No.62
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2025年11月8日のサソリバースデーをお知らせします。
ハルシャとサソリとベネットとシャルナーク。
なお本日時点でまだ更新してないんですけど、シャルナークはサソリの殺されかけた時にベネットが自分の念をかけて「オレの命令に従えよ」ってしてるので、ベネットの小間使いしています。と言ってももう除念はとっくのとうにすんでいて、別段従う必要もないのですが、ハルシャとサソリと縁を持っているほうが都合がいいのでまぁ除念していることは隠して命令に従わざる得ないふりをしている感じ。たぶんベネットもそれは気づいている。
入口より入って、古びた棚を超えた先に形ばかりのレジと作業スペースがあった。ベネットが手作りしたという古いテーブルを囲んで座ると、ベネットとハルシャとサソリの三人はまるで家族のようであった。
外はもう暗くなっており、ぶら下がった唯一の明かりである裸電球が煌煌と部屋を照らし出していた。夏場は小さな羽虫が鬱陶しいが、この時期になるとその数もめっきりと減って過ごしやすくなる。
サソリは相変わらず何を思案しているのかわからない顔で、小さな道具をいじっていた。ハルシャとベネットはちょうど夕飯の時間で、ベネットの作った手製のパスタを食べながら、グダグダと取り立てて話題にするほどのことでもないことをああでもないこうでもないとしゃべっている。
ハルシャも今年で十七歳になる。サソリはいまだに黒煙病の対抗策を思いつくこともなく日々を浪費していた。その一方でハルシャは自身が病にかかっていることなどつゆ知らず、日々その技術を上げていく。それがまたサソリのとっては痛ましい事実だった。その技術が失われる日が遠くない日に迫っている。
サソリは黙々と手を動かす。ハルシャとベネットはくだを巻きながらパスタも残り二口というところになった。
ガシャン、とシャッターを誰かが外から開けようとしている。
店の入り口には大きなシャッターがあった。もはやロックする機構などないに等しくなった年代物だ。錆は年々広がっており、中をのぞくのも容易である。たいていは外からちょっと力を籠めれば空くのだが、この時右寄りを持つのがコツであった。
「あれ? くそっ……なんだよこれ」
「おいシャルナーク! 右側に手ェ差し込めって言ったろうが!」
「いい加減直せよこのポンコツ!」
そういいながら入ってきた金髪のさわやかな男は、このボロ家に似合わぬ身ぎれいな格好で片手にはこれまたやけにきれいな菓子屋の箱を持っている。
「あのさぁ、オレを便利屋扱いするのやめろって言っただろ! 大体なんだよケーキ買ってこいって」
「今日はサソリの誕生日だからな」
「そうなの?」
シャルナークはベネットの言葉にも顔を上げずに手元の歯車をいじっているサソリに顔を向けた。
「そうだ」
「本人全然興味なさそうだけど」
「この年で誕生日が一体なんだ」
「まぁそれはそうかも。そういうことならほら、オメデトウ」
あまり感情のこもらない声でシャルナークはお祝いを述べながら、机の上に買ってきたホールケーキを広げた。
色とりどりのフルーツと、それからたっぷりの生クリーム。この部屋の中で最も白い輝きを放っているのはこのケーキに違いない。あとの白色と思しきものたちはすべてくすんだ色をしている。
「はい」
シャルナークは空いた一席に座りながらベネットに手を出す。
「なんだ」
「代金」
「お前が出せ」
「なんでだよ! いいから五千ジェニー出せって!」
「サソリの誕生日を祝う気がねぇのか?」
「人にケーキ買わせて人に金出させてる時点でそれを言うなよ」
ベネットとシャルナークがにらみ合いながら喧嘩を始める横で、ハルシャはケーキの上にろうそくを立てている。
「父さんって何歳だっけ?」
「……六十……か……? いや三十三だな」
「差がありすぎだろ、そこ間違えるなよ」
サソリの言葉に思わずシャルナークが突っ込んだ。ベネットとの金の論争にいい加減終止符を打ちたかったのもあるかもしれないが、その場合結局支払いを持つのはシャルナークとなる。
「えー、ろうそく三十三もないよ……じゃあこれ一本十歳ね」
ハルシャは適当なろうそく三本を十歳カウントとして、残り三本を立ててケーキは完成した。
ベネットはよっこらせと立ち上がると、棚からいくつかの皿を出してきて、ハルシャと自分の前に置く。
「……オレの分は?」
「チッ」
「おい!」
舌打ちしたベネットを横目にシャルナークは自分で勝手に戸棚をあけて皿を出す。その手にあるのは勿論一枚の皿だ。
シャルナークがその皿とそれから目についたマッチをもって机に戻る。一応バースデーケーキならろうそくに火もつけるだろうという非常に常識的な配慮であったが、ベネットはにやりと笑ってシャルナークの手からマッチを取り上げたのだった。シャルナークは怪訝そうな顔をして「火つけられないだろ」と言う。
「いや? いいから見てろ。おいハルシャ、いいぜ」
「ん。父さん、ちょっと人差し指だけ伸ばしてろうそくに向けて」
「はァ?」
今の今までケーキが出されてもちらりとも目を向けなかったサソリが、ようやっと怪訝そうな顔をして顔を上げる。ハルシャは明らかに何かを企んでいるといった様子の、輝かしい顔でサソリが彼女の言うとおりにするのを待っている様子だった。サソリはしばらく眉を寄せたまま彼女の様子を見ていたが、しぶしぶといった様子で、人差し指を伸ばしたままハルシャの言うとおりにろうそくに向ける、つまるところろうそくを指さすような形になる。
「じゃあ次! 小指をそのまま伸ばしてみて!」
「……」
サソリは諦めたかのように言われたとおりにした。その瞬間。
ボッ、と小さな炎が指先から噴き出した。正確には爪の間から平たく火炎放射器のように炎が広がってケーキにたてられた六本のろうそくに同時に火が付いたのだ。
「やった! 大成功! 父さんすごくない!? 爪の間に超小型の火炎放射器を仕込んだの! 火力調整が難しいんだけど、伸ばす指の本数とか、形とかで威力が変わるの! 小指が一番低火力で……」
ハルシャはいたずらが成功したと言わんばかりの顔で輝かしくサソリの手の仕込みについてしゃべっている。ベネットは先ほどからうつむいたまま何も言わない。ただ、紅茶の入ったカップの中で、水面が激しく波立っていた。
シャルナークは必死に真顔を保とうとして口の端が歪み、眉がへんてこな形になっている自覚があった。笑うべきか、笑わざるべきか。笑ったらサソリが今まで以上に激怒する気もした。命の危機だ。たぶんハルシャはものすごい発明をしたと思っているのだろうが、少なくとも自分であれば指を曲げ伸ばしするたびに爪の間から炎が飛び出す仕組みはまっぴらごめんだ。
「左手が炎で右が水」
シャルナークは素直に腹筋を崩壊させ、そのまま床に転がった。ベネットも限界だったのかグフッと小さな音を立ててそのままヒーヒーとひきつった笑いを漏らし始める。笑ってないのはハルシャとそれから空気が氷点下まで下がったサソリただ一人である。
「ハルシャ」
「なに!? すごくない!?」
「最高火力はどのくらいだ」
「ん~……そんなに強くはないかな。せいぜいバーナーくらい。あんまり火力も強くないし、勢いはないんだよね。数秒でガスが切れちゃうし。ねぇねぇ父さんの腹にガスボンベ仕込んでもいい?」
「やめろ。絶対にするな」
「えー! ケチ!」
シャルナークとベネットは完全につぶれて床の上で転げまわるように笑っていた。あっはっは、と笑い声が裸電球の照らす狭い部屋の中に響き渡る。
ただ唯一この上なく機嫌が悪くなったサソリだけが冷たい目でシャルナークとベネットを見ていた。
一拍置いてから、サソリは手の平をシャルナークとベネットの方へ向ける。
「いいか、ハルシャ」
「ん? 何?」
「炎の威力を増幅させるなら狭い場所から一気に放出するのは悪くねぇ。あとはうまく風を使え。そうすりゃこの程度の威力は出る」
サソリの手のひらから吹き荒れた熱風と炎は、今しがたシャルナークが座っていた椅子とそれから床を丸ごとやきつくてそのまま風穴を開けたのだった。「アブネッ!」と叫んでその場から逃げ出したシャルナークは、無傷であるが、もはや床は大惨事である。
「すご!」
「オレは死ぬところだっただろ!」
ハルシャは感動し、サソリはシャルナークの言葉を鼻で笑った。今度はベネットが激怒する番だった。
畳む
#サソリ #ハルシャ #シャルナーク #ベネット