No.23
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ティナリと蒼月の幼少期の話。
嵐はテイワットのどこにでも起こり、その発生機序は謎に包まれていることが多い。海洋で発生するものもあれば、陸上で発生するものもある。嵐には大抵暴風の目と呼ばれる元素の塊のようなものが中心にあり、それらがある一定の大きさになると周囲に暴風と雨と雷をまき散らす。規模はその時々によって違うが、時々各地を旅する冒険者が暴風の目を見つけて事前に冒険者協会を通して各国の治安維持組織が市民に警告をすることもある。しかし国の地形が大きく変わるほどの嵐はめったになく、大抵のものは暴風雨が数日続いてその後はからりと晴れてしまうものだ。人々も昔からあるこの自然災害には慣れているので多くの人はあまりにも被害甚大な脅威とは認識していないだろう。
スメールシティに近づく大嵐はすでに教令院から通達があり各家は嵐に備えて準備をしていた。特に今回は巨大で風が強く吹くことが予想されていたのでティナリ一家も庭の小物を片付け、窓ガラスに板を打ち付けて安全対策をしているところであった。
幼いティナリと最近家族になった蒼月はまだ四歳である。手伝いをすると言って庭に出たが当然できることは少なく強い風が吹くたびに葉っぱが揺れるのを見てはしゃいでいた。両親はそんな二人を見ながら小さなプランターだけ家の中に移動するように頼めば二人は仲良く手を繋いで庭の片隅で育っている小さな花の種を植えたプランタを家の中に運び込もうとする。しかし何往復かしているところで庭の中をかき混ぜる様な強風がぶわりと吹き上がり、その拍子に蒼月の体がふわりと浮いた。
「あっ」
蒼月は鴆という璃月の仙獣の血を引いている。鴆とは鳥であり、その子孫である蒼月の体は通常では考えられないほど軽かった。今は事故で片翼を失ってしまったが、両翼が揃っていれば風域がなくとも空を飛ぶことができる。蒼月の体はそのようにできている。
蒼月はふんばったがどうあがいても風の方が強い。そのまま風に連れ去られるように上空へ吹かれていく彼女の手をティナリが捕まえる。しかしまだ幼いティナリの体も軽かった。二人は風にさらわれるようにしてそのまま庭から飛び出してしまった。
両親の絶叫を下に聞きながら蒼月とティナリも大泣きするがしかし降りる方法はない。蒼月はティナリの手をしっかりと握ってティナリも蒼月の手をしっかりと握る。蒼月はこのままどこかへ飛ばされるだけだとしても、ティナリはもしこのまま手を離したら落ちるだけだ。二人ともそれはわかっていたので繋いだ手は絶対に離さないようにしながら、しかし風を制御する術も持たずチンワト峡谷に落ちていくのだった。
二人は息を殺して半身を水につけたままぴくりとも動かなかった。
目の前をゆっくりとスピノクロコが横切って行った。彼らはティナリと蒼月の前を少し進むとぴたりと止まる。鼻面を自ら出して何かのにおいを嗅いでいるようでもあった。
風が強い。スメールシティをかき混ぜてそしてチンワト峡谷へ流れ落ちてくる風は時間が経つほどに強くなり、今やごうごうと唸りながら峡谷の中を渦巻いていた。
ティナリの家の庭からティナリと蒼月は飛ばされるようにしてチンワト峡谷へ落下した。幸いにして蒼月の羽が落下を緩やかなものにしてくれたこと、着地地点が比較的深い水であったため二人はうまい具合に足から落下して怪我をしなかった。しかしそのおかげで蒼月の翼はびしょ濡れになり、庭から飛ばされたときのように風に乗ることは難しいだろう。ティナリの尻尾も水を吸って重くなっている。もう一度飛ぶことは難しい。
できることはここでただ救助を待つことであった。ティナリの両親は二人が飛ばされたのを目撃しているし、おそらく落下地点の予測もついているだろう。すでに三十人団や近くのレンジャーに連絡がいっており嵐が激しくなる前に二人の捜索が始まっているものと思われた。しかしティナリと蒼月の目前の危険は相変わらずスピノクロコであることに間違いはない。
スピノクロコは通常はのんびりと水の中を動いている。大人で、かつ陸上であればスピノクロコから走って逃げることはそこまで難しくない。ただ彼らは水中からの奇襲が非常に得意であるため濁った水辺に近づくのは基本的に危険なのだ。またスピノクロコから逃げ切る条件は大人であることだ。健康な成人であればなんとかなろうが、びしょ濡れで体が重くしかも水中に半ば身を浸しているティナリと蒼月には、スピノクロコを出し抜いて逃げるのはあまりにも無謀なのだ。スピノクロコは二人よりもはるかに大きく、彼らの口は下手すれば二人を丸のみにしてしまうほどである。それでも二人はパニックになることはなかった。両親の学術書からスピノクロコをはじめとしたスメール地域の動物の基礎的な情報は二人とも頭に入っている。まずは見つからないこと、そして対象の動きを観察して次の行動を決めること。
二人は水に落ちるととにかく岸まで泳いでいった。しかし岸にはキノコンがおり完全に上陸することは不可能だった。浅瀬を渡りなんとか上陸しようとしたがその目前をスピノクロコに遮られたため、水草に体を隠すようにして息を殺している。風が荒れ狂いあらゆるものが落下してくるため二人が静かに移動する程度であればスピノクロコも気づかなかったようだ。しかし水につかっている二人の体温は徐々に下がってきており手の先から感覚がなくなっていく。冬場でない分まだましだがそれでも長時間はもたないと二人ともよくわかっていた。けれどもこの状況を打開できる方法がわからない。木に登るにはあまりにも背が低く体は重い。崖を登るほどの腕力はない。二人ともまだ風の翼を使うことはできなかった。
その時ティナリの耳が嵐に混じって人の声を聞き取った。ティナリは口を押えたまま目だけで蒼月に合図する。あちらに、人がいる。
それは確かに人の声で、ティナリと蒼月を探しに来た三十人団の団員であった。
「この辺りに落ちたはずだ!」
「くそっなんでこんなにキノコンが……」
そこで叫べばおそらくティナリと蒼月の場所は三十人団にもわかっただろう。しかし三十人団が二人のところへ駆けつけるよりも早く周囲のスピノクロコが反応するに違いなかった。声は徐々に遠のいていくようだ。二人が飛ばされたときと、今とで風向きが変わっているらしく彼らの声は下流へ動いていく。今叫ばなければならない。しかし叫ぶのはあまりにも大きなリスクだ。
蒼月の炎の神の目がわずかに光ったのは水中だった。二人とも気づかなかったが、それでも蒼月は今ここで何かをしなければならないという衝動に襲われたらしい。蒼月が立ち上がる。水音は風にかき消される。ティナリが蒼月の手を掴もうとすると蒼月はするりとその手から抜け出した。そして大きな声で「わあああああああ!」と叫んだのである。
周囲のスピノクロコが一瞬で反応する。蒼月は半身が水に浸っている状態でざぶざぶと歩き出した。ティナリの耳に「あっちだ!」と人の声が聞こえた。だがそれよりもスピノクロコが蒼月に噛みつく方がずっと速い、と思われた。
風の唸り声ではない、もっと激しい音と共に爆発が起き激しい炎が燃え上がった。炎は水と触れて激しい蒸気となり、スピノクロコが一斉に混乱する。蒼月は水から上がる。キノコンが一斉に反応する。それでも蒼月は動きを止めずに、重たい体を引きずって思い切りジャンプした。
さして高い跳躍ではない。しかしそれと同時に神の目が光り、赤かった炎が青く変化した。蒼月が着地すると同時に周囲に激しい爆発が起こる。水をまき上げ、風が経路を変えるほどの激しい熱が周囲一帯を支配している。蒼月が泣きながら飛び跳ねるごとに爆炎が巻き上がる。キノコンもスピノクロコも炎を嫌って距離をとる。
わんわん泣いている蒼月と水草の間で動けないティナリが発見されたのはその直後のことだ。炎は水と共に消え、風は再び峡谷の中を走り抜ける。蒼月の足元の草は激しく炎上しており、救出のためには蒼月の頭からさらに水をかけるしかなかった。ティナリの母と父は水に濡れるのも構わず、洋服の裾が焦げるのも構わず二人に駆け寄り抱きしめた。
そうして二人はチンワト峡谷から助けられたのだった。
二人がまだ四歳の頃の話である。畳む
2022/9/9~9/11 執筆
#ティナリ #蒼月 #賢者は翠海に揺蕩う