一番手/赤砂のサソリ-永遠の芸術家-

「ようするに芸術ってのは永遠だ」

「へー」

「形として残らないものに価値はねェ。後世にまで語り継がれていかなければ意味なんてねェだろう?事実芸術なんてお前らが呼ぶものは過去の偉人の残したものだ」

「まーそうかもな」

「だからお前らの言うポーネグリフはまさに芸術だ。その形と中身を永遠に残し続けることができる、それ以上に素晴らしいものなどこの世に存在しない」

「ポーネグリフねェ」

「形あるものはいつか朽ちるとよく言うが、それじゃ芸術にならねェんだ」

「でもある種ポーネグリフってのは例外だろ。普通はどんなもんでもいつか壊れるぜ」

「だからおれは永遠を求めているんだ。たとえどれだけの年月を重ねて風雨にさらされようとも朽ちぬ存在が欲しい」

「よくわかんねーな」

「だろ。とりあえずわかるのはデイダラにこの話をふっかけちゃいけねーってことだけだって」


暗い部屋の中にはほとんど日が差し込まず、エースが持ってきたランプのみがぽつりと部屋の真ん中に置かれている。元から窓の小さな部屋だ。今は昼間だったが差し込む陽光はわずかで、サソリは手元が見えているのかエースにはよくわからなかったが、その動きに欠片も迷いがないところを見ると指先だけでしっかりと作業が出来てしまうのだろう。
モビーディック号の一室。奇妙なこの異世界からの訪問者をどこに泊めるかで問題になったとき持ち上がった提案が今は倉庫としての役割しか果たしていない一室だった。あそこなら一応古いベッドもあったし、多少の水漏れがあるがとにかくサソリと同じ部屋で一晩過ごしたものが部屋をなんとかしてくれ、と泣き付いてきたために那由多とサソリの部屋はその倉庫と決定したのだった。水漏れはものの数秒で修理され、そう広くはないがかといって狭くもないこの倉庫の中は、今異常なほどの傀儡で山になっている。甲板で見たときにはそう気持ち悪いものと感じることはなかったのだが、いざこの薄暗い明りの中でまるで人のようで人ではない人形を見ていると背筋がうすら寒くなってくる。サソリと那由多は全く何も感じていないようだが、エースもたった一人でこの場に居続ける勇気があるかどうかはいささか怪しいと心のうちで思った。ちょっとだけサソリから顔を逸らして壁を見るとそこではまた別の傀儡が濁った目をこちらに向けていて、エースはすぐに視線を戻す。全く持って、気味の悪い世界だ。


「で、芸術がなんだっけか」

「だから芸術ってのは永遠だ。そしておれの芸術はこの傀儡だ」


サソリにそういわれたところで顔を上げて壁を見回す気には到底なれなかったからエースは適当に相槌を打っただけだった。てっきり身を入れて話を聞いていないことをサソリに怒られるかとも思ったが、彼自身そんなエースの様子に気付いていても気にする様子などなく、どうやら彼自身の芸術を他の誰かに理解してもらいたいという欲求はそれほど強くないらしい。


「旦那の傀儡術ってのは昔っから有名だったらしくてさー別に今さら何言われてもってとこだろ」

「ふーん。いつごろから傀儡_術?ってのやってたんだ?」

「さァな。物心ついたときにはもう傀儡を操れた。人傀儡を初めて作ったのは・・・五・・・いや七か?」

「壮絶だな」

「忍なんてのはそんなもんだ。所詮国の戦争のための道具だ」


サソリの言葉にエースは顔をしかめたがそれは暗がりのせいで多分誰にもわからなかっただろう。
カチャカチャ、とサソリが人傀儡に仕込みを仕込んでいく音と、那由多が部屋の隅の木箱の上で寝息を立てる音以外、ふっつりと音が途切れてしまった部屋でエースも特に何をすることもなくじっとサソリの手元を見つめていた。


「エース」

「あ?」

「そこの巻物を取れ」

「おう」


エースは座っていた櫃から半ば立ち上がるようにして足元に落ちていた巻物を拾うとサソリの方へ軽く放った。弧を描くそれをサソリはチャクラ糸を吸着することで捉えると、そのまま左手の動きだけで巻物を開き口寄せでクナイを取り出した。
時折視界を掠める何かがあったが、いざ戦闘となれば一体だれがその存在に気付くだろうか。あまりに細やかに練り上げられたチャクラはほとんど視界に入らず、注視してもそう簡単に見えるものではない。エースの知る限り覇気と呼ばれるそれらは戦いの中でさほど大きな役割を果たすものではなかった。確かにそれがなければロギアの能力者には触れることも叶わないが、単純に覇気だけ使えれば強いかと言われればそれもまた違うだろう。だが世界が一つ変わるだけでその用途は大きく変化して、エースが今まで暁連中と一緒に見ただけでも、覇気(彼ら風に言わせればチャクラ)はありとあらゆる形態でもって戦闘の中に組み込まれていた。水面歩行然り、傀儡然り、起爆粘土然り。純粋にどちらがいいのかと言われてもわからないが、少なくとも彼らの術は面白いと思う。


「暇なら手伝え」

「何を?」

「実験台」

「あー・・・おれ今から隊長の集まりあるから」


サソリの物騒な言葉に押されるようにして、エースは二人の部屋を出た。
その後那由多の悲鳴が聞こえてきたとか聞こえてこなかったとか言う話だが、とりあえずエースは無視することに決めたのだった。



















「__ということで次回の敵船との戦闘に関しては長門たちに一切合切任せるよい。そろそろお前らが入る隊も決めとかなきゃなんねェからな。できれば全員の特色がわかるような戦闘配置にしてくれると助かるんだが」

「・・・・悪いがそれは多分無理だな。おれたちは多くて二人までとしか協力して戦闘することがない。全員を出せば相打ちになりかねない」

「別に仲悪いわけでもねェだろうよい」

「・・・・我らは全員が幼い頃より共に協力し合って育ったような仲ではないからな。各々の術がほぼ完成したときに出会った連中ばかりだから、互いの術に自分のそれを合わせることが難しい。特に暁はたった一人で城一つ、国一つ落とすような実力者ばかりだったからそもそも協力という必要性があまりなかった」

「そうか。だがあいにくここは海賊船なんでな、単独行動は色々とまずいよい」

「わかってる。そのあたりはなんとかするが、正直もうしばらくは難しい」

「・・・・仕方ねェな。ならなるべく暁の実力がどんなもんかわかりやすい奴で頼むよい」

「了解した」


白ひげ海賊団の隊長たちの定例会議は、一般人が考えるほど堅苦しいものではない。そもそも海賊なのだから当然と言えば当然なのだが、人数の多いこの船の中、見張り・掃除・戦闘・・・といくつかある当番を適当に割り振るだけの話だ。今回は新たなメンバーとなる暁のリーダー、長門を銜えて彼らの所属隊についての話もあったがそれだけだった。
長門はマルコの言葉に頷いた。


「どうもここいらじゃ数隻の海賊が徒党を組んでうろついてるそうだい。恐らく近いうちに戦闘になる。・・・誰が行く?」

「まァサソリでいいだろう。本当に忍らしい忍というならイタチが一番だろうが、遠距離戦なら断然、サソリかデイダラだ。相手が数隻なら近づかれる前に叩く」

「悪くねェ。ならサソリに伝えておけよい」

「ああ」

「じゃ解散にしてくれよい」


マルコの一言で食堂の一角に集まっていた隊長たちはぞろぞろと連れ立ってそれぞれの持ち場へと戻っていった。長門だけはしばらくその場に座ったままだったが、マルコもすぐにその場を去ってしまったので、彼がその後どうしたのかはわからない。




























「ぞろぞろ来やがったな」


天気は曇り。若干の風が吹き、海は波立ち荒れている。そんな中現れた敵船に対峙したモビーディック号は相手と一定の距離を確実に保ちつつ、ゆっくりと攻撃の機会を狙っていた。


「いけるかサソリ」

「もう少し近づきたい」

「だけど、あと少し入れば射程距離に入るぜ。四方八方から砲弾が飛んでくる」


エースは冷静に敵船との距離を測りながら言う。彼はどちらかと言えば頭で考えるよりもまず動くタイプだと考えられがちだが、その頭の中ではかなりの計算が身体を動かすと同時に行われている。一般に学、と呼ばれるようなものは持ち合わせていないがいざ戦闘になれば勘と、必要な情報を確実に拾い上げるセンスだけで相当な実力を発揮できるのだ。


「砲弾か。どれくらいの勢いがある?」

「あと一歩踏み込んで打てば甲板で十分死傷者が出る。モビーに当たれば穴が空く」


サソリたちの世界には基本的に大砲や銃といった火器はあまり大きな発展を見せなかった。それもそのはず、そんなもの使わずとも忍たちの術の方が遥かに威力が強く、火器の開発に力を入れるくらいであれば術の開発をした方がいくらかましだったからだ。だからサソリにとってその大砲の威力というものが未知の存在であることは確かだったが、一応この任務を任された以上は何とかしなければならない。


那由多、敵の配置は」

「囲まれた。全部で五隻、ぐるっと円形に船が漂ってるぜ」

「マストを借りるぞ。那由多、デイダラ取りこぼしはお前らでなんとかしろ」

「げェ旦那の尻拭いかよ、うん。お断りだぜ」

「万が一の話だ。モビーに傷をつけるな」

「そりゃ了解だな」

「ま、それなら了承してやってもいいぜ、うん!!」


那由多は鎖鎌を、そしてデイダラは懐から起爆粘土を取り出す。


「デイダラ右舷な。おれ左舷行く」

「前後方は?」

「ならおれが行く」

「任せたエース」

「後ろはおれが行こう。なんだったら全方位雨で囲むが」

「そこまでする必要はない。無駄にチャクラを使わないで塵に等しい」

「ひどい!」


長門の嘆きをとりあえず無視して、サソリは一瞬でマストを駆け上がると最も高いところに立ち、敵船を見据えた。


「フン・・・永遠こそが芸術だと思い知れ」


親指を噛み千切れば異様に白いその肌の上を真っ赤な血が伝っていく。巻物を広げるのに手などいらない。懐から取り出したそれを細い細いチャクラ糸のみを使って一瞬で広げて、サソリは自分の血を巻物に吸わせた。
傀儡が現れたのはサソリの傍ではない。モビーディックをぐるりと囲むように、頭を垂れた傀儡が手に武器を持ったままサソリの指示を待って沈黙しているのだ。


「すっげーな。これ全部一人で操るのか?」


船首の上に佇んだまま、エースはすぐ傍にいたイタチに尋ねる。モビーを取り囲んだ傀儡の中にはエースがサソリと那由多の部屋で見た人形もあって、陽の下で見るとまた壮観だ。白ひげ海賊団の船員達もこれがどういう風に動くのか興味があるのだろう。誰もが固唾を呑んで次の動きを待っていた。


「ああそうだ。といってもおれは百機を見たことはないが」

「何言ってんだよイタチィ!!これ百機のシリーズじゃねーよバラバラの五十だぜ!」

「そんなこと知るか」


那由多の怒鳴り声にイタチは同じく声を荒げて返した。とはいっても彼の場合元が冷め切っているので声を荒げたといっても少々張り上げた程度に過ぎない。デイダラや飛段と同じような荒げ方ではないことをここに訂正しておく。
先の動いたのは痺れを切らした敵の海賊の方だった。大方こちらの動きを待ってそれから一斉射撃としゃれ込む予定だったのだろうが、モビー上で動くものは何一つなし、気味の悪い何かが船を取り囲んだもののそれ以上なんら動きもないものだから我慢することに慣れていない海賊達は黙々と自分の役割を果たすということの重要性を理解していない。
白ひげ海賊団は強さ・規模共に新世界ではトップオブトップだ。だが人の数が多い分能力者が多いために、足場であるモビーディック号を崩されれば海の上ではそれで終わり。勿論それが最も大変なことに間違いはないのだが、少なくとも今周囲を取り囲んだ海賊達は一定の距離をとって相手が疲弊するのを待つ作戦に出たのはある意味正しい。そこで逃げ出さなかったのは愚かしい行為だが、少なくとも少し前までは取り囲んだ五隻のうちどこか一隻にいるだろうリーダーの指示に従って隊列を乱さず船の周りを旋回していた。が、今その一つが動きを乱し、勝手に射程距離に踏み込むと一方的に撃ってきたのだ。一度乱れた流れはそう簡単に戻らず、乱れの始まりが大きな穴になることを彼らはきっと知らない。
サソリはおそらくかかった、とも思わないだろう。何せ彼はまだ何もしていなかったし、正直なところもう少しにらみ合いが続くと予想していたためにこれが想定外のことだったのだから。


「忍耐力が足りねェな。情けねェ」


指は軽く動かすだけで構わない。左薬指、そして右小指。五体の傀儡がキキキキ、と歯車が噛みあう音がしたと同時に顔を上げる。カシャンと口が開けばそこから起爆札付きのクナイが一斉に飛び出し、狙い違わず砲弾の全てに直撃して海の上でどでかい爆発を引き起こした。
それが引き金だった。
隊列を乱した海賊達は最早これまでと一斉にモビーディック号に向かってきたのだ。大方仲間割れでも起こしたのだろう、こうなったらいち早く白ひげの首を取ったが勝ちだと五隻の海賊船は帆に風をはらんであっという間に近づいてくる。
自らを鼓舞するような雄たけびが四方八方から聞こえてきて、それだけだとまるで四面楚歌の状態だが、サソリはそれを遥か高みから見下ろしてにやりと口の端を吊り上げた。


「自分で自分の居場所を教えてくれるたァ随分生ぬるい奴らじゃねェか・・・・ソォラァ!!!!」


五十の傀儡が一斉に飛び出す。手に武器を、身体に仕込みを、傀儡たちはサソリに操られるがままに、あっという間に五隻の海賊船に乗り込んだ。そこにロープも縄も必要なく、サソリのチャクラ糸だけが彼らを繋いでいるために動きはまさに変幻自在、気味の悪い傀儡人形が次から次へと敵船の船員たちに襲い掛かった。
さすがのサソリとて全方位を一気に視界に入れることは不可能だったから、彼は終始身体と視線を動かし続けた。白眼があればまさに無敵だろう。だが、そんな血継限界などなくとも五十の傀儡は確かにサソリの意のままに動き続け敵を始末する動きに無駄はない。


「すっげーなァ・・・あんだけの人形でエースや親父並に一掃しちまうじゃねェか」

「ああ驚いたよい」

「すごいだろう?」

「何でお前がそんなにしたり顔なんだ長門」

「おれが見つけた暁のメンバーだからだ」


毒煙が船の上で舞い上がり、船員は音もなく全滅した。ざぁぁぁ、と風に流され霧散した後に甲板に転がるのは死体だけで生き残ったものは誰一人としていない。
放たれた千本は正確に敵を殲滅し、サソリの傀儡はそのほとんどが無傷のままに敵船を占領していった。
全てに決着がつくまでにそう長い時間はかからなかっただろう。クルーがその手際のよさに見惚れている間に、敵船を五隻まとめて制圧。まさにエース以来の逸材の登場といったところだろうか、隊長たちもまた暁という組織にかなり興味を寄せたのは確かだった。


「終わったか」

「ああそうだな」


傀儡の動きが止まり再び頭を下げたままその場で沈黙した。ボン、と煙が上がりすべてが再び巻物の中に戻るとサソリはようやくマストから甲板に下りてきた。


「チャクラコントロールは上出来だな、サソリ」

「ああ。絶対量は少ねェが、そこさえ気をつければ多分もう問題はねェな。おいエース。後始末は任せた」

「おう」


サソリの言葉にエースは頷いて、一度だけ身体を震わせた。モビーディック号を中心に海の上を広がる業火。海水面と接触すると猛烈な勢いで蒸発が起こり、その熱がどれほどのものかわかっていただけるだろう。モビーディック号のすぐ近くで沈黙した船に炎が燃え移ると五隻の船体は一瞬で馬鹿でかい炎に包まれた。燃え盛る火はまるで死者達を弔うそれのようで、やがて散っていった魂を乗せた船は中央から崩れて海に沈む。彼らの骸はいずれ海の生き物の糧となり、幾重もの食物連鎖の果てにまた陸へ戻ってくるのだろう。一時は敵同士であったものの死者に善し悪しはない。白ひげ海賊団のクルーはしばしの黙祷でその魂を送ると、それぞれが持ち場に戻っていく。


「と言う感じなのだが、どうだマルコ。暁はこんな連中が揃ってると考えてもらっていいのだが。とはいえ大方一芸に秀でている感じではあるがな」


長門がマルコの方へ振り返れば彼は了承したとばかりに首を縦に振る。


「全くお前らは本当に飽きねェよい。隊編成についちゃ見直しが必要だな」

「そうか。後は任せよう。お前らも解散でいいぞ」

「だっんなーでもさどうする?さっきので相当仕込みなくなっただろ?」

「ああ問題だな。那由多、しばらくお前の仕込みの半分よこせ」

「え、軽くなるじゃんやだし」


那由多はぴょんと飛び跳ねてサソリから距離をとった。


「なんだよ、問題発生?」

「ああ・・・・仕込がな」

「あのクナイとか言う奴?」

「それも含めて全部だ。傀儡の術は遠距離からの攻撃に向いているが、その分仕込が重要だ。お前らの便利な能力と違って無限に生み出せるものじゃねェから事前の準備を相当念入りに行わなきゃあそこまで動かせねェんだよ」

「へェ・・・結構制約があって大変そうだな」

「ああ、全く能力者ってのはおれらからすればめちゃくちゃだぜ」

「ホントだよなー。エース、お前火とかずりィ」

「言うなよ。おれだって海に落ちたら話になんねェんだから」

「んー・・・結局忍も能力者も一長一短ってとこかァ」

「完全な術なんてねェってことだろ」

「そりゃそうだ」


那由多は納得するように頷いた。


















それから幾日かたった後の隊長たちの集まりには、現白ひげ海賊団にいる暁全員の顔ぶれが揃っていた。いつもなら一応代表として長門が顔を覗かせているだけなのだが、今回に限っては暁連中の所属隊が決まると言うことで、全員参加となっているのだ。


「お、遅かったな那由多・・・ボロボロだなお前」

「うっせ。旦那が傀儡の整備中だったから連れ出すのにすんげー苦労したんだっつーの」


イゾウは煙管を片手にけらけらと笑う。那由多はそんなイゾウを恨めしげな目で見ていたが、出入り口に立っていたのが邪魔だったのだろう。後ろから思い切りサソリに蹴り飛ばされ那由多は無様に床に叩きつけられる。


「邪魔だ、死ね」

「死ね!?どけじゃねーの普通ぅぅぅ!!」

「おいそこ静かにしろ話が始まるぞ」

「大体リィダァァー!!!こうなることなんて最初から知ってたんだろぉ!?だったらリーダーが迎えにいけよ!!」

「とりあえず黙れ那由多


長門は那由多の必死の訴えをあっさり無視すると、マルコに向き直る。ようやく静かになった隊長達、そして暁の面々に見つめられてマルコはゆっくりと口を開いた。


「あー・・・基本的に今回は当番は決めた通りで、それ以上の連絡は特にねェよい。で、本題の長門たちの隊編成だがな・・・一応親父にはもう了承はとってあるんだが、おれは零番隊の設立を提案するよい」

「零番隊?ってェとようするに新しく作るってこと?」


ハルタは他の隊長たちに比べて身長が低いため木箱の上に立ちさらに精一杯背伸びをしたのだが、それでも結局ジョズの肩の上のほうにひらひらと手が覗いているだけだった。順番的にジョズとハルタを入れ替えるべきなのだろうが、なんとなく隊の番号の若い順に並ぶの癖になっているため、大抵ハルタは隊長の集まりにいるのかいないのかわからなかった。


「ああ。最初は普通にそれぞれを各隊に割り振ろうとも思ったんだが、見た通りそうそう簡単に協力できるようなたまじゃねェだろい。それにまだお互い知らないことが多すぎる。だったら暁のことをよく知る長門を隊長にして零番隊にした方がスムーズに行くだろう」

「なるほど、そりゃ名案だな。あいにくおれもサソリみてェな奴を援護していけるとは思えねェよ」


サッチも頷いて、他の隊長たちも特に否定する理由がないのだろう。いいんじゃねェの、という言葉が大方で終わったところでマルコが手を叩いて再び全員を静めた。


「それじゃ暁連中は新たに零番隊設立で、そこに所属してもらうことにするよい。隊長は長門だ。副隊長はどうする?」

「小南でいいか?」

「塵に等しい」

「いいそうだ」

「・・・・今のは了承か?」


ビスタがぽつりと呟いたが、マルコはとりあえず流すことにした。突っ込み始めると本当にキリがなくなってしまうので、特に暁の紅一点の毒舌に関してはあまり関与しない方が得策であることを彼は知っていた。


那由多たちはとくに不服はねェな?」

「ま、そのまんま暁丸ごとだしな。いいんじゃねェ?」

「それにおいらたちが口挟むことでもねェしな、うん」


かくして白ひげ海賊団に新たに設立された零番隊。彼らの名はすぐに世間に知れ渡ることになるのであった。









2010/12/03