フォン、と風を切る音が、朝の静かなはりつめた空気の中に響き渡った。まだ太陽が水平線からちょっとだけ顔を出しただけのこの時刻、白ひげ海賊団の誰もが眠りにつき、マストの上の見張りの小さなくしゃみが聞こえてくる。
那由多は手に持った槍を振った。そのたびに空気が流れ、張り詰めた音が響く。
特に誰が相手でもなかった。那由多の目の前に広がるのは人気のないモビーディック号の甲板で、彼一人が黙々と日が昇る前から幾十もの武器を取り出しては身体を動かしている。
「随分朝早いじゃねェかよい」
「おーマルコかー」
那由多が動きを止めることはない。忍の術と言うものは本来誰に知られてもいけないものなのだから、普通ならばマルコが甲板に現れた時点で那由多は動きを止めるべきなのだが、今、彼らが生きているのは決して忍の世界ではない。那由多が持つ幾つもの暗器をわざわざ隠す気にもならず、彼はもう一度仕込み槍を大きく振って流れるような動作で裾から棒手裏剣を取り出した。
彼の前に用意してあった的に、那由多は一本たりとも外すことなく手裏剣を当てる。半回転しながら飛ぶそれは綺麗に弧を描いて的に突き刺さっていて、それは傍から見ればひどく簡単そうなのだが実際は並大抵の努力であそこまでの命中率をたたき出すことなど不可能だ。
「そりゃなんだよい」
「風魔手裏剣・・・っておれは呼んでる」
那由多が大振りの手裏剣を投げると同時にバカッ、と的が真っ二つに割れてそこに刺さっていた棒手裏剣が全て抜け甲板に落ちる。大きく円を描きながら返ってきたその手裏剣はずれることなく那由多の手元に戻ってきた。
そしてようやく那由多は動きを止めた。
「見事なもんだ」
それらは全て一連の動作として完結していた。迷うこともずれることもないある種舞のようなもので、なるほどデイダラが時折那由多のことを完成した人間、だの芸術、だの称する理由がわかる気がする。マルコはてっきり過大評価だと思っていたのだが、いざ那由多の動きを見ると普段の少々おちゃらけた馬鹿な雰囲気からは到底想像できないほど動作がしっかりしているのだ。
「まーこんなことずっと続けてるかんなー。いい加減さすがに慣れるぜ」
「お前、いつごろから忍になったんだ?」
「いつってのもおかしいけどさ、多分五歳ごろ旦那に拾われてそっからはずっとこんなことやってるぜ。おれは里無しなんだけど普通の隠れ里では忍者の学校があるからそこ卒業すると一応忍者らしい」
「故郷がねェってことかよい」
「そ、よくある話だろ?戦争孤児って奴だ」
那由多の言葉に悲しそうな雰囲気は見られなかった。きっと彼は今の現状に充分満足しているのだろう。
「おれはそういう学校卒業しねェで必要なことは旦那とかデイダラとかリーダー・・・あ、暁の首領な、そいつらに学んだからどっから忍者してるかって言われても微妙だよなー。マルコはいつごろから海賊やってんの?」
「お前よりは随分後だ。そうだな・・・・悪魔の実食ってからだから十代半ばぐらいだったよい」
「へェ」
甲板に転がっていた棒手裏剣を全て拾い上げて真っ二つになった的を脇に抱えると那由多はようやく腰を上げた。
「あー!んにしてもさすがに身体が鈍ってんな!」
「あれでか?」
「あんなの単なる準備運動だって。本当はもっと動き回らないと勘が鈍っちまうんだよ」
「組み手でもやりゃァいいじゃねェか。デイダラでもサソリでも誘えばいいだろうよい」
「旦那のデイダラねェ・・・ちょっち無理だなーデイダラだとおれの相手になんねーし、旦那も接近戦超苦手だからさ、組み手しても意味ねェんだよなー」
「なんだい、サソリは接近戦がそんなにダメなのか?」
「おうすっげーぜ。ある意味天才だと思う」
傀儡師とは本来己の身を隠し遠隔操作で傀儡を戦場に送り込むために確かに接近戦は弱い。だが弱いだ強いだと比較する場合にはその比較対象というものが重要なのであり、確かにサソリは暁メンバーの中では最弱と言えるほど体術が弱点だった。だがそれを普通の里で比較すれば中忍、上忍レベルの体術程度であれば十分使えるし、実際それで切り抜けたことも何度かある。
そもそも体術、暗器を専門にする那由多がそのあたりを評するところがおかしいのだ。彼からすればマイト・ガイもまた弱いということになるだろうし、単純に体術だけを使わせればあの伝説の三忍とも充分に張り合えるだけの実力はある。ここまで書くと那由多がやたら強いように感じるが、彼の場合弱点は幻術で下忍レベルの幻術に引っかかるので体術とあわせると結局五分五分といったところだろう。
「ならおれと一戦やらねェかい」
「マルコと?別にいいぜ」
那由多はにやりと笑うと脇に抱えていた的をぽいと無造作に甲板に投げ捨てた。
「なんか条件つける?」
「それも悪くねェな。なら五分以内に先に一発入れたほうが勝ちってのでどうだい」
「いーなそれ」
二人はほぼ同時に甲板を蹴ってそしてちょうどど真ん中でぶつかった。那由多の拳とマルコの蹴りはものの見事に相殺され、一瞬のうちに二人は再び距離を取る。
「やっぱ脚力の方が強いよな、手がしびれてら」
「武器は使うか?」
「いんや、組み手でいいだろ」
相殺されたといってもさすがにマルコの蹴りの方が威力は強いのだ。まだぴりぴりとしびれている右手を軽く振って那由多は今度はしっかりと構えを取る。
「じゃ、次はもっとスピード上げるぜ」
「今のは本気じゃねェってか」
「もっちろん」
那由多はにやりと笑った。
その勝負は実際には五分とかからなかった。あの五分ルールはマルコとサッチが昔よく組み手をする際に設定したものだったのだが、那由多はマルコの予想を大きく上回って体術に長けていたのだ。
型があるのはわかるが、それだけに囚われない柔軟な動き。先を予測することなどできずマルコが三分以上避け続けられたのは身体に染み付いた反射が成すものだったと言えるかもしれない。
「よっ」
ピタッ、と那由多の拳がマルコの鼻先を掠めて止まった。
「参ったよい」
「どーだおれ、強いだろ?」
「ああ驚いた」
息がそう上がることはなかったが、それ以上に冷や汗が吹き出ていた。マルコの不死鳥の能力そのものはエースやジョズや白ひげのそれと違って攻撃に適したものではない。むしろ防御専門とも言えるその能力を持つが故に、マルコがいざ敵船での戦闘となると足技や体術を多用することになるのは必然であった。だからこそマルコの体術というものはかなりのものだったが、マルコよりも一回り近く年下の那由多はいとも容易く彼を越えて見せたのだ。
「ったく忍って奴は恐ろしいよい」
「そうかァ?でもおれ忍としては落ちこぼれだぜ」
「?・・・おれより体術強いくせにかい。そりゃおれを馬鹿にしてんのか」
「ちげーって。おれ体術しかできねーってこと。普通忍っつったら忍術・幻術が使える奴のことじゃん、体術ってのは本当に基礎の基礎だからこんなもん普通皆できるんだよ。忍として優秀っつったらやっぱチャクラコントロールが上手い奴のこと言うからさ、本当はおれよりデイダラとか旦那の方がずっと使えるって」
「・・・那由多はチャクラが使えねェのか」
「おれエースぶん殴れねェもん。たまに当たるけどチャクラ・・・ここじゃ覇気?のコントロール下手だから波があってさーロギアの能力者にはおれの体術通用しねーし。あ、デイダラと旦那は普通にエースに触れんぜ」
「なるほどな」
マルコは肩をすくめた。勿論彼の中に自分よりも年下に負けた、という屈辱感がないわけではなかったがそれ以上に、那由多に対する同情というものが少しあったのかもしれなかった。マルコは忍の世界を知る由もなかったが、それでも普通の忍なら使える術が使えないということがどれだけ彼を苦しめたのだろうか。普通ならできることができないということは他から排除される充分な理由になりえる。特にそれが子供であれば馬鹿にされることは当然だろうし、下手をすれば教師や親からも見離されかねない。勿論那由多の場合それら全てがそもそも存在しなかったのだからそういった屈辱はもしかしたらなかったのかもしれないが、少なくともサソリと共にいて葛藤はあったはずだ。
「完全にできねーってわけじゃねェんだけど、やっぱチャクラコントロール下手なんだよなー」
「そうかい。・・・そういやお前そんだけ体術できて一体誰と組み手なんかしてたんだい?まさか死ぬ前は一人で身体を動かしていたわけじゃねェだろい」
「ああ、例えば旦那の傀儡とか?動作確認もかねておれが相手してたりとかしてたけど、純粋に組み手出来る奴一人居たんだ」
「暁で?」
「そ、まだ死んでねェみてェだけど。一人は暁の首領な。つってもこの人ほっとんど暁のアジトに顔出さねーから組み手したことなんて二三度なんだけど、あともう一人おれの親友」
「お前と体術で張り合えるってかい」
「おう。つーか体術だけじゃねーな。忍術も半端ねーし、幻術なんておれらの世界じゃトップテンに数えられるって絶対」
「天才って奴か」
「あ、その言葉いいな。名門の出だし、まさしく天賦の才って奴?」
那由多がその親友と呼ぶ男に対し劣等感を抱いている様子はなかった。
「さてもうそろそろ朝飯だな」
「おー道理で腹が減るわけだ」
すでに太陽は完全に昇りきり、広大な海原の中ぽつんと浮かぶモビーディック号を静かに照らし出している。
「なァ知ってるか?」
那由多とマルコが朝早く甲板で組み手をした日からおよそ二週間近くたったある日のことだった。ちょうど食堂に居合わせたイゾウがエースと那由多とデイダラの隣に座ると一つ、面白い話を振ってきたのだ。
「ここいらの賞金稼ぎの話」
「ひょうひんはせひぃ?はんだよほれ」
エースがもごもごと口にモノをつめたまましゃべるものだからその内容が何を意味しているのかわからず、イゾウは思い切りエースの背を叩いて「口からモノを出してしゃべれ」といった。そんなことをすればどうなるか大方予想はついていたが、背中を叩かれると同時に口からモノを吹き出したエース、そしてそれをもろに被ったのは正面に座っていたデイダラである。
「きったねェェェ!!!!おいイゾウ!!てめェタイミングってもんを考えろようん!!」
激昂するデイダラを見て大爆笑していた那由多はそのまま椅子から転げ落ちた。ぶち切れたデイダラが那由多に向かって手に持っていたフォークを投げつけたが、あいにく那由多が顔を動かしたせいでそれは床板に深々と突き刺さっただけで終わる。
イゾウもまたそんなデイダラの姿に腹を抱えて笑い、ある種元凶ともいえるエースも机に突っ伏したまま笑っていた。
「くっそ、でなんだよその賞金稼ぎって、うん」
爆笑の渦に包まれながらデイダラは青い瞳を不機嫌そうにゆがめてイゾウに話を進めるように促す。
「ああわりぃわりぃ、でその賞金稼ぎの話な。名前は知らないがそいつが出てきたのはつい二、三週間ほど前らしい。おれらのところにまで一週間で情報が伝わってくるだけでどんなもんかは、まぁ大体予想はつくだろ?」
「そんなに強ェえのか?」
今度はきちんと飲み込んでからエースはしゃべったのだが、デイダラは懲りたのだろうか。エースの正面をさり気無く避けていた。
「噂じゃな。黒髪黒目の男で、相当な体術の使い手。能力者じゃねェらしいが奇妙な術を使うって話だ」
「へェ面白いな、うん。強い奴なら戦ってみてェ」
「言うと思ったぜ。でそいつがどうも近頃はここいらの海域を縄張りにしているらしくてな、海賊船を次から次へと渡り歩いてるって話だぜ。こりゃーおれらのとこにもくるんじゃねェか」
けたけたと笑うイゾウ本人もさすがにそこまでは信じてないのだろう。
白ひげ海賊団と言えば新世界の中でもかなりの規模の大海賊団だ。白ひげを筆頭に十六の隊に分けられた船員達、各隊の隊長といえばグランドライン前半の海でもよく知られているほど有名である。そんな大海賊団にまさかたった一人の賞金稼ぎが来るとは思ってもなかったし、事実今まで向かってきた奴は誰一人としていなかった。
「でも海賊船を渡り歩いてるってどうやって__」
「おいイゾウ!!ああお前らもいたのか!!さっさと来いよ!!面白いもんが見られるぜ!!」
エースが聞こうとしたとき、突然その四人の間に飛び込んできたのはサッチだった。彼はひどく興奮した様子で早口にまくし立てると半ば引きずるようにイゾウの襟首を付かんで甲板に向かってしまう。
「なんだ?」
「さーな。いいじゃん行ってみようぜ」
すでに甲板には相当数の船員が集まっていた。その中には白ひげの姿もあり、どうやらそれなりに大きな出来事のようだ。那由多とエースはデイダラの鳥に乗って人ごみの上に頭を出せば、遠くの方に一隻の海賊船が見えた。
「何やってんだあれ」
「んー・・・おっ戦ってるみてェだな」
「まじで?」
エースは目を凝らすがさすがに距離がありすぎた。デイダラも那由多ほど見えていないのだろう、右目を瞑って左目に取り付けた機械をかちゃかちゃといじっている。
「んーおっ本当だな」
「海賊船同士ってわけじゃなさそうだな。なァデイダラ、どんな奴?」
「何かがいるのはわかるんだが速過ぎるぜ、うん!こりゃ相当な実力者だな」
「ありゃおれらの知ってる体術だぜ。もしかして知り合いじゃね?」
「知り合いって・・・暁連中か?」
「かもしんねーし、もしくは死ぬ前の敵。おれらの体術って言っても基本はどこでもルーツが同じだから、忍五大国でも似たようなもんだし」
「なんか黒いな、うん。もしかしてさっきイゾウが言ってた賞金稼ぎじゃね?」
「かもなー」
そうこうしているうちに敵船ではついに決着がついたようだった。ドォン、とモビーディック号にまで響く派手な爆発音と共に海賊船はあっという間に海に沈んでいく。
「・・・・生きてんのか?」
エースの疑問も最もだった。ここは海の上、彼が能力者だかなんだか知らないが、自分も巻き込んであれだけの爆発を起こすとなると無傷ではいられないだろう。仲間割れというわけではなさそうだし、まさか死に場所を探している線もなさそうだ。
やがて船は完全に沈み、海は再び静けさを取り戻した。甲板で様子を見ていた船員達もざわざわと先ほどの爆発について話しており、やはりそれなりの動揺と言うものがあったことを思わせる。
だが、隊長達は違った。白ひげも含め彼らは後ろで騒がしい船員の言動になど耳も貸さず、先ほど沈んだばかりのその地点をじっと見つめている。
「!・・・おい那由多!」
「ああ来るぞ!!マルコ!!足場をよこせ!!」
那由多がデイダラの鳥を蹴って飛び出したのと猛烈な勢いで何かが飛んできたのはほぼ同時だった。
キィィンという高い金属と金属がぶつかり合う音がしたときにはすでに那由多の手にはクナイが握られており、もう一方の手は腰に差した刀を握っている。
(右、左、前、後ろ・・・ってことは)
「那由多!上だ!うん!!」
黒い何かが太陽の光を遮って、那由多に一直線に向かう。那由多は腰の刀を抜かずあろうことかクナイまで仕舞うと、その侵入者に体術で応じて見せたのだった。
「よう・・・久しぶりだなイタチ!!!」
「何故貴様がここにいる」
那由多の蹴りとイタチと呼ばれた侵入者の拳がぶつかり合った一瞬、二人は動きを止めた。だが次の瞬間には姿を消して二三度にわたる猛烈な攻防を見せ、そしてようやく距離をとって落ち着く。
「黒髪、黒目・・・なるほどお前が賞金稼ぎか。おっどろいた、那由多、お前らの知り合いか?」
「別に賞金稼ぎをしたつもりはない。それにあいつらの知り合いかと問われればそうだ」
那由多に対して投げかけられた問いに答えたのはその侵入者だった。
黒い髪は後ろで一つにしばり、その髪と同じほど黒い漆黒の瞳が輝いている。顔に入った皺のせいで歳がわかりにくいが、恐らくのところ那由多やデイダラと同じくらいであろう。といってもサソリのような前例もいるので見た目だけで年齢は決めがたい。
「久しぶりだなイタチ」
「・・・サソリか・・・・このメンバーということはここは死後の世界か」
「その冷静さが怖いな!!うん!!別に死後の世界ってわけじゃねェと思うぜ」
うちはイタチはぐるりと三人の顔を見回してからぽつりと呟いた。得体の知れない世界に来てしまったというのにその表情には欠片の焦りもなく、エースは結構歳がいっているかもしれないと思う。
「・・・別にこれ以上戦う意思はない。さすがにサソリと那由多と・・・・・・ダラとこれだけの人数を相手にしては勝ち目がない」
「ちょっと待てイタチ!!お前おいらの名前忘れただろ!!うん!!」
「忘れていない。その鳥の巣は見覚えがある」
「くたばれ、喝!!」
鳥の巣とはデイダラの頭を見てそういったのだろう。ぶふぅっと噴出した那由多とエースを尻目にデイダラは手のひらの口から小型爆弾を取り出すと手裏剣に乗せてイタチに投げつけた。
「騒がしいなバカダラ。おれに戦う意思はないといっただろう」
「バカダラじゃねェよ!」
空中で手裏剣がぶつかり合った。片方はデイダラの起爆粘土を背負い、もう一つは雷を背負ったそれらは空中で激しく激突すると結局爆破が起こらずにお互いの足元(デイダラのそれは那由多の足元に返ってきた)に戻ってくる。
「サソリ、お前らの仲間なのか」
「ああ?あー・・・いや出身は敵同士だが・・・別に仲間ってほど仲良くもねェ・・・が、同じ組織に属していたことは確かだ。ああ那由多が仲がいい」
「そうか」
白ひげの言葉に曖昧に答えたサソリ。本人も仲間という言葉が自分達に当てはまるのか実際のところよくわからないのだろう。特にこうして白ひげ海賊団に身を置けばなおさらその事が身に染みる。背を合わせて戦ったこともあるし一つ屋根の下でしばしの間生活していたことも事実だ。だがそれだけで本当に仲間と呼んでいい間柄なのか、と問われればはいそうです、と答えるわけにはいかなかった。
唯一仲間だ、親友だ、と胸を張ってイタチのことを紹介できるのは精々リーダーや那由多ぐらいのものだ。リーダーは自分の作った組織に、例えその構成員がなかなか手ごわいS級犯罪者だとしても誇りを持っているらしく子とあるごとに仲間だなんだとほざいていたし、それは那由多も同じだった。彼の場合は幼い頃からずっと暁に所属しているためという理由が大きそうだが、少なくとも二人とも暁と言う組織が好きであることには変わりがない。
「へー・・・じゃお前おれと同い年ぐらいか。老けてるな」
「エース、お前それ言っちゃダメだぜ。イタチの奴すんげー気にしてるんだから」
「その程度気になどするものか」
「の割りにその握りこぶしはなんだ、うん」
「アホダラめ」
「デイダラだっつーの!!!」
白ひげ海賊団の中でも若年層はすでにイタチと打ち解けていた。すぐに笑顔を浮かべる那由多やエースとは対照的に淡々としていて表情もあまり変わらない男だったが、そこから冷たさというものはあまり感じられなかった。その理由はおいおい知っていくことになるわけだが、今はおいておくことにしよう。
「親父親父!!イタチの奴も行く場所ねーんだけど、船に乗せてもらっちゃダメか?」
「那由多、お前の友人を断る理由がどこにある。いいぜ乗れ!!グララララ!!」
「・・・・それはありがたいが、ここまで得体の知れない人間をそう簡単にふとろこに入れていいのか」
「それだけの度胸がねェとこの海なんざ渡っていけねェことはイタチ、お前にもすぐにわかる。それにお前の素性は那由多の友人だけで十分だろう」
「・・・そうか」
白ひげの言葉にイタチは少なからず驚いたようだった。忍と言うものは得てしてそういうものだ。人を疑いそして人に疑われることばかりに慣れているものだから、こうして全てを丸ごと受け止めてくれる人間というものがあまりに眩しくてイタチもまた思わず少しだけ笑った。
「世話になるな」
「あ、イタチの奴照れてらァ」
「どこかだよい」
那由多の言葉にマルコは思わず突っ込んだ。
2010/11/27