落下
世は大海賊時代、海賊王ゴールド・ロジャーのグランドライン制覇に続き彼の残した財宝を見つけようと数多の海賊達が海を跋扈する。そんな中、後にありとあらゆる問題を引き起こし政府の悩みの種となる麦わらのルフィもまたロジャーの死後二十年たった頃海賊としての名乗りを上げるわけだが、とりあえず話はルフィが海へ出る9年前に遡る。
「お?」
「あ?」
「とォッ!!?いいいいやあああああ」
それはもう無残な一人の女の悲鳴がグランドラインの秘境チンハイ島の拳精山に響き渡った。
シン、と静まり返ったその山の雰囲気はいくらか異様で、常人ですらまるで全ての生き物が死に絶えてしまった沈黙に知らず知らずのうちに身が震えるだろう。そんな拳精山の山頂に近い部分に、チンハイ島に住まう地元民が伝説の修行場と密やかに伝える場所が存在した。
その修行場の名は、"呪泉郷"。百を越える泉が常に湧き出るその場所は一見すれば平和な自然の風景にも見えるがその実それぞれの泉はとても悲しい伝説を有していたのだった。
「ぶへっ!!ぶっ・・・うえぇ!?」
一つの泉から顔を出した男が一人、白銀の髪はべったりを顔に張り付き男はそれを面倒くさそうに掻き揚げるとそこそこに深いその泉から何とか這い出す。飲み込んだ水を吐き出して、男はそこでようやく自分の身体の異変に気付いた。
「な、何これ!?ってあたしの声じゃないし!」
ぺたぺたと胸を触ってもそこに柔らかな膨らみはなく、頬には何の切れ目もなくすべすべとした肌だ。幾分か高くなった身長に、立ち上がった瞬間違和感を覚えてバランスを崩し男は盛大にこけた。打ち付けた頭を押さえて這うようにして泉に近づきその水に己を映すと、そこに映ったのは女の顔ではない。
呆然とすることしばし、はっと気付いて慌てて落ちていた長い柄の提灯を手に取るも提灯はうんともすんとも言わなかった。
「に、・・・人間の・・・男」
呪泉郷の泉にはそれぞれ悲劇的伝説が存在する。
そのうちの一つが男溺泉と言った。数千年前一人の若い男が溺れたという伝説があるその泉に落ちた者は皆、男の姿になってしまうという呪いの泉だという。
さてこれはそんな男溺泉に落ちた女の子のお話。彼女ととある海賊一味のお話をとくとご覧あれ。
2012/03/21
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