「・・・お前らの娘は預かった?」
電話口にて一言、そんなことをフィンクスが言うものだからわたしは思わず飲みかけのココアを噴出した。疑問系であることにも色々言いたいことがあるよりも、それ以前にそれではただの誘拐犯ではないか!確かにじいちゃんとばあちゃんに電話をしたくないとダダをこねたのはわたしで、それでも心配するだろと半ば無理やりに電話をかけさせようとしたのはフィンクスだ。結局フィンクスが勝手に私の携帯を奪ってじいちゃんとばあちゃんに電話をしたのだけれど、まさかそんな一言が飛び出すとは思わなかった。二回目の出会いのときのあれはフィンクスの誘拐という言葉で間違いではないのかもしれないが、今回の件に関して言えば免罪だ。でもそもそも犯罪歴がたくさんあるフィンクスだから免罪という言葉は少しおかしい気もした。
わたしは慌ててフィンクスの手から携帯を奪おうとしたが、そもそも身長差のせいでいくら手を伸ばしても届かない。電話口では明らかに色々と誤解が生じて、ばあちゃんの悲鳴とじいちゃんの怒鳴り声が聞こえていて、慌てたわたしは思い切りフィンクスのすねを蹴っ飛ばした。痛い。
「いっ・・・・纏だけなのにっ・・・」
「しっかり硬しろ硬。まぁお前ぐらいの硬じゃどうしようもないけどな」
「むッむかつく・・・!」
それなりに力を入れて蹴ったはずなのにフィンクスはびくともせず、むしろわたしの方が大ダメージを受けて、足も痛いしついでに心も痛い。一般人相手だったらむしろ骨を折りかねない一撃だったのだ。そもそも多少でも念を覚えていればその身体能力は一般人よりもはるかに上である。たとえ念能力者としての実力はさほどないわたしでも、たかが蹴りだけで、相手の骨を折ってしまうことだってできるのだ。念を覚えた最初の頃はじいちゃんとばあちゃんによっぽど注意しろと言われ続けて、今ではあまり気にせずに生活できるようになったのだけれど、どうせフィンクスは能力者だしと思ってあんまり遠慮せずに蹴った。なのに全然効いてない。ニヤニヤ笑ってるのもかなりむかつくのである。
「あっ・・・電話返してよ!」
「もう切っちまった」
あらぬ誤解をそのままに、電話はツーツーという小さな電子音を発している。フィンクスはすぐにもう一度かかってきた着信を「めんどくせー」の一言でブツリと強制的に遮断して、電源ボタンに親指をかけた。だがしばし動きを止めてから、あろうことかフィンクスはわたしが止める暇もあるはずもなく、携帯をそのまま握りつぶしたのである。ぐしゃ、だかばきだか知らないが、とても硬質な音がした。電源を切られただけならともかく、まさか壊されると思っていなかったわたしはもはや言葉がでない。
「ちょっ」
「あ?どうせ電話したくねーんだろ。ちょうどいいじゃねぇか」
何がちょうどいいんだ、何が。せめて電源切るなり電池を抜くなり方法はあるだろうに、フィンクスはあっさりとばらばらになった携帯を手のひらから床に落として、「あんま気にすんな。必要なら盗めばいいだろ」などといともたやすく犯罪行為をわたしに勧めてくれた。
さらば、愛用の携帯。気に入っていたのにまさかこんな末路はわたしも想定していなかった、とわたしは涙を流しながら床に落ちた携帯の残骸をあさって、かろうじて破壊を免れたメモリーカードだけ回収した。
2014.05.17