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No.15

SS

なんでも作るところから

諸々のものを自分で作るティナリと蒼月です。

「はぁ驚いたな。お前さんたち器用なもんだ」
 男はつい昨日まで使われていなかった廃屋を改めて見直して感心したように言った。
 ガンダルヴァ村は雨林の中にあるレンジャーの活動拠点の一つである。レンジャーは自然と暮らすことを良しとしている思想集団ではなく、どちらかと言えば自然と人との間を取り持つといった役割を持つ集団だ。しかし活動する場所などを考えていくと最終的には自然と寄り添うように暮らすような形になる。手入れをしていない自然はあっという間に人工物を飲み込み、家など誰も住んでいなければすぐに木の中に飲み込まれてしまい廃屋はやがて自然の一部となってしまう。しかしつい先日来たばかりの新人レンジャーの二人はそんな廃屋と木を上手く利用してあっという間にそこそこの見栄えの家を完成させたのだ。とはいえ細かいところを見て行けば素人のものであることがわかる。デザイン性にも欠けるだろう。ところが実用面において最低限の要所を抑えているためはた目から見ても非常に生活の動線が整っていることがよくわかった。
「二人とも教令院だろ。どこの学派なんだ」
「私もティナリも生論派ですよ。専攻は動物と植物なんですけど」
 蒼月は平たい板を壁において息をつくと答えた。廃材を上手く削り取って板にしたらしい。おがくずは箱いっぱいに溜まっており、これは今後の着火剤につかわれる予定だった。水が入ってしまうと蚊が沸く原因になりかけないので注意が必要だが、うまく扱えばいろいろと便利な素材にもなる。
「生論派ってのはこういう、建築じみたこともやるのか? 随分と手馴れているように見えるが」
「ああ、ええっと、そうですね。研究機材とか動物の飼育環境とか自分で整えるんです。飼育小屋を建てたり、プランターを作ったり。お金があれば立派な機材を買うこともできるんですけど、そういうのは顕微鏡とか自分たちじゃ作れないものに充てるので、結果的に何とかなりそうなものは自分で作ることが多くて」
「なるほどねぇ」
「蒼月! こっちに板持ってきて!」
「わかったー! それじゃ失礼します。明日にはある程度整うと思うのでまた挨拶に伺いますね。忙しなくてすみません」
「いや気にすんな。こっちこそ折角教令院から来てくれたってのに住むところも用意できなくて申し訳ないな。いつも人手不足でなぁ」
「どこも同じですね」
 蒼月は笑うと、先ほど持ってきた板を家の中に運び込む。
「床板頼める? 屋根がまだ雨漏りしそうだから僕はもう少し屋根を補強してくるよ」
「わかった。上に上がるなら私がやろうか?」
「そうだね、じゃあ僕が床板の方をやるから屋根はよろしく」
 ティナリは蒼月から板を受け取って蒼月は代わりに屋根の上にぴょんと飛び上がった。蒼月の体は軽く背中の羽はわずかな風をも精密に感じ取り器用に風に乗っていく。学生時代のフィールドワーク中も研究対象が鳥だったこともあり、蒼月の高いところを恐れずまた簡単に上ることが出来る能力は同期からも随分と頼りにされていたようだ。
 ティナリが見る限りレンジャーの仕事には問題が山積みのようだった。しかしまずは足元から固めていかねばなるまい。学生時代に睡眠の重要性をしっかりと学んでいたティナリはナイフを持って板を削る。あと少し削れば床板として綺麗にはまるだろう。畳む


2022/8/30執筆
ガンダルヴァー村での生活はいろいろと楽しそうだ。
#ティナリ #蒼月 #賢者は翠海に揺蕩う

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