赤髪のシャンクス/い、-

「ぬおおおおおおおッちょたんまたんまあーーー!!!!!」

「やめッ・・・馬鹿エース手ェはな、ァァァァァッ!!!!」

那由多ー!!うんうんうん!落ちるならおいらを巻き込むんじゃねー!!」

「このッ・・・馬鹿ダラァァ!!!」

「おい四人まとめて落ちたぞォォ・・・?イタチ手を離せ!」

「ごめんこうむる」

「そりゃこっちの台詞だよい!!」

「五人落ちたァァァ!!」


盛大な水しぶきが上がった。慌てて駆け寄ったサッチの視界にはすでに海に落ちたはずの五人、順にエース・那由多・デイダラ・イタチ・マルコの姿はなく激しい波がモビーディック号に打ち寄せる。


「ギャアアアアぜぜぜ全員沈んだ!?」

「落ち着けサッチ!エースとマルコは能力者でも那由多もデイダラもイタチもいるんだ!無事に決まっている!」


そもそもの始まりはエースがうっかり嵐の中で足を滑らせたことにある。モビーディック号すらひっくり返さんと押し寄せた波は猛烈な勢いで甲板を叩き、船はぐらぐらと大きく揺れた。雨に濡れて滑る足元に見事にひっかかったのがエースで、そのまま船の上から投げ出されんとした彼は思わず那由多の後ろに伸びた長い髪を引っつかんだ。いつもならチャクラを足に集中してその場に留まることも可能だったが、何分あっちこっちと大揺れの世界だ、そこへもって不意打ちのように髪の毛を引っ張られ色々とやばい方に首が曲がった那由多はうごぉっと変な声を出してエースと同じく海へと投げ出される。だが当然那由多もただで落ちてやるものか、と無駄に意気込んで懐から取り出したのは縄標。クナイに縄をつけたそれはくるくると回転させ三百六十度どこにだって飛ぶものだから、軽く勢いをつけてひょいと投げれば簡単にデイダラの足に巻きつき、デイダラは顔面から甲板にダイブした。姿勢を崩せばこの悪天候の中、船にしがみついていられるはずもなくデイダラはイタチを道連れに、そしてイタチは手近にいたマルコの襟首を引っつかんで計五人はものの見事に嵐の海の中へ消えていった。





















































青い空、そしてその空を映しこんだ青い海。いや海の色を空が真似したのだろうか。
水平線で交じり合う二つはどちらも穏やかな表情を浮かべ、綿飴のように真っ白な雲ははるか高くでゆっくりと風に流されている。


「あー・・・・・」


白い砂浜にはさんさんと明るい太陽が照り付けていた。そんな中むくりと起き上がったマルコは全身についた砂を払い落とし飲み込んだ海水をぺっと吐き出す。先の嵐が信じられないほど美しい光景に、マルコは感嘆ではないむしろ全く逆方向へのため息を吐き出したのだった。


「どうすんだよい・・・」


さて、まるで金魚の糞のように連なって海に落ちた五人、エース・那由多・デイダラ・イタチ・マルコはその後一体どうなったかと言うと、必死の思いでデイダラの起爆粘土に掴まり流されること数時間、その頃にはマルコとエースは完全に残り三人に抱えられている形になっていた。荒れた海は寸分先も見通すことが出来ず、ぷかりぷかりと波間に浮いている起爆粘土は遊泳能力がないためにただただ波に煽られては流されるだけだった。


「ぬおおおお!!!デイダラてめぇぇぇ!!もうちっと泳げる奴にしろよ!!」

「緊急だったんだから仕方ねェだろ!?うん!!大体那由多がおれのこと引きずり下ろさなきゃだな、」

「叫ぶ暇があったらこの嵐をなんとかしろ」

「ちょ、イタチマルコ沈んでる沈んでるぅぅ!」

「お前もだ那由多ー!エース息してんのかそれェェ!!!」

「ぎゃああああすごぼっ」

「何してんだ馬鹿!」


叫んだ瞬間波をかぶった那由多は盛大に水を飲み込み危うく起爆粘土から手を離すところだった。すんでのところでデイダラに捕まえられて辛うじてその場に留まるもエースは顔が半分水に浸かったままだし、マルコはかろうじて意識があるようだが、最早しゃべる気力もないらしい。
そうして騒ぎつつ嵐を乗り越えた先、起爆粘土に掴まった五人は体温を奪われ続け、波にもまれ続けで完全に疲労し、ようやくたどり着いた浜辺に乗り上げるや否やぶっ倒れるように眠り込んだ。
そんな中一番に目を覚ましたマルコは近くに転がって寝ている四人を見回す。くらげのような形をした起爆粘土は腕がもげ体がもげのひどい有様で、でもそのおかげで助かったのだからマルコは横を通るときなんとなく心の中で感謝した。


「おい、エース起きろよい」

「んあ?」


パチッ、と中途半端に目を覚ましたエースはすぐには視界が定まらないらしくぼやーっとした目でマルコを見て「パイナップル食いてェ」と呟くものだから、とりあえず一発腹にお見舞いする。近くで砂に顔をうずめて生きているのか死んでいるのかよくわからない状態で寝ていた那由多をたたき起こし、更にデイダラを蹴り起こしたところでイタチも上半身を起こした。


「いってー・・・ちょっなんだよマルコひでェじゃねェか。おれなんかした?」

「一遍溺れて来いエース」


完全に寝ぼけていたらしいエースの発言にぴきりと青筋を浮かべたマルコは一言言い放ち、今だ頭がぼーっとしているのだろう四人の顔を見回した。


「全員無事だな」

「これを無事っつーならな。あークソッ全身変な気分だこりゃ」

「海水だからな。デイダラ、もう一度寝るなら木陰に入った方がいいよい。こんなとこで寝ると日差しがきついぞ」

「うん・・・うん・・・・おいらもう動ける気がしねーんだよ・・うん。いくらプランクトンっつってもなァ一応は舵とったりしてんだからな。チャクラ切れ」


再びばたんと仰向けにねっころがったデイダラにマルコは一つため息をつくと、仕方なく足を掴んで近くの木陰に投げ入れた。すぐに寝息が聞こえてきたところを見ると確かに相当疲れていたのだろう。浜を見れば那由多とイタチとエースもこちらへやってくる。全員が木陰に入るとやはり皆一様に座り込んでエースと那由多はすぐにうつらうつらとし始めた。


「・・・・七日間飲まず食わずも寒中水泳も丸三日戦い続けもやったことがあるが・・・・嵐の海につかっているのは思った以上に堪えるな」

「おめェらの感覚もだいぶおかしいとは思うが・・・そいつァ同意するよい。海ってのは半端なもんじゃねェ」


特にこのグランドラインはな、と言外に付け加えたが果たしてイタチがそれに気付いたかはわからない。


「・・・・リーダーに連絡を取った方がいいな」

「電伝虫はねェぞ」

「残ったチャクラでもなんとか連絡くらいはつくだろう。・・・ただリーダーがきちんと受信できるかが問題だな」


幻灯身の術は非常に便利な術であるが、チャクラの送信側と受信側のある程度の準備が必要だ。常はリーダーからの連絡を受けて暁メンバーがそれぞれ幻灯身の術を使うため問題がないのだが、いざこちらから一方的に送信してリーダーがそれに気付くかはイタチにもよくわからない。チャクラを使用する量はそう多くないのでしばし試してみるもののどうやら一方的な送信では術としてなりたたないようだ。
イタチがため息を吐き出したのを見てマルコは失敗したと悟ったのだろう、「まビブルカードがあるからな、すぐ帰るとするか」と呟く。


「しかし貴様がいいが、おれたちは飛んで戻るわけにもいかない。那由多はまだ口寄せができないし、おれも口寄せは猫との契約だ。デイダラのチャクラがある程度回復するまで待つか、船を捜すかしかないだろう」

「エースの奴はビブルカードを持ってねェしな。仕方ねェ・・・・よし、ちょっと人がいるか探してくるよい。いたら船を貰ってくらァ」

「・・・しかしおれらは船など動かせんぞ」

「おれもそんなに得意じゃねェが・・・エースの奴は始めは一人で海に出たった話だからな、なんとかなるだろい」

「人は見かけによらないな」

「全くだ」


そう言って笑えば横から「そりゃどういうことだ」とエースが話に割り込んできた。まだ完全に寝てはいなかったらしい、ぐいぐいとイタチの長い後ろ髪を引っ張って先ほどの言葉を訂正させようとする。


「おれだって船ぐらい動かせる」

「それが以外だ」

「燃やすぞ」

「ほう・・・やってみるか」

「やめろいイタチ。大体万華鏡使うとサソリに殺されるんじゃねェのか」

「それもそうだ」


張り合いがなくなったようにイタチは樹の幹に背を預けて目を瞑った。エースもいじりがいのなくなったイタチの髪の毛を手放して再び寝込んでしまえば、静かな朝の空気の中聞こえてくるのは穏やかな寝息だけになる。マルコは一つため息をつくと連中を起こさないように静かに(といっても彼らのことだからきっと何かあればとんでもないスピードで目をさますのだろうけれど)その場を離れた。











「結論、無人島」

「・・・何の結論?」


結局那由多たちが次に目を覚ましたのは太陽が完全に昇りきってからだ。太陽の真下で、モビーディック号から遭難した五人は島を探索に行ったマルコの報告を聞く。だが歩き回って確かめてわかったことだが、この島はどうやら人が住んでいない無人島のようだった。奥にあったジャングルの中までは事細かに調べていないから完全に無人島と言い切れるわけではないが、少なくともマルコが空から島を見回した限り人の住んでいる痕跡はない。勿論船なども、ない。


「こん中で誰か船作れる奴はいるかよい」

「無理だろ、・・・うん」


まだ眠そうなデイダラは目が完全に開ききっていない。イタチも那由多も当然エースも首を振って、さてどうしようか、とマルコは再び考え込んだ。


「デイダラぁお前起爆粘土まだ使えねーの?」

「相当水を吸ったからどろどろなんだよ、うん。まず乾かさねェといけねェしそれにチャクラ切れだ。今からすぐ出発は無理だな・・・うん」

「それならマルコが先にモビーディック号に戻るのはどうだ?」

「そりゃ無理だよい。おれは確かにビブルカードがあるから親父の船に戻れるが、おれ一人戻ってどうする?グランドラインは方位磁石が使えねェ。一度この島を出たらここへ戻ってこれる確証なんてねェよい」

「厄介なとこだなおい!なァイタチ、幻灯身はどうだ?」

「さっき試したが無理だ。相当遠くに流されてチャクラが届かないか・・・・それともリーダーが受信していないのかはわからないが・・・」

「ならもうデイダラの粘土乾いてチャクラが戻るの待った方がいーんじゃね?つまり五人でここ出ないとだめってこったろ?森もあるし、気候も悪くねェから大丈夫だろ」

「・・・・エースの言う通りだな。ならしばらくここで滞在ということにするか」

「いえーい。つーことで寝るか」

「お前ずっと寝てただろい」








2010/12/12
2011/07/20 加筆修正