その日はまだ暑さの名残が窓から入ってくる、夏の終わりだった。
高専にはめったに使わない教室がいくつもある。そして敷地内には様々な建造物が無数に存在するのだが、それらはすべて天元様の結界術の特性によるものだ。千以上ある扉のどれかが、呪物の保管所に通じているのだ。どの扉が呪物の保管庫に繋がっているかは、天元様と忌庫番、つまり呪物保管庫の護衛役しか知らないことになっている。ややこしい仕組みだが、高専では重要な呪物も取り扱っているため、このような厳重な保管体制をとらざる得ないのだ。万が一にでも特級呪物が盗まれでもしたら大変なことになる。そんな細かい事情を学生たちは知っていたり知っていなかったりするため、年にニ三人は、この複雑な建物の中で迷子になるのだった。
そんないくつもある建物のうち、授業を行う教室などが集められた建造物の中で、一つの教室に集められたのは二年生五条悟、夏油傑、
天野曜次、家入硝子、一年生七海健人、灰原雄である。そして教壇に立つのが今まで一切の接点がなかった三年生の楢原幸二(ならはら・こうじ)であった。二年と一年はこの見知らぬ三年生に呼び出されて、クーラーの効いてない暑苦しい教室に集まったわけだが、何が始まるのか現時点では誰も理解していなかった。
机の下で長い足を組んでいるのは悟だ。
曜次は半分寝ており、時たまがくんと頭が落ちては覚醒し、また眠りに落ちた。傑と硝子そして一年はきちんと椅子に座っている。
教壇に立った楢原はこの上なく不遜な態度の二年(主に悟と
曜次)に若干いらっとしながら、呼び出した理由を話し始めた。
「えー、俺の名前は楢原幸二。高専の三年だ。これからちょっと重要な話をするのでしっかり聞いて欲しい。五条と
天野は知っているかもしれないが……呪術師の任務は主に夏に集中している。勿論一年中忙しいときもあるが、大体は夏越えの祓いの時期から八月末にかけてが仕事の繁忙期だ。呪術高専では、任務の少なくなる九月に京都にあるもう一つの呪術高専と交流会というものがある」
「交流会?」
首をかしげたのは長い足を投げ出して頬杖をしながら楢原を見上げている五条悟だった。
「なぜ私が知っていて君が知らないんだい?」
「はーい俺も知ってまーす」
傑と
曜次が言葉を続ける。
曜次は一瞬覚醒したようだが、よく知っている話だと認識するとまたぐらぐらと頭を揺らし始めた。さすがに目に余る、というより目障りであったので傑は
曜次の首根っこをぐっと掴んでまっすぐ前を向かせた。ようやっと完全に目を覚ました
曜次は、親猫に捕まった子猫のようにしばらくばたばたと暴れていたが、傑が手を離すと静かになる。悟はけっという表情で二人の言葉を聞き流した。
「じゃあ
天野、説明してくれ」
「呪術師同士で喧嘩するんだろ、手っ取り早く言えば」
天野は実にわかりやすく説明した。だがあまりにも簡略化しているため、一年とその他に全く伝わっていないのが難点だ。楢原は頭を抱えながら、しかしあくまで落ち着いて、
曜次の言葉に補足を付け加える。
「ちょっと語弊がある上にシンプルすぎてわからないな……いいか交流会というのは普段関わり合いのない東京校と京都校が呪術師同士で競い合い、交流を深めるイベントだ。まぁ喧嘩と言ってもいいのかどうかって感じだが、呪術師同士戦うことには間違いない」
楢原は一つ呼吸を置いて続きを話す。
「この交流会には二年と三年が基本的に出るんだが」
と、そこでぴっと背筋を伸ばして手を上げた灰原が元気よく質問した。
「はい! 先輩! それならなんで俺たちもいるんですか!」
「いい質問だ灰原。今言った通り、基本的には二年と三年がこの交流会に参加するのだが、俺の同期に当たる連中がこの時期揃って長期任務が入って交流会に出られなくなった。それで人数合わせに一年にも参加してもらうことになったってわけだ」
「それって二年は強制?」
悟がのろのろと手を上げながら質問する。
「強制だな」
「俺一人でよくない?」
「悟、先輩の前では私がせめて僕にしろ」
「やなこった」
悟の態度に楢原は怒りが頂点に達しそうだったが、この中で唯一の三年、かつ年長者ということでひとまず心の中で怒りは抑えた。文字通り最強になった五条悟には何を言っても無駄だということは初めからわかっていたことだが、目の前にするとなかなか苛立ちを煽ってくるイイ性格をしている。
「ま、まぁそんなわけで、だ」
楢原はなんとか話の軌道をもとの交流会に戻す。
「とにかくそんなわけで二年は強制、一年はどっちかに参加してもらって」
「はい! 先輩!!」
「なんだー灰原ー」
「僕も七海も参加したいって言ってます!」
「両方?」
「はい!」
一年生は二年生と比べると素直でとっつきやすい。楢原も自然口調は柔らかくなるというもの。ただ巻き込まれた七海の口調は実にシビアで冷たかった。
「私はそんなこと言っていません」
「折角の機会だよ、一緒に出ようよ」
「来年もあるでしょう? 基本的に二年生と三年生のイベントなら、一年生は大人しくしておくべきでは?」
「来年はもしかしたら任務で出れないかもしれないよ?」
「ああ言えばこう言う……」
七海は若干呆れた声で灰原に応じていた。だが灰原が折れないのは半年近い付き合いになってもうわかっているのだろう、七海は正論は述べたものの、灰原の次の追求に関してはもう何も言わなかった。その代わりちらりと楢原を見る。それはどうにかしてくれ、という視線だったが、楢原は勘違いして受け取った。つまり七海も出たいと勘違いしたわけだ。
「あー、人数調整的にどうだろうな。京都校は六人だからなぉ、先生に確認しておくから一年生の二人参加希望はちょっと回答は待ってくれ」
明らかに灰原の肩が落ちたのがわかった。だがこれで一年生の出場もほぼ確定したようなものだ。
「……とまぁ一年の参加はイレギュラーであるが、前例がないわけではない。概要はわかったか?」
「はーい、ところで何やるの?」
聞いたのは悟だ。
「基本的に団体戦と個人戦がある。例年団体戦では一定区画内に放たれた呪霊をいち早く狩る。狩った総数で基本的に勝敗が決まる。個人戦では一対一の呪術合戦だ。殺さない限りは基本的に何をしてもいいことになっている」
「ふぅん、それ俺が勝つに決まってるでしょ」
「悟」
傑が戒めるように悟の名前を呼んだ。楢原はそろそろ五条悟を無視することに決めたようだ。
「今年の交流会は昨年の勝者である京都校で行われる。地の利がない分団体戦がだいぶ厳しいが、いい成績を残したい。よろしく頼むぞ」
楢原はそう言って言葉を締めくくった。
一週間後、夜蛾、楢原、二年、一年は京都校へ移動するため東京駅で新幹線を待っていた。一応夏は終わったとはいえ、まだ蒸し暑い空気がホームに溜まっている。立っているだけでじんわりと汗が滲むので汗を拭いていたハンカチはすぐにびしょ濡れになった。そんな中でも電車は頻繁に行き来し、多くの人を乗せては降ろし乗せては降ろしを繰り返している。
普段、高専内だけでほぼ生活が完結しているため、ここまで人が多い空間に出るのは珍しい。傑は一瞬、
曜次が迷子にならないか心配になったが、
曜次は仕事の関係で京都校にも何度か行ったことがあるらしい。その関係で東京駅を比較的頻繁に使っており、迷子になるどころか、さっさと新幹線の改札を特に目移りもせず通っていく。
「……なんだよ傑、その顔」
「いや、君のことだからてっきり跳ね回って迷子になるんじゃないかと」
「俺のことなんだと思っているの?」
「かわいい友人だと思っているよ」
ぶーぶー文句を言う
曜次を無視して傑も新幹線の改札を通った。
新幹線のホームには様々な人がいる。これから出張と思しき荷物を抱えたサラリーマン、家族旅行と思われる一行、修学旅行の学生集団……その他いろいろな理由で新幹線を使う人々。
交流会の移動費は高専が負担してくれる。おかげで指定席をとることができ、特に急ぐこともなく新幹線に乗り込んだ一行は、思い思いの席順で話に花を咲かせていた。傑は
曜次と灰原に挟まれて座る。
曜次が窓側で、灰原が廊下側の席だ。
曜次は新幹線に乗ってからすん、と静かになってしまった一方で、憧れの先輩の隣に座った灰原は、それがよほど嬉しいのか積極的に話しかけて、その話題は尽きることを知らないようだった。傑はそんな灰原に穏やかな口調で応じていた。
いつもの傑のようだ。だが、
曜次には傑がどこか無理をしているように感じられた。
新幹線が動き出す。傑と灰原の会話を聞きながら、
曜次はぼんやりと窓の外を眺める。ビュンビュンと過ぎ去っていく景色が、まるで自分たちのようだ、なんてあっという間に過ぎ去った一年生の頃を思い出す。
曜次は変わった。最初は自分の感情がすっからかんなことを隠すために張り付けた笑顔で過ごしていたのに、いつの間にか怒ることも悲しむことも楽しむことも覚えた。それはすべて傑のおかげだ。傑が
曜次を一人前の人にしたのだ。もしも傑と出会うことがなければ、
曜次は今も空っぽの笑みを張り付けて、人と距離を置いて生きていただろう。それに不便という感情を抱くこともなかったに違いない。
今だって
曜次はいら立っている。まだ自分の感情に名前を付けるのも、感情を理解するのも下手だったが、
曜次は傑が隠している感情にいら立っている。今まではそんな隠し事なんて一つもなかったのに、星漿体の任務以来、傑はずっと何かを考えこんで、それを誰にも話したくないように見えた。それが
曜次には不愉快だった。かわいい友人と思っているなら、全部話してほしいと思う気持ちが
曜次の中で生まれたのだ。
東京から京都まで約二時間あまり、各々が好きなように時間を潰す。
「楢原、どうだ、今年の二年は」
「言わせてもらえるなら傲岸不遜そのものですね、夜蛾先生」
「きちんと指揮をとれそうか」
「
天野・夏油・五条の三人はもう一級でしょう? 指揮を執るというより猛犬の手綱をかろうじて握って引っ張られている気分ですよ。実力に関しては正直俺から言うことはないので」
「それもそうだな。まぁ頑張ってくれ」
「はい、できるだけの努力はしてみます」
楢原は肩を竦めながらそう言った。
京都校は東京校同様、市街地から外れた山の中にある。京都校もまた広大な土地に無数の建物が立ち並び異様な風景を作り上げていた。
新幹線で京都駅についた一行は、さらに電車とバスを乗り継いで数時間、ようやっと京都校の入り口に立つ。山腹までやってくれば夏の残り香のような暑さも和らぎ、木陰に入ると汗がすぅっと引いていく。木々に囲まれた建物は細かいところまで結界に守られており、山の緑とは一線を画した風景を作っている。自然と人工物の境界線がはっきりと引かれているのだ。
長旅の末ようやっとたどり着いた東京校一行は、電車とバスの乗り継ぎですっかり足腰がしびれてしまっていたが、これから交流会が待っているのだ。交流会自体は明日からだとはいえ、京都校の生徒を前にくたびれた様子を見せたくないというのが心情である。できる限りしゃんとして今までの長旅などさしたる問題ではないとでも言いたげな表情で、校内に足を踏み入れる。そんな東京校のメンバーの前に現れたのは目隠しをした少女だった。身長はあまり高くなく、目を隠しているため顔の全貌が把握できず歳を掴み辛い。そんな少女が背負っている弓矢が、姿かたちに似合わず異様な雰囲気を放っていた。
「ようこそいらっしゃいました、長旅お疲れ様です」
少女は深々と頭を下げる。
曜次が夜蛾の巨体からひょっこり顔を出して手を振った。
「京子さん久しぶり」
「あら
天野君、久しぶりね」
「
曜次、知り合い?」
傑が
曜次と同じように夜蛾の後ろから出て尋ねる。
「うん、京都校の人はみんな知り合い」
「ちょっと待て、事前の作戦会議ではそんなこと言ってなかったぞ
天野」
「だって一方的に教えるのってフェアじゃないじゃん? 俺は京都校の大部分の術式を把握してるけど、それはそれこれはこれ。お互い知らない方がびっくりして楽しいし」
「楽しくない!」
楢原は頭を押さえて呻く。
「あら話さないでくれたの? 優しいのね。でも私たちはみんな
天野君の術式を知ってるわ」
「いいよ別に俺の術式は。どうせ勝てないし」
「そうね、刀一本じゃあなたにはかなわないわ。あらいけない、つい世間話を。皆さまお待たせしました。団体戦は明日ですので今日はゆっくりなさってください。宿泊場所を案内しますわ」
京子と呼ばれた少女はくすくすと笑いながら背を向けて案内するように歩き出す。
曜次がそれに続き、東京校のメンバーもそろそろと京都校の敷居をまたいで東京校とはまた少し違う京都校の空気の中に入っていく。
曜次は京子の隣に立って何か話している。仲睦まじげな様子に首をかしげる楢原に、夜蛾はくっくと喉の奥で笑いながら言った。
「
天野は実家の仕事の関係で京都校にもよく来ているからな勝手知ったると言うところなんだろう」
「それならそうと言ってくれればいいのに」
「
天野なりの心遣いなんだろう」
楢原ははぁと大きくため息をついて「俺、ちょっと今年の二年を制御できる気がしませんよ」とぼやくのだった。
東京校と京都校、それぞれ雰囲気の違いはあれど、根幹は同じだ。天元様の主要結界は東京校にあるがその力は京都校にも及んでいる。京都校もまた様々な時代の建物が混沌と並び、扉を開けた先はどこにつながっているのかわからなかった。唯一教室と寮へ続く扉だけが固定されており、それ以外の扉に入って迷子になる学生は毎年少なからずいる。
京子は余っている寮の一角へ東京校のメンバーを案内すると、自分も明日の準備があるので、と去って行った。寮の部屋は空いているところならどこを使ってもいいということなのだろう。一人一部屋とはなんとも豪華だが、京都校も学生が少ないのは東京校と同じだ。要するに寮も部屋が有り余っている状態で、たかだが六七人受け入れたところで困ることはないのである。
夜蛾はこれから京都校の学長である楽巌寺嘉伸と交流会のことについて詳細な打ち合わせがあるということで、明日まで自由にしててよいということで残された。
「部屋どうする?」
「どこでもいいだろー。よーし一年から決めろ」
「僕、夏油さんの隣がいいです!」
はい! と元気よく手を上げたのは灰原だ。続いて
曜次が手を上げる。
「俺も傑の隣!」
「傑モテモテじゃん」
「ははっ悪い気はしないね」
悟が言うと傑は笑って答えた。
「一年が先だって言っただろうが、七海はどこにする?」
「余ったところで構いません。別に数日しかいないところですし」
「うーんドライ」
七海のちょっとお堅い性格は昔からだ。あまり感情を表に出して騒いだりしない彼はぶっきらぼうに見えるが、その内実はとてもよく他人のことを考えている。
結局要望をぶちまけたのは灰原と
曜次だけだったので、灰原・傑・
曜次の順で部屋が並び、あとのメンバーは適当に好きな部屋をとった。実のところ、
曜次が選んだ部屋は、仕事で京都校に訪れることがあるときにいつも使っている部屋なので、若干ながら
曜次の私物がある。だからそれを見越して
曜次は初めから荷物が少なかった。
曜次は小さめの旅行鞄を机の上に放り投げてベッドにぼふんと横になる。部屋の作りは東京校と大して変わりがないので、京都校にいるというのに自室のような安心感があった。
曜次はしばらくの間ごろんごろんとベッドの上で転がっていたが、やはり暇でしょうがなかったので傑の部屋に行くことにする。
扉を開けてすぐ隣、そこが傑の仮の部屋だ。
「傑ー?」
「どうぞ」
ノックはしなかったが意思の確認はした。傑のどうぞ、という声とほぼ同時にすぱんとドアを開けると
曜次はそのまま傑の部屋のベッドになだれ込む。
「うーんやっぱり京都校は遠いよ、疲れた」
「そうは見えないけどね。京都校の人とは知り合いなのかい?」
「うん。仕事でね、京都の方に来ることも多いから、京都校に泊まることも多いんだ」
「私も京都の方の任務はあったけど京都校には一度も泊まったことがないな」
「そりゃ俺の仕事って呪具の管理だもん。京都校と直接関係がある仕事ってこと」
「ああ、なるほど」
傑は納得したとばかりに軽く手を叩いた。
「呪具の管理は具体的にはどんなことをするんだい」
「んー、呪具庫で使える呪具と使えない呪具をより分けたり、どういう呪具が欲しいかっていう要望を聞いて里に連絡するの。里は隠されてるって言っただろ? だから基本的に京都校や東京校から直接里に呪具制作の依頼はできないんだ。俺が仲介役をするわけ。それに呪具は長いこと使わないと呪いが抜けて呪具じゃなくなるから、そういうものをより分けて武器庫に振り分けたりも仕事のうちかな」
「なかなか面倒な仕組みだな」
「昔は違ったらしいけどね」
曜次はそれきりすとんと黙った。傑も何か話すわけでもなく、窓から京都校の校庭を眺めている。何か面白い物があるわけでもないだろうに、外を眺めているのはきっと何かを考えているのだろうと
曜次は思う。
星漿体護衛の任務で一体何があったのだろうか。傑も悟も何も話してくれなかったので
曜次はその任務について何も知らなかった。ただ、硝子から少しだけ、二人とも死にかけたのだということを教えてもらって、
曜次はひどく心をかき乱されたことを覚えている。
自分のあずかり知らぬところで傑と悟が死ぬ。そのことを考えると、自分も死んでしまいたくなるほどの狂気に駆られる。両面宿儺を殺すことができても、傑と悟がいない世界なんてほんの少しも楽しくない。傑と悟が一緒にいる世界が、
曜次が抱え込む小さな世界の全てだ。もし傑がいなくなったら? もし悟がいなくなったら? それはもう
曜次の世界は破綻してしまっていると言っても過言ではない。ああ、そんなことにならなくてよかったというところで
曜次の思考はストップする。そしてまた初めに戻る。傑と悟は星漿体の任務で何かがあった。それが今までの傑と悟を変えてしまった、しかしそれは一体何なのだろう?
こんこんとノックの音が部屋に響いて、ベッドに寝転んでいた
曜次も、校庭をぼんやりと眺めていた傑も扉の方を向く。どうぞと言ったのは部屋の主の傑だ。そろそろと扉が開いて、灰原が顔を覗かせた。
「夏油さん、と
天野さん! 明日に備えて作戦の最終確認をするので教室に集まってほしいと楢原さんが!」
「わかったすぐ行く。ほら
曜次も立って」
「えー面倒くさい」
「馬鹿なこと言ってないでほら行くよ」
曜次はベッドに転がり込むときに外した刀をベルトにくくりつけて立ち上がる。高専内は特に武具・呪具に関しては治外法権だ。帯刀していても問題にはならない。
曜次が廊下に出ると傑は真新しい鍵でカチャリと部屋の扉を閉めた。灰原が廊下の端っこで傑と
曜次のことを待っていた。
20200712
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