No.36
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フィネフェルがセノの隣以外で眠ることは珍しかった。彼は瞼を閉じるというただそれだけのことにすら抵抗が大きく、普段はセノの手を握りながらでなければ眠ることができなかった。ただ、今日は新人の指導でフィネフェルですらずいぶんと疲れているようで、ソファに横になって新しく取り寄せたばかりのレシピ本を腹の上に乗せたまま眠っている。セノは半開きになっているフィネフェルの唇に顔を寄せる。
「フィネフェル、風邪をひく」
「……」
「フィネフェル、起きないとキスをするぞ」
「……」
セノは沈黙を守るフィネフェルの唇に自らのそれを限りなく近づけてお互いの呼気を交換しながら、そこに言葉を乗せた。
「俺に寝たふりは通用しないと知っているだろう、起きろ」
「……結構うまくいったと思うんだけどな」
「舌の根が震えたな。もう少し頑張るといい」
「キスは?」
「もう眠い、俺も寝るから詰めろ」
「キースーはー?」
「おやすみ。また明日だ」
次の日
鮮やかな朝日とともに目が覚めて、蹴散らしたシーツをもう一度蹴り飛ばして落とすとセノは自分の腰に回ったフィネフェルの手をベッドに落とした。
「……んー……」
まだ寝ぼけているフィネフェルはもぞもぞとシーツの中に潜り込もうとしたが、シーツはさきほど蹴り落としたばかりなので潜り込む先がなくぱちりと目を開いた。
「しーつ……」
「起きろフィネフェル、俺は行くぞ」
セノもあくびを一つしてそのままダイニングの隣の洗面所へ移動しようとしたが、一歩踏み出したときにフィネフェルがセノの手を取っのでセノはたたらを踏んで一歩さがってそのままベッドに尻もちをつく。じとりとまだ眠そうな目でフィネフェルも睨むとフィネフェルはふにゃっと笑った。
「きすしてくれたら起きる」
「なぜだ」
「きのう言っただろ、また明日って」
そういえば昨日はセノも眠かったからそんな話をしたような気がした。あまり記憶がないがフィネフェルが言うのだからつまりそういうことなのだ。セノはため息を吐くと「どこに?」とだけ言う。
「くちびる」
「額」
「やだ」
「頬」
「絶対やだ」
「……わかった」
単純な力比べになると身長が高いフィネフェルに分がある。手段がないことにもないが、体に慣れた方法を取ると寝起きのフィネフェルをもう一度ベッドに沈めそうなのでやめることにした。諦めてフィネフェルの目を空いた片手で覆うとちゅっ、と小さくキスをする。フィネフェルがふふふと嬉しそうに笑った。畳む
#セノ #フィネフェル
2024/04/08