No.10
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2023年1月4日
#ティナリ と#蒼月 が大変忙しいあまりに走り回った話。
「疲れた」
部屋に帰って二人は並んでベッドの長辺に向かい垂直に突っ込んで顔をベッドマットの中に埋めたのだった。尻尾も翼もすっかりとへたれてしまいもはや艶やかな輝きは見る影もなかった。髪の毛もぼさぼさと跳ねまわり、床には帰宅までぎりぎり抱えていた資料が散らばっている。
年は明けすでに日付は一月四日になっている。古いカレンダーはいまだ昨年の十二月のままだが、壁にかかったカレンダーに手を伸ばしても届かない。体を起こしてカレンダーを掛け変える気力はまるで起きなかった。それほどまでにティナリと蒼月は疲弊しきっていた。
つい先ほどまで行われていたのはアムリタ学院恒例年末年始の特別講義である。この講義は来年最終学年になり卒業論文を書くことが決まっている学生に向けて行われる。学生にとっては年末年始などあってないようなもので、九月から始まった卒業論文は基礎的な学習を経て本格化していく。特に学生にとっては実験や実地調査も始まるためその追い込みといったところだろう。アムリタ学院は主に生物・医学系の学問を取り扱う。そのため必ず実験が上手くいくとは限らないのが実態だ。稚魚の観察をするために魚を捕まえてきて飼育したが一匹残らず脱走した、細菌の研究をしていたがとある学生が稲妻の名物納豆を持ち込んだことがきっかけで細菌が全て納豆に変化した、実験場として確保した場所の詰めが甘く捕食者の狩場になってしまった……などなど笑い話になっているものはなんとかそれでも卒業論文を書くことが出来た学生のものだ。笑い話にならなかった学生は卒業など遠い日の夢と化している。
そんなわけでこの時期になると経験豊富な学院卒業生たちが講義をするのが例年の催しごとになっている。ティナリと蒼月もレンジャーとして活動しながら同時に研究者として雨林の研究を続けているので特に何も問題がなければ毎年この講義に呼ばれていた。ティナリは実地での調査における注意点や失敗しやすい点について、蒼月は集めたデータを解析する上での勘違いしやすい結果の見方などについての講義となる。その後は二人とも卒業生からの山のような質問に答えたり、現在の研究の方向性について指導担当の教員と共に相談することもしばしばあった。
ティナリと蒼月自身もかつて学生の頃にこういった時代があったため、毎年違う顔ぶれになるとしてもやはり気になってしまう。そのためできる限りのことは協力するが、当然その後はへとへとだ。
「だめだわ、もう夕飯を作る気力もない」
「僕もだよ……何か残っていたっけ……」
「何もないわ……倉庫は空っぽよ……」
二人は顔を見合わせて「はぁ」と深いため息をついた。
「明日はようやっと休みだから色々と家の整理をしよう」
「毎年この時期は掃除ができないから埃が溜まっているわ。久々に窓を開けないと」
「でも今は……」
おやすみ……とぽつりと呟いてティナリと蒼月はそのまま眠りについた。
その後様子見と新年の挨拶にやってきたコレイとセノがベッドの縁に沿うようにかくかくと折れ曲がったティナリと蒼月を見て「今年もこの時期か」と思いながら机の上にそっとピタとタフチーンを置いて帰るのだった。スメールの新年は決して寒くはない。けれども二人の胃の中も、倉庫の食料も素寒貧だった。畳む
#賢者は翠海に揺蕩う