からの繋がりがあるんじゃね、ってロマンチックでいいじゃねぇかよ!」

「んー。でももっと最近のことだと思う・・・・ってヒソカが追いついてきた!私先行く!」

「おうよ。あいつに追いつかれるなよ」


後ろをちらりと見たハルシャは顔色を変えてさらに走るペースをあげた。レオリオよりかは体力はあるのだろう。クラピカが見る限り多少息が上がっているが、それ以外にリタイアになりそうな部分はどこにもない。先ほどのヒソカのトランプを撃ち落とした動作からも彼女がよく鍛えられていることは明白だった。


「なぁクラピカ」

「なんだレオリオ」

「・・・・・ハルシャってあいつさ・・・・」


レオリオは少しだけ言葉に迷ったように言い淀む。だがその間で大方言いたいことを理解したクラピカはそうだな、と先に彼の言葉を繋いだ。


「強い。私たちではまだ到底適わないほど強い。普段の様子はまるで弱そうに見えても隙がない。・・・・このハンター試験中彼女と戦うことがないことを願うよ」








2012/12/30