人の踏み入らぬ山中、忍ですらわざわざ踏み入ることをしない森の奥深く。ここはどの里からも離れており、それゆえに戦時中もほとんど荒らされることのなかった小さな村である。他里の忍や人との接触が極端に少なかったため、血が濃くなり一人また一人と亡くなっていき、最後までこの村の人間のことを誰一人知ることなく静かな終わりを迎えた場所だ。そこには今、新たな住人がいる。
ほとんど朽ちた建物の一つ、その地下に作られた新たな居住地、そこに潜むのは暁に所属する赤砂のサソリとデイダラ、そして彼らの部下たちである。部下といってもつい最近岩隠れの里を抜け単身暁に所属することとなったデイダラに部下はいない。そのほとんどは砂の里にいた頃からサソリを信奉するものたち、もしくはサソリが里抜けし暁に所属してからサソリの部下となったものたちである。言ってしまえばデイダラはよく知らない連中だ。そのサソリの部下の中でも長いこと彼に従っているのが那由多であった。今年でいくつになるのかはデイダラもよく知らないが、あまり歳は離れていない。十年かそれ以上の間サソリとともにいる、という話をサソリの部下から聞いたことがあるだけで、彼がサソリの信奉者であるのかそれとも単なる部下に過ぎないのか、デイダラには判断がつかなかった。
故に今、目の前で行われている戦闘を客観的に眺めていられるわけだが。
(那由多は体術が基本か__話には聞いていたが相当な腕だな・・・うん。忍術幻術は使えないって話だが、旦那の部下に聞いた話だしなぁ)
地下と地上がまとめて戦場になってしまったため、仕方なく起爆粘土で作った鳥で樹冠ぎりぎりを飛んでいるデイダラは、的をはずした飛び道具が飛んでくるのを避ける以外はそれ以上高度を上げようとはしなかった。
(旦那の戦い方も知っておくついでだ、うん!那由多がどう動くかも見ておかねぇとな!!)
くしゃり、とデイダラの手の中で一枚の紙が握りつぶされた。
* * *
「けっ!!旦那ぁ!!ひよったか!?」
正面の傀儡から飛び出した飛び道具を刀一本で全て叩き落し、その上首・両手両足の間接の五箇所を貫いた刀はキィンと最後の間接に仕込まれたクナイによって折られた。那由多は手の中で折れた刀に執着しない。折れた刃の先端は指先で掴んで後方へ、柄と残った刃で正面から来る次の傀儡の刀を受け止めて体をよじる。頭の上すれすれにサソリの毒がたっぷりと塗りこまれた刀がかすめたが、それに臆することなく先端のなくなった刀を傀儡の首に当てて切り落とす。それでも傀儡の動きは止まらない。そも今地上にいるのはサソリが操っている傀儡しかいない。本体はいまだ地下、傀儡の目を通して今地上にある全ての傀儡を操っているのである。さすがに己の目で確認していないためか、サソリが普段使うほど傀儡の数は多くない。だが代わりにそれぞれが確実に敵を仕留めるために毒と刃が磨かれた傀儡だ。気を抜けば、死ぬ。
那由多はそんなこと微塵も恐れてなどいないとばかりに次の刀を抜き、傀儡の懐に踏み込む。本来ならどこに仕込があるかわからない傀儡の懐に踏み込むなど無謀でしかないが、那由多に限ってはそう恐れるほどのことではない。例え眼前に迫ったとしても、それを確認してから動いてなお余裕がある。それが那由多がサソリに仕込まれた体術であり、暁においてもイタチをしのぐ手裏剣術を使える肉体だ。その反射速度は那由多を育てたサソリですら見切れぬものとなった今、サソリは那由多を仕留め損ねてこうして地上戦を展開している。
(そうだ、那由多は木ノ葉のスパイだった・・・って話だよな、うん。旦那が那由多を拾った時にはすでに木ノ葉の里の連中に仕込まれていたって話だが、それが本当だとしたらここで片付けなきゃ暁内の旦那の面子に関わるってことか・・・うん)
ほとんど土煙すら巻き上げず、むしろサソリの攻撃が過激になっていく一方で、那由多は圧倒的に静けさを保っていた。踏み出す足の一歩、攻める手の一手、全て淀みなく確実に傀儡を潰しそして次の攻撃へとつなげていく。傀儡の攻撃は激しさを増すばかり。那由多は勝るとも劣らずの展開を見せているが、里の忍から逃げ続けているデイダラからすればそれは悪手だ。那由多が木ノ葉の忍であるならば、まず誰にも、サソリにすらばれずにこの場所を逃げ出し情報を確実に木ノ葉へ持ち出すことが最優先であり、サソリと戦うことは優先事項ではない、はずなのだが、任期を満了した那由多のことを泳がせていたのはサソリだという話だ。これらも全て彼の部下から聞いた話なのだが、元々那由多が逃げ出すだろうことをサソリは把握していたらしい。それゆえに部下に布陣を引かせ、逃げ出す那由多を罠に追い込む算段をつけていた。それを手伝えといわれた時にはそんな私闘勝手にやれ、という気分であったデイダラだが、外へ出る刹那那由多から渡された一枚の紙を見て気を変えたのである。紙には一言、サソリの文字で「那由多を追え」とあった。合点がいったのはその直後、サソリが大掛かりな傀儡で那由多を仕留めにかかったときだ。
(まったく面倒だが確実な方法だぜ、うん。サソリの部下の誰に聞いてもよく素性の知れない那由多の存在、多かれ少なかれ旦那の部下は那由多という存在を疑っていたはずだ、そこへこの騒動、あぶりだされるのは)
那由多だけではない。この戦闘はサソリの部下のほとんどが認識しているはずだ。この戦闘は那由多というわかりやすい存在を使って更に潜んでいる他のスパイをあぶりだそうとしている。那由多もまたそれを理解しているはずだ。自分が露骨に戦闘を繰り広げれば、それに付き従う者が出てくると。それは同じ里の者に限った話ではない。いったんサソリの懐に入ってしまえばそこから抜け出すのは困難な状況に身をおいているスパイは、デイダラの予想では少なからずいるはずであった。何せサソリは手広く情報を集めるために部下を持っている。だが忍なら当然、そのサソリの部下にスパイを紛れ込ませることを考えるはずだ。そもそもそれが本来の忍というもので、忍術幻術の発展により、大規模な国家間の戦争の道具になったのは本来の忍ぶ術が発展した結果であるといっていいだろう。デイダラの術に顕著であるように、現在の忍者は忍だけでなく、高い戦闘力を必要とされるのだ。
デイダラは低空飛行からそのまま樹冠に入りそっと気配を消す。この大騒ぎの最中、デイダラがどこかへ消えてもそう目立たない。元々デイダラは暁に所属はすれどまだ日が浅く、サソリほど彼を信頼している者はいない。そう面白いことにサソリはまだ暁に所属して日が浅いデイダラのことをよく信頼しているようだった。口には出さないし芸術のあり方の違いも極端で顔を合わせると毎回口喧嘩になるのだが、実のところデイダラもサソリのことを信頼している。信頼とはすなわち過去の実績を見た上でその未来に期待をかけること。お互い絶対に口にはしないが、お互いの芸術に関しては信頼を置いている。それがまだ短い付き合いながらもデイダラとサソリの関係だ。そしてそのサソリの配下にいるのが那由多。デイダラはサソリが信頼に足るというのなら程度の感覚だったわけだが、それも今回の騒動でサソリの部下に関するおおよその情報は得られた。
(さてこれでどんだけあぶりだせるかな・・・うん!)
いまだ建っていた建物を軒並み潰して戦闘を続ける那由多とサソリ、そしてそれをじっと観察しているサソリの部下たちにあまり大きな動きはない。しいて言うならばそろそろサソリが焦れてきたといったところか。那由多が潰した家屋の一つに影が見えたのをデイダラは見逃さなかった。
(サソリの旦那もそろそろ本気で那由多を潰しにかかってきたな、うん。那由多の体術はたいしたもんだがそれでも長引かせすぎだ)
那由多は相変わらず、相当の数の傀儡に囲まれ同時に攻撃を受けても受け流している。だがそれでも動きは徐々に鈍くなっている。それだけ長く戦っているのだ。それだけ長らくサソリの攻撃を受け流したのだ。その素質はたいしたものだが、引き際というものを那由多は誤った。
懐から出せる武器はあらかた出し切った那由多は敵の放つクナイを、刀を武器に次から次へと攻撃を捌いていく。今までの経験から那由多がサソリの傀儡の動きをおおよそ予測できるように、サソリもまた那由多の動きをおおよそ予測できる。現実は予測だけではどうしようもないわけで、すでに形勢は傾き始めていた。
そもそもこの戦闘は那由多が圧倒的に不利なのだ、いや那由多以外でもサソリを相手に一対一は不利だろう。デイダラも短い付き合いだが、サソリを殺すとなったら正面からなど絶対に挑まない。念入りに罠に仕掛けるか、それとも手数を揃えるか、そのどちらかだ。それほどに赤砂のサソリという人物は優秀な存在なのだ。デイダラとて自分の忍術に覚えがないわけではないが、それでも年の功もある、イタチのような眼もない、強いて言えば空中戦が有利だが、サソリとは相性が良いとは言い切れない。
(オイラなら山一つ丸ごと道連れ、だな、うん!)
何事も派手なのがいい、とデイダラは思いながらサソリと那由多の動向を見守る。それと同時に動き出した者たちの動きも、だ。那由多の動きは明らかに鈍ってきており、これ以上長くはもたないことは簡単に見て取れた。最初は避けることが出来たクナイが頬をかすめ、そこから連続して回避にミスがでる。そうして傷が多くなれば自然と足も鈍る。まずは左腕、背後からの攻撃に目は追いついても体が追いつかなくなってきている。それほどまでに長い間那由多はサソリの傀儡を相手にし、サソリもまた辛抱強く追い込んでいる。すでに関節を壊されたことで部品のみが動かせる状態の傀儡が二十数体、一部破壊により完全に駆動しない傀儡が十数体、そしてまだ動くものが___
「ぐっ・・・!!」
傀儡の刀が那由多の腹部を貫通した。それとほぼ同時に奪ったクナイで傀儡の首を落としているのは感嘆に値する。那由多は刀を引き抜かない。引き抜く時間のロスと出血を恐れての行動だろう、それはおおむね正しく、次の攻撃は確かに那由多の首を落とさんとすべく軌道を描き、那由多は腹部の刀をそのままにすることでかろうじてそれを回避した、それでもざっくりと切った額からは血があふれ、止血しないと片目はもう開けていられないだろう。
そこでようやっと那由多は逃げに転じた。今の今までどの傀儡にも背を向けることなく反射と勘で立ち回っていた那由多は、腹部の刀を抜くことなく首を落とされかけ背後へ飛んだ勢いのまま、藪の中へ飛び込んだ。一瞬傀儡の動きが止まる。その一瞬で那由多はどうやら刀を抜いたらしく、たっぷりと那由多の血で濡れた刀が傀儡の目に刺さって動きを止める。傀儡は同時に藪に入ったがすでに那由多が移動していることをデイダラは知っている。
(うんうん!!そこにはオイラの起爆粘土が仕掛けてあるんだな!)
デイダラの位置からならば藪に飛び込んだ那由多を視認することは十分に可能であった。那由多が藪に飛び込み腹部の刀を抜く、そこから投擲、そして背を向けて一気に木々の中を走り出す那由多の肩にはすでに方々に仕込んであったデイダラの起爆粘土の蜘蛛がぴったりと張り付いていた。これでおおよその位置は蜘蛛につけた細い糸でわかる。那由多は起爆粘土の存在には気が付いていないから、最悪首の後ろで爆破すれば那由多は死ぬ。木ノ葉のスパイである那由多を殺すのならばそれで十分だが、今回は那由多を追うことがデイダラの任務だ。そしてそれによってあぶりだされる裏切り者の存在。デイダラの手の中で動いた糸は那由多だけのものではない。
蜘蛛の糸をたどりながら、他の気配に察知されないように細心の注意を払って追いかける。那由多は怪我もあってかそう早くは動けない、しかしその後を追う傀儡は木々にさえぎられ徐々に那由多の姿を見失ったのか一つ、また一つと脱落し、ついには那由多を追いかけるのはデイダラと三人の気配のみとなった。サソリの傀儡は砂漠のように開けた場所での戦闘に適している。こういった山奥でのゲリラ戦が苦手なわけではないだろうが、それはどちらかといえばデイダラの得意分野だ。木々にさえぎられれば起爆粘土は圧倒的に視認しづらくなる。足元の木の葉に、樹冠の枝葉に、起爆粘土を隠す場所はいくらでもある。
那由多は腹部からの出血、さらには額からの大量の出血で徐々に足取りが遅くなっていた。那由多を追う三つの気配はデイダラに気づいていないようで、着実に那由多に迫っている。那由多が足を止めた、振り返ると同時に拾った枝が追っ手の額を掠める。
「待て!!」
声をかけたのは追っ手の一人であった。思わぬ言葉に那由多は動きを止め、同時にほぼ限界であったのだろう、その場にしりもちをついて倒れこんだ。フゥー、フゥーと手負いの獣のように目前に立つ三人を睨みつけていた那由多だが、追っ手の行動は意外なものであった。
「待て、落ち着け那由多。俺たちはお前の敵じゃない。話をする前に腹部の出血を抑えよう、でなければ死んでしまう」
追っ手は名乗りはしないものの、懐から傷の付いていない額宛を取り出して那由多に見せる。那由多はそれを見て少し驚いたように目を細め、それから追っ手の一人が近づくことを許した。
「医療忍術は専門じゃないが、止血ぐらいならなんとかなる。俺たちは確かに霧隠れの里の忍で木ノ葉の忍じゃあない。だが同じスパイとして、サソリの下から逃げ出し本国へ情報を持ち帰るのには共闘するのがいいと踏んだ。お前も随分長いことサソリの下でスパイをしていたのだろう?」
同じスパイ活動をしていたとはいえ、五大国の忍同士がこうも簡単に手の内をさらすはずがない。これは那由多の追っ手・・・・こちらもスパイだったわけだが、霧隠れの忍三人の方が圧倒的有利に立つ故に成り立つ関係だ。サソリからひいては暁から情報を持って逃げるという目的が同じであること、そしておそらく自分たちよりも多くの情報を持っている那由多からさらなる情報を引き出すこと、主に後者を狙って三人は那由多に近づいたのだろう。那由多はそれを知ってか知らないでか、静かに一人の治療を受けている。現時点ではこの三人には那由多を殺そうという明確な殺意はない。むしろサソリの配下から抜け出すという困難な現状を打破してくれてありがたいといった少しの安堵が見え隠れしていた。
「・・・・・あんたら霧隠れの里って言ったか・・・・サソリの下についてそう長くはなかったな」
「ああ、お前と比べればな。だが必要な情報は揃った。しかし一つ聞かせてくれ、お前はかなりサソリに従順であるように見えたが、なぜ突然謀反を起こした?」
霧隠れの忍はそこで初めて那由多の行動へ疑問と疑いの色を見せた。ぴりっとした殺気が空気ににじむ、だが那由多は顔一つ揺らがない。
「そういう洗脳だった、いや幻術か?俺は忍術も幻術も使えないのは知っているだろう」
那由多は一言そう言った。
「俺もはっきりとしたことはわからない。だが俺は今の今まで確かにサソリが俺を拾ってくれた恩人だと思っていたさ。事実謀反の気なんて欠片もなかったけどよ、明確に自分がここへ送り込まれたって意識を持ったのはここ数日のことだし、今の戦闘ではっきり目が覚めた感覚だ」
那由多は時折痛みに呻きながらも、さすがに霧隠れ三人の相手をする気もないのが、ゆっくりと、腹が痛まないように、だが確かに答えていく。
「忍術も幻術も出来ない俺を拾ってくれたのはサソリじゃない木ノ葉の連中だ。俺はあいつらに幻術をかけられた状態でサソリの部下になること、そして十数年後幻術が途切れた際木ノ葉に戻ることを約束していたことを今思い出した・・・・ってところだな」
那由多の答えに霧隠れの三人は顔を見合わせ頷く。那由多は話を続ける。
「正直今となっちゃサソリの世話になった時間の方が長いが、それでもサソリは木ノ葉の敵だ。お前ら俺に近づいたってことは情報が欲しいんだろ。情報をくれてやる、その代わりに俺のことも見逃せ。もし俺のことは見逃せないっつーなら」
霧隠れの忍の治療を受け入れていた那由多の瞳に再び力が宿る。
「その時はここでもう一度殺し合いだ」
「・・・それは好ましくないな」
「だろう?サソリも諦めたわけじゃない。すぐに体制を整えて追ってくる。今回のはほぼサソリの私闘だからな。デイダラは関わって来ないと思うが、サソリが声をかけたときにどう反応するか俺はわからねー。今は時間が惜しいだろ」
「・・・・那由多の言うとおりだ。いいだろう。本来ならここでお前を殺しておくのが筋だが、サソリから逃げるという目的を達成できること、そして俺たちが費やした時間以上の情報を得られることは俺たちにとって悪い話ではない」
霧隠れの三人は那由多の言葉に納得し、そして何事か決めたようだった。それは口だけの約束かもしれないことは那由多にもよくわかっているだろう。今の段階では那由多はほとんど何も出来ない。それに対して、少なからず実力を備えた忍が三人では那由多には圧倒的に不利だ。この状態でそもそも霧隠れの里の忍びが、同盟国とはいえわざわざ木ノ葉の忍を逃す必要がない。だがそれでも今逆らって殺されるより、少しでも可能性は残すべきだ。これはお互いの利益のためのかけ引きだ。
「お前らどこまで押さえた?俺は知っての通り暁の内情に関してはほぼ精通してる。だが時間がない。そっちがどれくらい情報を持っていて何を聞きたいのか、そっちから話してくれ。俺が答える。そっちの方が効率的だろう」
那由多の提案は、もし、サソリからの追っ手が迫っている可能性があるこの状況下でなければ、違和感を感じるほどにスムーズなものだろう。
(那由多のやつ馬鹿か)
その通り。那由多は馬鹿である。かけ引きも別に上手くない。これでは時間稼ぎにほとんどならないことに気づいていない、が霧隠れの忍たちも焦っていることが現状を那由多の思う方向へ転じさせた。
「・・・それがお互いにとって得策だろう。よし、まず俺たちは暁のおおよその構成員、目的は把握している。今までの任務の傾向からだ。だが構成員全員を知っているわけではない。また全ての拠点も押さえていない。サソリは俺たちには伝えなかったが、他にも拠点を持っているだろう?まずは全ての拠点、できればのこりの構成員のもそうだ、それらを全て抑えたい」
「わかった。メンバーは誰を知っている?」
「正式な構成員としては砂隠れよりサソリ、岩隠れデイダラ、元は木ノ葉の大蛇丸とサソリが組んでいたが大蛇丸が脱退、木ノ葉のうちはイタチが所属しているのは知っている。それから霧隠れからは干柿鬼鮫、こいつが今イタチと組んでいる・・・・この程度だ。イタチとは一度接触があったから知っているが、他に滝隠れから一人湯隠れから一人までは把握しているが、確かな情報筋ではない」
「そうか、短い期間の割りには抑えてるな。そうだな滝隠れからは角都、湯隠れからは飛段ってやつが入ってる。角都はサソリと同じがそれ以上に長いこと所属しているな。飛段は最近入ったやつだ。俺もほとんど接触がない。それからリーダー、ペインと名乗ってるな。ペインとそれから小南。この二人は同里出身ということまでは知っているがどこの里出身かはわからない。それからゼツ、これも出身里不明。俺も立場はサソリの部下だから、リーダーとは接点がほとんどない」
「なるほど、こちらの情報とも食い違いはない。拠点はわかるか」
「サソリの拠点なら全部知っている。地図出せ」
那由多の言葉に控えていた一人が地図を出す。
「俺は地図も読めないし地名もわからない。おおよその位置だけだ。いいな、まずは今いるここ、それから木ノ葉からそう遠くないところに洞窟拠点が一つある。これはイタチと鬼鮫も使っている。ただ里に近い分結界が厳重だ。木ノ葉から俺たちの足でおよそ三日__」
那由多はそんな風に、非常に曖昧な表現で拠点の場所を示していく。だがおおよその位置がわかるだけでも十分だ。常に拠点には人がいるとは限らない。暁のメンバーが滞在していない拠点から順に潰していくだけでも、情報を得同時に暁の足を鈍らせるにはこれ以上ない情報だ。もとより那由多を追ってきた三人も那由多が文字を書けないことを知っているのか、那由多の言葉にさほど疑問も思わずに示された場所を頭に叩き込んでいく。
「____よし十分だ。もうこれ以上は時間がないな・・・・」
「その通り・・・だ・・?」
立ち上がろうとした那由多の足の甲に刺さったのはクナイだ。那由多が落としたわけでは、当然ない。
「悪いな那由多。お前との約束は守れない。だがお前が今まで集めた情報は必ず役に立つ。霧隠れの代表として礼を言おう」
「・・・チッ、そうなるとは思ってたけどよー、随分ひでーじゃねーの」
「それが忍というものだ」
「そーかいそりゃ残念だ」
ボンッ
那由多が憎憎しげに口元をゆがめ、同時に頭を伏せた、この意味を霧隠れの里の忍はもう二度と理解することはないだろう。彼らのちょうど首の真後ろに張り付いた起爆粘土、ソレはデイダラの合図とともに爆発し、暁のスパイであった霧隠れの忍三人の首を吹き飛ばした。吹き出る血の雨、那由多は逃げられないようにと足の甲に打ち込まれたクナイを引き抜いて呻き声を上げる。それから自分ではない血をたっぷりあびて不機嫌そうにがさりと揺れた藪を見た。そこから出てきたのはデイダラだ。結ってない金髪を揺らしながら片手に起爆粘土を持ちもう片手では手のひらで何かを練りこんでいる。
「渇!!!ってな!うん!!随分な役回りだな那由多!」
「なー、最後の足って俺のやられ損じゃねーの?もっと早く爆発できただろ」
那由多の明らかに不機嫌な声にデイダラは笑って適当に受け流す。
「出来たけど旦那からどこまで情報を持っているか全部引き出せって言われてたからな、うん!うん!これがベストタイミングってやつだろ」
はぁー、とため息をついた那由多は一応止血された腹部を押さえながら仰向けに横たわる。
「旦那も思い切りやりすぎ!そりゃ最近あんなに一斉に傀儡出してなかったから動作確認したいってのはわかるけどさー」
俺めちゃくちゃ痛いんだけど?と笑う那由多にデイダラもけらけらと笑う。
「ま、これで旦那は晴れてスパイの動向をゲットし、那由多はちょっと演技をすることを覚えました、ってやつだな、うん。でも那由多、最後のはちょっと焦りすぎだぜ。あれじゃあこっちの目的が即バレて那由多ごとC4で吹っ飛ばさなきゃならないハメになるところだったな、うん!」
「いや普通に頭部で爆発すりゃいいじゃん・・・・」
なんで失敗したら普通に俺を巻き込むこと前提なんだよ・・・・・と言えば「そっちの方が派手だろ?」と意味のわからない理屈が帰ってくる。今更理由も理屈もこだわるつもりもないが、そうまっすぐ言われてしまうとそれ以上抵抗する気力もなくなるので那由多はそれ以上デイダラと会話をするのをやめた。
「そうだ、うん。オイラもう帰るけど那由多はどうする?」
「どうするって、置いてく気だったのか!?」
「うん、まぁ普通置いていくな」
「普通連れて帰れよ」
那由多とデイダラは顔を見合わせてしばらく、これじゃあ拉致があかないと諦めたのたのは那由多の方だった。
「乗る、乗るから乗って帰らせて」
「いいぜ、でもその前にこの死体どうにかしなきゃな・・・うん」
「なんか口寄せできねーの」
「お前口寄せの術なんだと思ってるんだ?うん?」
「なんか便利な動物呼び出すやつ」
「ありゃ契約だぞ、うん!」
へーと興味なさげに相槌を打つのは那由多がそもそも忍術が使えないからだ。サソリに拾われてからこの方、体術のみに専念してきた。忍術も幻術も使えずとも忍と戦えるように、故に使えない忍術に関してさほどの興味はない。
「とりあえず穴掘って埋めておくか・・・・こんな山奥じゃ誰もこねぇだろうけど」
「すーぐ野犬に荒らされるんだからほっといてもいーんじゃねーの」
「ま、それもそうだけど、念には念を入れておくんだようん。那由多も手伝え」
「ふざけんなどてっぱらに穴空いてる人間に手伝わせるかよ鬼畜か」
深い山奥、人が来るよりも早く、この山の動物たちに死体は荒らされて終わるだろう。サソリも首無し死体に興味はないし、この死体を傀儡にしたいとも言わないだろう。身元のわかるもの、それから所持している物品だけを漁り、やっぱり爆破するか!というデイダラの大雑把な指示の元、適当に配置されたC4は霧隠れの忍たちの体を木っ端微塵に吹き飛ばした。デイダラの飛行型起爆粘土の上からそれを眺めて小さなクレーターが出来たのを確認してから、ひょいと拠点に戻る。そこではすでにサソリの部下たちが先ほどまでの戦闘をまるで何もなかったかのように偽装していた。
「旦那ぁ!!帰ったぜ!うん!」
「遅かったな」
「あいつらちょっと慎重だったからな、那由多の体にもう一個穴が空くの待ってたんだ、うん」
「あっ!てめー、やっぱ待ってたんじゃねーかコノヤロウ」
力の入ってない那由多の拳をさらっと避けて、そのまま地面に叩き付けたデイダラは、先ほどの一連の戦闘で入り口が完全に破壊され意味を成さなくなったアジトを見ながら「引越しかい?」とサソリに尋ねる。
「ああ、ここは捨てる。今回あぶりだされたのはどこの連中だった」
サソリの言葉に地面に倒れたままの那由多が「霧」と答える。
「そうか」
サソリは那由多を一瞥し、荷物を抱えてデイダラを促す。
「って結局オイラの鳥かよ、うん!あれだってチャクラ結構消費するんだからな!」
「早くていい。まぁ今回は人通りが多少あるところに降りるから途中までだ」
「ちぇっ、この間ようやっとオイラの工房にしたのに、おーい那由多、いくぜ」
「待て、待って、マジで腹が痛い」
「置いてくぜ、うん」
非常なデイダラの一言に、那由多は全身痛む体を引きずってなんとかデイダラの鳥に乗り込む。
「まったく、面倒な騒動だったな、うん」
2017.06.27