No.18
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キノコを庭に植えたいティナリ
ティナリはスメールシティ近郊に実家がありそこには様々な植物が植えられた小さな畑があったそうだ。そのほとんどは母が趣味で植えたものであったがティナリの好奇心を刺激するには十分なほどの奇怪で、奇妙で、混沌とした植物たちであった。というのもティナリの母はあまり見慣れない植物をその育成方法もわからない状態から育て花を咲かせるのが趣味であり同時に得意であったのだ。ティナリと蒼月はそんな両親の下で育ったわけである。
ガンダルヴァ村にレンジャーとしてやってきたティナリと蒼月はまずガンダルヴァ村で畑を作ることは非常に難しい、ということに気付いた。というのもスメールの森林は様々な大きさの川が蛇行し嵐が来れば荒れ狂う。海水面と同じ高さに家を建てるのは明らかに不毛なイタチごっこが繰り返されることが予想され、また下手をしたら家と一緒にどこまで流されるかわかったものではない。結果的にティナリも蒼月もツリーハウスのように、大きな木に組み込まれた廃屋をもらい受けてそれを改造した。しかしそれでは畑を作ることは難しい。
「キノコを繁殖させたい」
「ちょっと難しくない? こんなに湿気があったら家にだって勝手にキノコが生えるわ。正直今後キノコの胞子に悩まされることになるから、あえてキノコを植えるのは反対」
「キノコ……」
「気持ちはわかるけど、こんなにも胞子が飛び交うような環境じゃ、そのキノコがティナリが植えたものなのかそれともどこかからやってきた胞子なのかわからないじゃない。ハーブ、もしくは観葉植物がいいわ」
「ハーブなんて植えたらそれこそここいら全体がハーブだらけになってありとあらゆる植物が全滅するよ。それこそ認められないな。観葉植物はそもそも必要かと言われたら僕はあまり必要性がないと思う。だって家を一歩でも出れば外は森に囲まれているじゃないか。観葉植物が目的を失うよ。キノコがだめなのはわかった。なら僕は今研究している水草にしたい」
「外に置くの? 中に置くの?」
「どちらでも。明るさを考えるなら外かな」
「水草に対して反対する理由はないけど、そうでなくても虫が多いわ。人の生活環境の近くで不用意な水桶を置くと蚊の繁殖で大変なことになると思う。水桶の中に魚を飼育できない? 蚊の幼虫を完全に駆除しなくちゃ」
「うーん、まぁ水草の根を削り取ったりしないのなら……」
「それじゃあ水草に決まりね」
家に置く植物に関する討論はそれで終了した。月はすでに沈み、星だけが瞬く真夜中に二人はようやっと眠りについたのだった。畳む
2022/9/4執筆
#ティナリ #蒼月 #賢者は翠海に揺蕩う