04.
「水?・・・うーん綺麗なのはないけど・・・」
「それでいいの」
レイジーはシャルナークに水をせがんで、彼が飲み水以外のものを取り出すとそれでいいそれでいいと頷いた。今日も彼女の手の中にはビリー=パペットがいる。
「何するの?」
「あのね、こうするとどうしたらいいのかわかるのよ」
クロロを初めとする幻影旅団の初期メンバーは、そうやってレイジーがシャルナークに一つ一つ話すことを聞いていた。彼女は最初の印象があるのか、とてもシャルナークに懐いていた。一方で他の面々のことが嫌いなのかともかく、あまり話そうとしない。周りを囲えば自然と萎縮した。もしかしたら大人数に囲まれるのが嫌いなだけなのかもしれないが、とにかく皆散りつつさりげなく二人の周りに集まっていたのである。
レイジーはそんな視線があるとも知らず、シャルナークが持ってきた器に水を並々と注いで、それからその上に葉っぱを一枚乗せる。そしてレイジーはそのとき珍しくビリー=パペットを手放してシャルナークに渡したのだった。
「持ってて」
周りの面々は、シャルナークとビリー=パペットの間に何があったのか知らなかったから、なぜシャルナークがあんなにおっかなびっくり薄汚いぬいぐるみに触れるのかよくわからなかった。
シャルナークはレイジーごとビリー=パペットに触れることには慣れたものの、こうも正面から渡されるとあの日の記憶が頭をよぎって背筋に寒気が走る。このぬいぐるみは動く。絶対に、今もこのボタンの目玉がこちらを見ている。あれから一度もレイジーが寝るところに一緒にいたことはない。レイジーは一人で寝るのは嫌だ、と言ったが何かと理由をつけて寝るときだけはレイジーの傍を離れた。今なら、襲われても対処できるだろうかとあのときのことを思い出しながら、考えた。答えは出るはずが無かった。
「シャル、シャルこうするの」
レイジーは空いた両手を器の上にかざす、そして凝をすればわかるが、その状態でレイジーは発を行ったのである。
風も吹いていないのに器の中の葉っぱが規則的に揺れた。その様子にシャルナークは驚いた。
「驚いた?」
「うん。何したの?」
「んー・・・・手をかざして・・・・それで・・・それで・・・・」
レイジーはそこから先の言葉が出てこないようだった。だが発までの一通りの流れを知っているシャルナークはおおよそ何をすればいいのかはすぐに把握した。だがこれが何を意味するのかわからない。
「シャルもやって」
レイジーはビリー=パペットをシャルナークから受け取って、それから器をシャルナークの方に押しやる。シャルナークは言われたとおりに、手をかざして発を行う。葉が、同じように揺れた。
「シャルも私と同じ!ビリー=パペット!あのねシャルも同じなのよ!」
レイジーは跳ね上がって喜んだ。立ち上がって、まるでダンスでもするようにビリー=パペットを振り回す。ビリー=パペットもどこか楽しげに見えるのは気のせいだと思いたい。
「レイジー同じってどういうことなの?」
「あのね、シャルは私と同じでね5の人なの。私はね、5の人だからビリー=パペットと一緒にいるの」
「5?」
これはさすがにシャルナークもまるで検討がつかなくて困ったように、クロロを見る。クロロはしばらく考え込んでいたようだが、それから彼の方から近づいてくる。レイジーは近づいてきたクロロに少しだけ驚いたような表情をした。それから少しだけ身を引いた。
クロロは黙ってレイジーとシャルナークがしたのと同じように、水の入った器に手をかざし発を行う。
「クロロは、4の人ね」
レイジーはシャルナークとは別の数字を口にする。
「いくつまで分類されている?」
「6つよ」
「5の人間の特徴はなんだ」
「操るんだって言ってた」
クロロは頷く。そして「系統のことだろう」と口にした。
「系統?系統って強化系とかいうあれ?」
念に関する数少ない情報の中で、書かれていた六角形の系統の図を思い出しながらシャルナークが言った。クロロは頷くそして自分の指で六角形を描きながら、順に数字を当てはめていく。
「最大が6、そして5が操作系。系統は基本的に頂点に強化系を置き、それから時計回りに変化、具現化、特質、操作、放出と並ぶ。番号の一致から考えてシャルナーク、お前は操作系だ」
「へぇ」
シャルナークは最初は曖昧に頷いたが、その後色々と理屈にかなっていると思ったのか改めて頷きなおした。
「じゃ、クロロは特質?」
「そうなるな。オレは具現化だと思っていたが、違うのか」
何か考え込むように、思考の中に沈み込んだクロロにシャルナークは肩をすくめた。こうなるとどうせしばらくは何を言っても返事をしない。シャルナークは後ろで面白そうに見ていた連中に器を渡す。受け取ったフィンクスは先の三人と同じように手をかざし発を行う。すると今度はシャルナークともクロロともまったく違う反応が出て、器から水が溢れ出したのだ。泥で濁っていた水は、どこからともなく湧き出る水によってあっという間に透明になった。葉っぱは流れ出し、足元にこぼれた水にフェイタンが悪態をつく。
「こうなるとなんなんだ?」
「フィンは1の人」
「強化系だね」
次に手をかざし発を行ったマチは何も変化がないことに顔をしかめる。だがレイジーはあまり慌てずにマチに近寄ると器から水を口に含んだ。
「甘いの。だからマチは2の人」
「・・・変化系ってこと?」
確信なさげにマチはレイジーに問い返したが、彼女には番号で言わないとわからない。代わりにシャルナークが頷いた。
そうしてその場にいた幻影旅団の初期メンバーは初めて、自分の系統というものを知ったのである。レイジーの説明は、本人が念に詳しいというわけではないのでいまいち明瞭でないところもあったが、それはシャルナークやクロロが今まで調べた念の知識で補った。系統がわかればあとは形にするのはそう難しいことではない。
それから二週間、信じられない速さで、彼らは完全に念を習得したのである。
2014/02/10
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