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現在連載中の#[静寂の都]で、神霊とセノの取引が滞りなく完了しセノの肉体の主導権が神霊に移った後の話。連載の後の話になるのである種死ネタでもあるんですけど、セノが消えたわけではなく精神と肉体が分離してセノが主導権を失っただけであり精神は生きているって話なのであんまり暗い感じではない。ファジールと仲良く神殿で生活している。
ファジールの他にも二人神官がおりまして、マサーアとバデウルと言うのですがマサーアが引きこもり読書好きで神殿にずっといるっていう話を書いたやつです。
セノがこの神殿へやってきて随分と長いことになる。最初からそのような取引であったためセノは文句を言うこともなく神殿へ長らく閉じこもっているがそれでもやはり暇なことは暇なようだ。心身ともに老いることのない状態にあることがファジールにとっては普通であったため人間の精神が永遠に耐えられるのかは不明であるが、セノも一時的には不安になっていたようだ。主に言われるがまま長らくセノと話をするようになるとセノは落ち着いた様子だった。
セノの体は生前の取引によって今は主にものである。しかし一方で本来なら消えてしまってもおかしくなかったの精神に関しては、不思議なことに今も残り続けていた。しかし体がすでにないためにセノはこの神殿の外へ出ることはできないのだ。この神殿は主の誕生と共に紡がれた半ば秘境と化した空間であり、主もかつて血肉を失っていた頃にはこの神殿から外へ出ることが叶わなかった。
神殿の最も高い場所から見える範囲で、死者の国の地図を制作していたセノだったがその地図作りもそろそろを終わりを迎えようとしている。セノが外へ出られないという理由で何度も外へ追い出され細かな計測を行わされたファジールとしてはこの地図作りには少々思うところがあるのだがそれは構わない。セノが描いた地図は見事なものであり主も気に入るだろうと思ったのだ。今はこの国には誰も住んでいないがあと数百年もすればまた人が栄えるのかもしれない。
セノが最後の一筆を追えて完成した地図を机の上に置くと「暇だ」と呟いたのでファジールはふと思い出したことがあり口にしてみた。
「……ならば本でも読んでみるか」
「本がここにあるのか?」
「ある。マサーアが管理してるんだ。そういえば会ったことはないな」
「以前、名前だけは聞いたことがある」
セノはそう答えたがあいにくとファジールにその記憶はなかった。
「では行くか。この神殿の一角には本を読み続けているマサーアでもいまだに終わりが見えないほど本が山積みになっている場所がある。マサーアは本が好きでな、記憶も俺よりはるかに整理されている。ただ教令院の連中のような探究心はない、故にマサーアは読むだけだが……セノがいれば何らかの進展があるかもな」
神殿の一画に踏み入れると古い紙の匂いに満ち溢れている。多くの書物が積み上げられ本棚に並べられ、まさに見渡す限り本の山となっていた。ファジールは「本を踏むと怒るから踏むなよ」と言うと器用に避けながらこの山の中を進んでいく。セノもファジールと同じように本の山をかいくぐるようにして先へ進むと、これまた古い椅子に腰かけた男性がぱらぱらと本を捲り続けていた。
「セノだ」
男性はセノの方を振り向くことはしなかったがセノが来たことを知っているらしい。ぽつりと呟くようにそんなことを言ってゆっくりと顔をあげる。セノよりも濃い褐色の膚と真っ黒な髪の毛が揺れている。前髪には一部鮮やかな赤が混じっているのが印象的だ。長く伸ばした髪をうっとうしげに払ってセノを手招きする。
セノはなぜ自分のことを知っているのか不思議に思いながら男性に手招きされるままに近づいて行った。
「なぜ俺のことを知っている」
「俺たちのことをファジールから聞いていないのか? 俺たちの意識の一部は同期させることができる。しなくてもいいわけだが。だからファジールがセノを抱いているということは俺たちも」
「やはり言わなくていい」
「そうか」
セノが慌てて言葉を遮ると黒髪の男はさして気にすることもなく口を止めてそれからようやっとセノとファジールの方を振り返った。ファジールと同じ紫色の瞳がしばらくセノを見つめてそれから「けど……俺が俺としてこうして顔を合わせるのは初めてだな」と口にした。畳む