No.59
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#サソリ #うちよそ
「え、手はや」
シャルナークが初めて二人の娘の存在を知ったときの最初の一言目はそんな、大層遠慮のないものであった。
廃ビルの一角が今は蜘蛛のアジトとなっている。
普段からここを生活拠点にしているわけではないが、蜘蛛のメンバーが揃うとなるとそれなりに広い場所は必要だった。しかしかといって町中のマンションはあまりにも目立ちすぎるので、こういった廃墟が集合場所となりやすい。
今回集まったメンバーはマチ、シャルナーク、クロロ、ウヴォーギン、クロロそしてサソリだった。サソリは正式には蜘蛛のメンバーではないが、その念能力の有用性が高いこともあり、シャルナークを通じて時折蜘蛛の仕事に参加していた。彼自身、いくつか手に入れたいものがあるらしく、そういった意味でも蜘蛛の仕事は都合がいいらしい。
さて、なんの話の続きであったか、とりとめもない雑談から発展していったと思う。
ふと、ハルシャの話になったのだ。普段と違ってサソリが珍しく話に乗ったのでマチも興味をもったらしい。
「あんたが女の話をするの珍しいね、ハルシャって?」
サソリにもシャルナークにも向けた言葉だった。サソリはもちろんだが、シャルナークも基本的に女と寝たと言ってもその名前を出すことはなかった。
「サソリの娘」
シャルナークが簡潔に答えると、マチは「えっ」と言ってサソリを見る。
「あんた父親だったわけ?」
「まぁな」
「いくつだっけ」
「今年で……三十五かそこらだ」
「あんたに娘、ねぇ……どんな子?」
マチはそれなりに関心があるらしい。サソリが座っていたソファに寄りかかるとそのまま話を続けていく。
「ハルシャの話か?」
「他にいないでしょ」
「あと二人娘がいる」
「うえぇ!?」
次に声を上げたのはシャルナークだった。
「待ってよ、ナギサのことは知ってたけど、もう一人!? 知らないんだけど!?」
「面白ぇ話してんじゃねぇか。なんだ、そのハルシャとナギサってのは、強ェのか」
「バカなことを期待するなウヴォーギン。あれに手を出したら殺すぞ」
「弱けりゃ手を出さねぇよ」
ウヴォーギンはからからと軽快に笑って飲んでいたビール缶を握りつぶす。
「ハルシャはオレと同じだ、傀儡師。だが、本人は小枝みてぇなもんだ。ナギサは戦えねぇ。手を出すな。それから……」
サソリは言葉を区切る。
「ワカは」
サソリはそこで言葉を区切った。
「存外いい相手になるかもな」
「ワカっていうの? ホントに誰だよ、まぁいいやデイダラ経由で探すか……」
「ふん」
サソリはさっそく探し始めたシャルナークを尻目にマチの質問に答えている。
「ワカ、ワカ、うーん、あ、デイダラと縁がありそうなのはここか……ねぇ、サソリ、こいつ?」
シャルナークは叩いていたパソコンから顔を上げて画面を見せた。
とある大学で談笑する男女の姿が写っている。
「……隣の男は誰だ」
「そこは主題じゃないんだけど」
黒い髪を伸ばした女性はリュックサックを体の前に抱えていた。リボンタイのシャツに、濃い色のスカート、革靴で隣の男性と穏やかに話をしている、ように見える。ただ、その瞳孔をよくよく拡大すると、視線は写真を撮った誰かに向けられていることがわかる。談笑する男性は表情に違和感がないところをみると、この視線はカメラだけが捕らえたほんのわずかなものだったらしい。
「男は誰だ」
「ほんとにせっかちだな。この二人、同じ大学の学生だけど、マフィアとつながって売春の斡旋で小遣い稼ぎしてたらしいよ。でもこの女の子の隣の男は酒を飲みすぎて急性アルコール中毒で死亡。写真撮ってたやつは食中毒らしいけど、手足が完全に麻痺して動かなくなったんだってさ。どうみる?」
「腕を上げたな」
「うわ、否定しないんだ」
シャルナークは呆れたように言った。
ふと、クロロが椅子から立ち上がるとシャルナークの持っていたパソコンの画面を覗き込む。
「こいつが?」
「ワカ」
「ハルシャとナギサの写真はあるか」
「なに? クロロも興味あるの?」
「いや。ハルシャの生人形には興味があるが残りの二人にはさほど。手を出すと面倒そうだから事前に避けたいだけだ」
サソリは喉の奥で笑って「よくわかってんじゃねぇか、さすがに察しがいいな」と言った。 畳む