06.
アジトではすでにクロロを初めとするメンバーが揃っていた。その全員が、ひどい悪臭を引き連れて戻ってきたシャルナークとレイジーの方を見る。


「ちょっと、なんだい、それ」


マチがひどく怪訝そうな表情でシャルナークの持つぬいぐるみを指差した。シャルナークがマチの問いに答えずに、これ直してくれない?と言えばマチはさらに表情を険しくする。


「いいから。クロロ、ビリー=パペットを見せてあげるよ。それならいいだろ」

「後で説明は聞かせてもらうがな」


クロロはほんの少しだけ笑って言った。彼も何か聞きたいことがあったようだが、シャルナークの言葉で納得したようだった。
マチがビリー=パペットを直すのにそう時間はかからなかった。必要な布地は、とマチが問えばレイジーはそこらに落ちていた薄汚い布を手渡す。これでいいのかと言えば良いのだと答えた。左右揃うように腕をつけて、取れかけたボタンの目玉は元の位置に戻して、残念ながら耳をもう一度元に戻すほど布地が足りなくて、結局耳は半ばで切れたような不恰好なビリー=パペットが出来上がった。
中身の綿はたっぷりと血を吸っている。その臭いも当然だが、ぬいぐるみにしては気味の悪い重さをするビリー=パペットをレイジーに手渡すと、彼女はそれはとても嬉しそうに笑ってありがとう、と言った。


レイジー、ごめんね」


シャルナークはそう言って、レイジーの首元に彼のアンテナを刺す。そしていくつか携帯を操作すると、彼女はシャルナークの膝の上でこてんと寝てしまったのである。


「シャル、それは」

「寝てるだけ。それよりちょっと気をつけて」


多分、シャルナークがわざわざ声をかけるほどのことでもなかったのだ。クロロはシャルナークが言葉を言い終わる前には、その場を離れていた。そして右手にスキルハンターを構えて、ほんのつい先ほどまで座っていた場所を凝視する。そこには、明らかな殺意を持って鉈を振り下ろしたビリー=パペットが居た。


「逃げたぞっ!逃げたぞっ!!何故逃げた!?」


ビリー=パペットはやはり跳ね回って跳ね回って、鉈を振り回した。


「お前は臓物だ!お前は臓物だ!!お前は臓物だ!!お前は・・・・臓物じゃない!!ビリー=パペットはお前を殺さない!!」


ビリー=パペットは周囲にいる人間を一人ずつ鉈で指し示しながら物騒なことを叫ぶ。だがその鉈と視線がシャルナークのところにきたところで、ビリー=パペットは言葉を変えたのである。


「お前はLazy Girlが気に入った!!どうする!!お前が言うならここの連中を殺してやるぞ!」

「殺さないで、って言ったら殺さないでくれるわけ?」


ビリー=パペットは明らかにしゅんとした様子で跳ね回るのをやめる。


「オレはLazy Girlの衝動の塊。殺さなきゃいけない。殺したい」

「でもダメ」

「なら、仕方ない」


ビリー=パペットはそう言ってその場に突っ立ったまま大人しくなったのである。先ほどまで跳ね回っていたのが嘘のように。黙って、何もしなくなった。


「クロロ、これがレイジーの念のビリー=パペット。詳細は不明だけど、レイジーが意識を失っている間だけ目を覚ます。強い個性を持ってるように見える」

「そうだな。会話もできるのか」

「うん。さっきいくつか試してみたんだ。ここいらで殺しをやってる男と会って、その時にビリー=パペットが出てきたんだけどオレは殺されなかった。それでもう一度レイジーに寝てもらったんだけど、こいつレイジーが気に入った奴は殺さないみたい」

「Lazy Girlというのは誰のことだ」


クロロの問いにはビリー=パペットは答えなかった。シャルナークが代わりに同じ問いを繰り返すと、シャルナークの膝の上で寝ているレイジーを示す。


「Lazy Girlは眠り姫」


動かないはずの口でビリー=パペットは確かにそう言った。
シャルナークの問い、というよりも命令には確かに反応する様子のビリー=パペットに短気な強化系はすぐに切れたが、殺気を向けるとビリー=パペットは鉈を振り回し即座に応戦しようとする。またパクノダが触れようとしても同じだったので、結局話はシャルナークを通してしか進まなかった。


「ビリー=パペット、いくつか質問するから答えて」

「ビリー=パペットはお前の質問に答えるぞ!」

「お前は何?」

「ビリー=パペットはLazy Girl」

「Lazy Girlってのは、レイジーのことだよね。お前はレイジーなの?」

「ビリー=パペットはLazy Girlの破壊衝動」


ビリー=パペットの言い回しは、レイジーのそれと同じでいまいち要領を得ない。もしかしたら言葉を知らないだけなのかもしれないと思った。


「さっきオレのこと殺そうとした男は知り合いなの?」

「Crazy TwistはLazy Girlと同じ役目。お前らを殺しにきた」

「お前ら?お前らってオレたちのこと?」


シャルナークはそう言ってここにいる面々を指差したが、ビリー=パペットは首を横に振る。


「ゴミ山のゴミを殺せ!!殺せ!Lazy Girlはそのために来た!」


明らかに眉をしかめたマチやパクノダと違って、クロロは表情一つ変えない。その代わりにシャルナークに一つあることを質問しろと指示をする。


「それは誰の命令?」

「Mort!!Dr.Mort!!Lazy Girlの生みの親!」










2014/02/10


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